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7月27日~朝~

ぴぴぴ。。。ぴぴぴ。。。


ぴぴぴ。。。ぴぴぴ。。。


ぴぴぴ。。。おい!いい加減お前起きろよ!!!

なんで朝からこんな大きな声を出さないといけねぇんだよ!!

そもそもお前は寝起きが悪いんだから、もっと強力な目覚まし時計を買えや!ボケェ!!


なんてことは、目覚まし時計は言うことはなく。


ぴぴぴ。。。ぴぴぴ。。。


無常にも部屋にはいつもの朝の音を彩っている。


『う。。。ううぅ。。。』


目を開けるとき、この瞬間が一番嫌いだ。


開けた時、そこに誰かいたら凄い怖いし。。。

そもそも無理やり まぶた を意思に反して開かせるのは可哀想だよな。。。


僕のまぶたは生粋のマゾです。


ゆっくりとベットに腰掛け、いつもの行動パターンを開始する。

意外とこの行動パターンが崩れると、一日うまくいかないものだ。

大事な瞬間でもある。

何事もいつも通りが大事!マニュアル社会の重要性が感じられる毎朝。。。

そこまで考えてませんが。


まずは、ベットに腰掛けるとお気に入りの音楽コンボの電源を入れる。

そこから流れるいつもの音楽。いつもの音。


『~~♪~~~♪』


たまらない!毎朝この音を少なくとも一回は聞く。

そして聞き終わるまで絶対にベットから立ち上がらない。

この無意識の音楽。音を楽しむのだ。


『~~♪~~♪』


そして聞き終わると、必ず俺は声に出して一人でつぶやく。


『サティのジムノペディは天才だ。。。いぇーーい』


そして、ベットから腰を上げる。

テレビのリモコンでお気に入りのお天気お姉さんの映るチャンネルに変えて。(実際はこのチャンネル以外は見ないのだが。。)

ドアの新聞紙を取りに行く。

今日は、新聞紙に雨よけのビニールが付いている。

おいおい。

お姉さんよりも先に新聞紙が天気を教えてくれるなんて。

随分と今日はついてないなぁ。

などと思いながら、頭の中ではすでに折り畳み傘かビニール傘のどっちを持ってくかでいっぱいだ。

そこの決定権くらいはお姉さんに聞こう!

ぢゃないと気がすまないからな。。。


新聞紙片手にキッチンにそのままズルズルと移動する。

そうだ!

今日は、昨日の帰り際に思わず〇急ハンズで買ってしまったコーヒーがあったんだ!

既に、天気など頭の中から飛んでいた。


僕の脳みそは生粋の。。。いや言うのはやめておこう。自分の脳みそは否定したくないからな。


『選びに選ばれた豆をそのままあなたのもとへ。。。か。。。』


別に声に出さなくて良かったんだが、なんとなく出してみた。

一人暮らしで、誰も聞いてくれないのにな。

アピールしてみたかったのさ。


普段はコーヒーを飲みながら新聞紙を読み世の中の出来事を吸収するのが日課だった。

朝ごはんは食べない主義だ。

別にダイエットしてる訳でもないし、時間が無い訳でもない。

まぁ、親がいたら怒られるかもだけどな。別にいないから。


テレビはこの間も音を発し続ける。

自分の好きなお姉さんも喋っているが、実際、テレビの音は音に過ぎなかった。

新聞紙を読んでコーヒーを飲んでる時になんの彩りもなければ寂しいじゃん。

小さい時一人でお留守番する時に、別に何を見るわけでもないのに無駄にテレビをつけてみたりした。

それと同じ。

無音は寂しい。

音は音なのだが。


『シリア騒乱は激化を進める一方で、国際連合は。。。』

物騒な記事を今日も端から淡々と吸収していく。

ロボットの如く。

そんなゲームがあったら売れねぇな。。。笑

などとは考えず、いつもと同じペースで新聞紙に身も心も委ねていく。

コーヒーを一口すする。


『。。。。』


やっぱり今日はついてない。

いつもとはやはり何か違う。


時は少しさかのぼる。


7月26日の夜8時頃。

僕はいつもみたく家の近くの〇急ハンズに立ち寄った。

都内でも最大規模の店で、この時間でも多くの人が右往左往していた。

綺麗に整えられた売り場。

綺麗に飾られたポップ達。

何よりも素晴らしいのが品揃え。

雑貨に関しては全て有るのではないか。。。?

そこまで思わせてしまう素晴らしさ。

頭があがらないっす!先輩!

仕事帰りに夜この店だけが僕のオアシス!

そんなことはない。。。さすがにね。。。

でも、毎日よるくらいだから少なくともこの店は嫌いではなかった。

何を買うわけでもない。

他の客と一緒に右往左往するのだ。

笑顔ひとつなく。

音を立てることもなく。


『ただいま試飲会行っておりまーす!是非この機会に!』


1つの大きな音が入ってきた。

普通の人ならなんてことない音。

その辺の音と変わらない。

でも違った。自分は違った。


思わず目の前で立ち止まってしまった。


『どうですかぁ~!!?一口飲んでみてください!産地直の美味しいコーヒーですよぉ!』


明らかに作ってるであろう顔でぐいっとカップを突き出してくる。


『はぁ。。。』

一口。


『どうですかぁ!!?ほんとにおススメなんですよぉ!!売れ行きも好調で!』


甘ったるい声で囁いて来る。



気づくと新聞紙は読み終わっていた。

読み終わったのではなく見終わったにちかいかもしれない。

コーヒーは一口飲んで捨てていた。

今朝起きた時、いや、10分前くらいに新しいコーヒーがあると喜んだ自分が馬鹿らしくなった。

浮かれてた自分が。


今、頭の中を支配してるのはコーヒー売りとのあの瞬間の映像だけ。

ぐるぐるぐるぐる。

昨日は何のためらいもなく買ってしまったコーヒー。

でも、良く考えると自分の何かが許せなかった。


あの人の発した言葉、声は音でしかない。

感情がない。

ロボットの如くだ。

別に感情を込めろと言ってる訳ではない。

求めてすらない。

ただ、無機質なのだ。

そうやって考える自分がとてつもなく嫌いだ。


『だから感情って嫌いなんだよ。』


また一人でアピールしてみた。


そして、テレビの音をバックにゆっくりと会社にいく準備を始めた。


『本日のお天気は一日中大雨となり、傘は手放せないでしょう。』


この時はまだ

コーヒーの売り子が発してた音がいやに思えた理由が

自分の発してる音に似ているからなのだということは

雨の音にかき消されていた




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