蜂の巣状の棚、落ちた紙くず、ナメクジの家
私の祖父は、おそらく⋯⋯何らかの問題を抱えている。発達障害の条件を満たしてはいないが、癖のある認知特性があるように⋯⋯私は思える。
隣にいて安心できる普通の祖父。
――いや、限りなく普通ではないと思う⋯⋯。
祖父みたいな人間の話を見聞きしたことがない。
まるでバイオハザードに出てくる「黄ばんだ家」に住む住人だ。
◇
祖父の家の車庫には、自作した蜂の巣状の棚があった。
その棚には、おびただしい数の灰色になったTシャツのボロ布、黄色と灰色が分離して光に照らされた謎のボトル、黒いヘドロがついた空き缶やペットボトルが無造作に詰め込まれていた。
棚の下は、湿気を吸って柔らかくなった新聞紙や段ボール、どこかのレシートが踏み荒らされて、ちぎれた小さな紙片が山を作っている。
その紙片の山は、祖父の寝室にもあって、壁に並べられたタンスの下には、シュレッダーにかけられた紙くずのような、少し縮れた紙片が大量に積まれていた。
もし、この世界に小さな小人がいたなら、その「ちぢれ山」は、すべり台として存分に活用されていただろう。積まれすぎた紙片が、すべり台のような姿を作り出していたからだ。
浴室には、大きなナメクジが数匹いた。祖父はそれを見ると、浴槽のお湯を桶ですくい、ナメクジにかけるのだが、力なく流されたナメクジはコロコロと転がり、幼い私の足元に流れ着いて、ウネウネと体勢を整えようとする。
本当に、本当に嫌だった!!!
◇
私の祖父はこんな感じの人間だ。祖父の家には、住人のようにゴキブリが歩き回ってるし、ゴキブリホイホイを覗いてみれば――言うのをやめておこう。
気持ち悪くなる。
どこからか拾ってきた野良犬は、散歩に連れて行ってもらえず、壁に模様のように張り付いたナメクジに囲まれ、庭の細道の先で無気力に座り込んでいる。
座り込みすぎて、四肢には床擦れが起きており、
血が固まって、赤黒くなった傷が痛々しかった。
ここまで読んでみて、みんなはこの祖父をどう思った?
感想や評価は閉じているんだけども⋯⋯、
これは本当に実在する人物の話なんだ。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるけど、理解できない、予測ができない人物って怖いよね
だから、私は祖父の″家″のことを「バイオハザードのロケ地」と呼ぶようにしてる。
家をバイオハザードのロケ地と設定していれば、「祖父自身」のことは嫌いにならずにいれるから。
変わった祖父だが、土砂降りの雨が急に降ってきたときには、自分の傘を孫である私にグイッと押しつけてくる。若い私が屋根まで走ればいいのに、「濡れたら風邪引くだろう!!」と頑なに譲らない。
2人で入れば⋯⋯と言えば、「傘に男二人が入るわけないだろう!このっ、バカたれが!!」と口が悪い。
結局、傘を差して走る私と雨に打たれる祖父という、はたからみれば訳のわからない景色ができあがる。
そういった変な光景も悪くはない。
祖父を嫌いにならない理由が、
そんな変なエピソードに詰まってる。
私にとっては、どれも特別なエピソードだ。
⋯⋯家はバイオハザードだけどね(´・ω・`)




