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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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取り調べ室にて

作者: 江藤ぴりか
掲載日:2026/04/25

 はい、そうです。僕が妻を殺しました。

 ささいなことで……と言っても僕にはそれが許せなくて、カッとなってしまったんです。


「そんなもの、取っておくくらいなら家族のためにお金に換えて家計の足しにしなさいよ」


 あれは僕の心の支えだったんですよ、刑事さん。

 学生時代からコツコツ貯めた金でパーツを集めて、思い思いに組み立てる。夢が叶った気がしたんです。

 そしてまた次の夢がうまれて……。


 そんな思い出がよぎって、妻を、彼女を殴りました。こめかみめがけて拳を振るうと、彼女は床に倒れました。

 恐怖も後悔もありません。あるのは否定された怒りと悲しみ。


 僕はキッチンに向かって包丁を手に取りました。

 そして倒れてうずくまる彼女の首に刃を突き立てたんです。

 刑事さん、骨って本当に固いんですね。血は出たんですけど、滑ってしまいましたよ。

 だから僕はわき腹を刺しました。

 骨がないから深くまで刺せました。何度も何度も。

 はじめは暴れて叫んでいたんですが、そのうち動かなくなって。

 はたと気がついた時には血の海でした。僕も血まみれで。


 子どもができない体質で本当によかったです。こんな姿は見せられませんからね。

 乾いた雑巾でフローリングを拭くと、赤黒く染みて、生臭いにおいになりましてね。シンクで懸命に落とそうとしたんですが、上手くいきませんでした。


 ある程度きれいになったところで浴室に移動させました。

 まだ傷口から血が溢れていたんで、慌てましたよ。


 浴室に運んだところで、僕はとても疲れたことに気づいて、自室に戻ってコレクションを広げたんです。

 枕元に青い目と金色の目を置いて、ベッドに横になりました。

 僕たちは結婚当初から寝室を分けているので、自室はコレクション部屋とも言えます。


 色とりどりの目に囲まれたあの時は、まるで海の上にいるような開放感でした。

 体はふわふわと布団の上をたゆたっていて、お気に入りの子の目で見つめられている。素晴らしい心地でした。

 僕は自分の汚れを落とすのも忘れて眠ったんです。


 昨晩は夢だと思って洗面所に向かうと、引きずった血の跡とガラス戸に映る彼女の影。

 そこでようやく、僕は後悔しました。

 しまった、なんで寝てしまったんだって。

 だって、昨日のうちに死体の処理をしてしまえば、出勤に合わせて処分できたはずなんです。

 そうそう、職場の焼却炉で処分できた人がニュースになってましたね。

 あれはいいなと思いました。

 愛する人の残り香とともに働けるなんてうらやましいじゃないですか。なんで見つかったんでしたっけ? ……まあ、いいです。


 僕はなんだかんだで彼女を愛していた。でも彼女の考えには賛同できなかった。だから殺した。

 自室にある大きな目はどうでしたか?僕がバイトや食費を削って手に入れたガラスの瞳は美しかったでしょう?


 え? 押収済み? 気味が悪いですって?

 ……言っていいことと悪いことがありますよ。

 刑事さんは主観的な考えは相手に伝えない方がいい。そうでなくとも怨みを買う職業なんですから。

 僕は人に理解してもらおうなんて思ってないので、気にしませんけど。


 彼女の瞳を見ましたか? 黒くて光が当たるとキラリと煌めくんです。

 だから僕の『コレクション』にしました。


 どうにか顔から目を取り出してみたんですけど、死ぬと反射しないんですね。残念です。

 白く濁った目に価値はなかったので、近所の公園に捨ておきました。


 コレクションは反射板だろうって?

 さっき、言ったじゃないですか。キラリと光るって。

 僕はね、濃い瞳の女性が好みなんですよ。反射板みたいで、きれいじゃないですか。

 やっぱり僕だけが良さをわかるんですね。刑事さん、そんなに睨まないでくださいよ。


 他の部位、ですか。

 肩から先は肉をこそぎ落としてトイレに流しました。

 でもすごく大変だったので、太ももから先は切ったあと、折りたたんで生ゴミの日に隣の自治区の収集場に置いてきました。

 ああ、ニュースになってましたね。


 胴体はゴミ袋に入れたあと、石灰とともに東の山に埋めました。

 すごく臭かったです。


 ええ、反省はしてますって。僕は法律に違反した。そして罪を軽くするために自首して、こうしてここにいる。

 人間、殺すもんじゃないですね。留置所は暇だし、ご飯は美味しくない。

 だから取り調べが唯一の楽しみですよ。


 なんでも話しますから、僕を退屈させないでくださいね、刑事さん。

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