神様からのギフト
学校では、僕は多分、中2病のイタイ奴だと思われている。
周りの奴らとはあまり話さないし、休み時間は寝てばかりだし、それになにより、いつも片目に眼帯をしているからだ。
でも、違う。これは仕方ないんだ。
この眼帯をしていないと、僕の力が自動的に発動してしまう。それを防ぐには、眼帯をしておくしかないんだ。
そう。
僕には生まれつき、特別な能力がある。いわゆるギフテッドだ。
僕の能力は、千里眼。
どれほど距離があろうと、どんな障害物があろうと、だれも僕の視線からは逃げられない。
この世のあらゆる秘密を暴き、白日の下にさらすことができる、特別な存在。それが、僕だ。
そして今、本当に久しぶりに、僕はこの能力を解放しようとしている。
幸い担任はこちらを見ていない。
今だ!
僕は、そっと眼帯を外し、大いなる力を解放した。
……全くお前は、何度言ったらわかる!お前には、カンニングは無理!ましてやスパイなんか夢のまた夢!さっさと諦めろ!
担任の俺に怒鳴りつけられたことで、一応しょぼんとした態度を見せてはいるが、それでもまだ、こいつ――ギフテッドとして学校中に知られている生徒は、唇をとがらせている。
確かに、どんな遠方でも、どんな障害物も関係なく、どこであろうと入り込んで情報を覗き見できるというのだから、その力は強力無比。そんな凄まじい力を得ている以上、超一流のスパイになれるはずだと、本人が思い込むのもよく分かる。
だが、無理なものは無理。早いうちに諦めさせたほうが本人のためだ。
なにしろ、彼の千里眼ときたら、能力の発動と同時に直径50センチはあろうかという目玉が出現、目標の至近距離からじろじろ眺めることでその内容を見とるという、ステルス性のカケラもない手順を必要とする。その上、目玉の受けたダメージは、そのまま本人に反映されるというのだから……諜報活動に携わり、どこかの国の機密文書を目にするやいなや警護のものに見とがめられ、銃で撃たれてあえない最期を遂げること、間違いない。
いっそ、ギフトなどもらわなければ、おかしな夢も見ずにすんだだろうにと、俺はいまだに不満げな生徒の顔を見つめつつ、そっとため息をついたのだった。




