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最期の日


夕映えが、禍々しいほどの赤い色で空と雲を焦がす。

風が酷く冷たく感じた。

「収穫祭」の用意が着々と進む中、1人の少女が悲しそうな顔で空を見上げていた。

ここの村に住む「サチ」

そう……今年の供物という名の生贄となる少女であった。

村にとっては名誉なことでその日だけは豪華な着物で身支度をし、目の端と唇には唐紅色を施す。

サチの肩にかかる栗毛色の綺麗な髪に色鮮やかな装飾品をつける。

それはまるで、天女様のように美しい御姿……。

村人皆が息を飲んだ。

サチは悲しく儚げに微笑む。

「私、山神様に気に入られたらいいな……。」

こぼれる小さな言葉は誰にも届かない。

サチの家族も涙を堪えて笑顔を崩さなかった。

手塩に掛けて育てた娘が生贄となるなんて……。

まだ人生これからの歳の子にこんな惨いことをする村の習慣が憎い。

なぜ、サチじゃないとダメなのか、他の子でもいいじゃないか、親心はもう崩壊を迎えても尚サチに心配かけまいと笑顔を張り付けた。

そんな心情も関係なく村人たちは祭りの準備に取り掛かってた。

中には、「今年の供物はべっぴさんだ!さぞかし山神様も喜ぶだろう」や「これで来年も安泰だ」と喜ぶ声も上がっている。

サチはせっかく施してもらった化粧を涙で汚すまいと感情を抑えて静かに見上げていた。

少しでも下を向いたら涙が溢れる、そんな気がしていた。

村で過ごした十五年、大切に育ててもらった両親、一緒に遊んだ友達、この豊かできれいな村の景色の思い出を心の奥底に閉まって蓋をした。


いつの間にか、空漆黒に包まれ小さな粒が輝き、月は悲しそうにサチへ光を差していた。

サチの家の前には村人全員集まって別れを告げていた。

「サチ、これは山神様から選ばれた名誉なことだ。悲しむことはない。きっと、きっと大切にしてくれる。」

父が泣きそうな顔でサチに問いかける。

サチはそんな父に渾身の笑顔で「行ってきます。」と伝えた。

父に寄り添う母は今にも崩れそうな姿でサチの頬を撫でた。

「サチ、何があっても心を強くお持ち。」

そう言う母の手は震えていた。

「お母さん、ありがとう。私は大丈夫だから心配しないでね」

そんなサチも母の様に震えた手で母の手をそっと握った。

今生の別れ。

悲しい、寂しい、怖い、ずっと父母と過ごしたかった。

「では、参るぞ。」

村長の言葉で大きく太古が鳴る。

大きな荷車には今年収穫出来た米と野菜、そして美しく天女様のようなサチが山へと向かった。

道中は村長と村の若い男衆二人で誰も話すことなく荷車の引く音と遠くから聞こえる虫の音だけが響いた。


サチの村で過ごした最期の日となった。

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