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ぬいぐるみの持ち主~男性主人公~(各小説それぞれ別々にお読みいただけます)

学校一のイケメン俳優と体育祭の用具移動係をやりたい女子が15人いたけど、イケメンが風邪をひいて俺がやることになった結果14人が立候補取り下げたので草


俺の高校にはイケメン俳優がいる。


子役の時から人気で、色んなCMやドラマに出ていた。


そんなイケメン俳優は、もちろん女子から大人気で、学校を休むことも多いけど、もう来た時は超大騒ぎだ。


そんなイケメン俳優も、もちろん一人の生徒ではあるので、係をやる。


イケメン俳優は、体育祭実行委員だ。


体育祭で使う大きな球や、応援団の神輿などは、学校からは離れた倉庫に保管されている。


うちの学校は結構敷地が狭いのだ。


その体育祭の用具をグラウンドまで運ぶのが、体育祭実行委員の中でも、用具移動係と呼ばれる仕事だ。


一日で仕事が済むので、芸能活動をやっているイケメン俳優には、向いている係だ。


というわけで、イケメン俳優はその用具移動係に立候補した。


そして、それを知った体育祭実行委員の女子たちは、全員立候補。全部で15人。


すごい熱意すぎる。


だけど、用具移動の少し前、イケメンが高熱の風邪をひいたとわかった。


イケメンから電話を受けたのは俺だった。


「悪いな。俺はまた別の仕事をやるよ。だから用具移動係はお願いしてもいいか?」


「もちろん。俺もまだこれといった仕事をしてなかったし。任せといてくれ」


というわけで、俺が用具移動係になった。


って報告をしたら、なんとも女性陣は正直なことで。


次々と立候補を取りやめて行った。


もともとホワイトボードに書いてあった名前が次々に消えていき…。


「す、すみません。今日体育祭実行委員の集まりだって、忘れてて…」


遅れてきたぽんこつな後輩が一人だけ立候補を取り下げそこね、俺と二人で係になってしまったというわけだ。


そして、俺と後輩は、倉庫から荷物を運んで歩いていた。


「重いですねー」


「なんかごめんな」


「いえ、先輩はとても偉いです。風邪をひいてる人の代わりにやってるんですから」


「そう言ってくれるとめちゃくちゃありがたい…あれ?」


「なんか、イルカが落ちてますね」


「イルカと言っても、ぬいぐるみのイルカだけどな」


「今両手塞がってるんで、グラウンドまで荷物持って行って…」


「また戻ってくるか」


「はい!」


俺はこの時、後輩とはめちゃくちゃ気が合うぞと思った。





「先輩〜荷物置いたら疲れました」


「はい、ジュース。これ飲みながらイルカのところまで行こう」


「え、もしかしてこれは、先輩が奢ってくれてるのでしょうか?」


「そうだな。まあ、もともとの予定なら、イケメン俳優のサインとかもらえたんだろうから、すまないな」


「いえ、私は別にイケメン俳優のことはどうでもよかったです。単純に、今日用具移動をしたらそれなりに仕事をやったことになるならいいなって」


「あ、そう」


確かに、この後輩は、勇んで立候補することはなく、遅めに立候補していたはず。


それこそ、じゃあこれやろうかなみたいなノリで。


「あ、まだイルカのぬいぐるみありますよ」


「ほんとだな」


今度は手ぶらなので、しっかりとイルカを拾いあげることができた。


「このイルカ、どこに届ければいいかわかったぞ」


「え、なんでですか?」


「だって、ここに…」


「一年五組…りりな」


「だからわかるんだよ」


「ええっ、先輩小学生に知り合いいるんですか? 怪しすぎですねー」


「違うよ。五組の方だよポイントは。この辺はどんどん子どもが減ってて、五組までなんてある小学校は…」


「ないはずですね。あっ、でも駅前の大学附属のマンモスな大きさの学園なら」


「五組までありそうだろ。だからそこに届ければいいとわかったんだ」


「なるほどー、で、今から行くんですか?」


「行こうかな」


「さすが先輩です。私も一緒に行きますね」



そして、俺たちは駅前の学園にやって来た。


「私たちの高校とは桁違いの設備じゃないですか!」


「わかる。すごいなあ…、で、事務室はどっちだ?」


「あそこっぽいです」


「遊園地の休憩所みたいな雰囲気あるぞ。すご過ぎ」


俺たちは事務室の窓口の呼び鈴を鳴らした。


「あ、はい」


「これ、落とし物で、届けに来ました」


「あら、これりりなちゃんのだ。いつもぬいぐるみを抱っこしてるから有名なのよ」


「そうなんですね」


「届けに来てくれてありがとう」


事務室を出たら、俺は褒められた。


「本当にここに届けるので正解でしたねー。素晴らしいです先輩」


「まあ全然間違いだった可能性もあったけどな」


「結果的に合ってたんですから完璧ですよ」


「ありがとう。ちなみに…」


「はい、どうしました?」


「用具移動係に立候補したのには、意外と深い理由があるんじゃないか?」


「私が立候補したことの話ですか?」


「うん。だって、あんな激戦の中で立候補したのに、イケメン俳優狙いじゃないなんて」


「なるほど。ちなみに先輩はその深い理由はわかります?」


「いや、わからないな」


「ダメですねー。私が立候補したタイミングを思い出してくださいよ」


「一番遅かった…」


「そうですよ。ヒント教えますと、私その時、イケメン俳優さんが風邪になったの知ってました」


「え、そうなの?」


「はい、いち早く。だって私、家が病院の隣のマンションですけど、イケメン俳優が病院にマスクして来てたんですもん」


「なるほど。でも他の人は学校をイケメン俳優が休んでても、いつもの芸能活動だと思って風邪だとは思わなかった」


「そういうことです」


「ってことは、イケメン俳優が用具移動係をやめることを察知したから立候補したのか…?」


「ってことでしょうね」


「な、なんでだ?」


「ふー。まだわからないのは先輩がダメですねー。先輩はイケメン俳優と同じクラス。友達ですよね?」


「ま、まさか…」


「そうです! 私は…」


「慎重すぎてイケメン俳優にいきなり近づくのではなく、まずは友達の俺からにした!」


「ふ、複雑に考えすぎです。さっきぬいぐるみを届けたのと同じ。一番普通に考えれば…」


「……」


「私が先輩と一緒に係をやりたかったって、わかりますよね?」


「え、えーと」


「私、先輩好きなんだもん!」


「な、なぜそれを言ってすぐ走り出す!」


「返事を聞く準備ができてないからですよ!」



  ☆ ◯ ☆



「で、この道を二人でダッシュしたってわけ」


「へえ! そうやってパパとママは付き合ったんだ!」


ぬいぐるみを抱いた娘がそう言う。


「ちゃんとぬいぐるみ抱っこしてないと落とすわよ」


「落としたら落としたで、もしかしたらパパとママみたいに付き合う人ができるかもしれないよ!」


「わが娘、賢い…」


「どこがよ。そんな可能性ほとんどない…けど、でも私はパパと結ばれちゃったもんねー」



「ママ、なんか子供っぽいね」


「こ、子供っぽくないよ!」


「わが娘に教えておくと、ママは同世代の中でも日本一子供っぽいんだ」


「は、はあ? そんなことないし!」


「あ、追いかけっこ始まった! 私もやる!」


こうして、変わらない道を走るのが、二人から三人になったのだった。




お読みいただきありがとうございます。

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