パトランプ
音は聞こえない。
ただ、色だけが見えた。
遠くから車を押しのけるかのように、どんどんと近づいている。
まるで聞いたことだけがある、昔の偉人のごとく。
そんなことを考えていると、まずは車をのかした方がいいということにようやく気付いた。
ハザードを付けて、道路左側へ。
ほかの車も気づいたようで、俺と同じようにして道路の端へと寄り、それから道路の中央部には車1台が十分通れるだけの通路ができた。
感謝します、という放送とともに、そこを救急車が通り過ぎていく。
しばらくして道路は平穏を取り戻す。
そうなるとハザードも消して、再び道路を走り出す。
落ち着いた周りとともに、再び時は動き出した。