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悪巧みの勧め

 そんな事を考えているとルミカ嬢の眉がきゅっとなった。

「あなた、私がこうしてレディの心得を教えて差し上げてるのに、その態度はどういうおつもり?」

「あーどうも」

 ルミカはしばらく私の顔を眺めていたが、

「あなた、侯爵へ嫁ぐのは無理ではありませんこと?」

 と私の方へ頬を寄せて囁いた。

「へ?」

「おやめなさいよ」

「は? でももう……」

 私はえ?え?え?とういう不安げな顔をして見せた。

 ルミカは魔女みたいな悪気の固まりの顔をして、

「大丈夫よ。泣きながらおばあさまにお願いしたら。ローザおばあさまに口添えをしていただいたら? あなた、本当は嫌なんでしょう? ローザおばあさまは現国王様の乳母をなさってた方よ。泣きながら頼んでみれば大丈夫よ。それとも、そうね、家を出たらどうかしら? しばらく姿を隠すの。あなたの本気を見せればきっと」

 と言った。

 そんな事をしたら国を上げての大騒ぎでリリアン有罪一択だろうが。

 侯爵家への侮辱と皇太子の顔を潰した罪で我が家はそれこそ爵位を取り上げられてしまうわ! そんなもん!

「そういうのもういいんで」

 と私が言うと、ルミカは、

「え?」

 と言った。

「あのー、もう帰ってもらえます? 私、朝、早かったんで眠いんですよね。それに今更、侯爵との縁談を断るなんて無理だし、あんた、そんないい加減な事言って、かき回すの止めてもらえますか? 実際、そんな事してどうなると思います? 下手したら我が伯爵家は取り潰しっすよ? 馬鹿なんですか?」

「な」

 とルミカは言った。

 今ここにいるのが以前のリリアンでもまさかこんな馬鹿な話に乗るとは思えないが、リリアンは親友のルミカに嫌われまいと一晩中悩んだだろうな。

「馬鹿が浅知恵でつまらない事言うのやめてもらっていいですか。マジで」

「な、あなた、リリアン、私に向かってそんな口をきいていいと」

 思わぬ反撃だったのだろう、ルミカは顔を真っ赤にしてキーキー声で叫んだ。

「じゃあ、聞きますけど、家出してどこへ行けって言うんですか? 貴方の家で匿ってもらえるんですか? あなたが言い出したことなんで最後まで面倒みてくれるんですか? あなたの家で二、三年、面倒見て、侯爵家にひけをとらない嫁ぎ先を見つけてもらえるですか? それともアレクサンダー皇太子妃の地位を譲ってくれるんですか?」

「な、何故私がそんな事」

「だったら、いらん事言わないで黙ってろっつうの。あ、あと、妖精のおっさんはいますから。見せてあげましょうか? ほら」

 ほんの少し手の平に魔力を貯めるとそれがご馳走なのか何なのかは知らないけど、妖精が寄ってきて遊ぶので私はそれをした。

 手のひらに集まって戯れる妖精のおっさん。

「ギャーーーーーーーーーーー」

 とルミカが叫んだ。

 確かに彼女のグレーの瞳にも羽の生えたおっさんが二、三匹、映ったから、見えたんだろうな。

 ルミカは叫んだ後、ソファの上にどすんとひっくり返ってしまった。

「ふん」 

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