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転生したらいじめられっ子のヒロインの上に醜い死神将軍に嫁がされたんだが、聖女に匹敵するこの魔力は内緒でモブに徹したい。  作者: 猫又


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春の妖精やから

 巨大な火の球は、まっすぐにアイスベアーの頭部付近まで飛び上がり爆発した。

 その爆発はもの凄いエネルギーで、付近の積雪を吹き飛ばし、一部の木々をなぎ倒した。

 結界は大爆発から私と侯爵の身を守ったけど、いつの間にか侯爵が私を背に庇い立っていた。

「ガイラス様、私は大丈夫ですわ。あなたこそ身を隠して下さいな。あなたの強さは十分知ってますが剣がない今は、あの熊は貴方の手には」

「分かっている。だが、俺も」

 アイスベアーがグオオオオオオ!と吠えた。

 痛みと屈辱で怒り心頭のようだ。

 私の炎爆はアイスベアーの片目を塞いだにすぎず、分厚い固い毛皮のと筋肉に護られたその頑丈な身体に損傷は与えられなかった。

 それならば今以上の出力の火属性の魔法を出せばいいだけの話で、私の魔力にはまだ十分な余力がある。最大級の火の魔法、炎爆炎爆なら。

 だけどその灼熱はこの一体の雪を溶かして大洪水を引き起こすだろう。

 一キロ先の村が水没してしまうほどに。

「君の火の魔法は駄目だ」

 と侯爵が言った。

「ですけど……」

「アイスベアーの息の根を止めながら、村を守るのは無理だろう。今から村人が避難するまでこいつを引き留めておけるとも思えない」

「ではどうすれば」

「あと少しの時間、こいつを引き留めておけるかい?」

「それは出来ると思いますけど」

「なら、しばらく時間を稼いでくれないか。考えがある」

「考え?」

「ああ、この辺りだったと思うんだ。探し探し物をするから」

「分かりました。お任せ下さい」


 ジョーイが倒れていた付近には小さなお堂のような物があった。

 侯爵がそちらへ歩いて行ったので、私はアイスベアーに向かった。

 雪の積もった平原は歩きにくい。ブーツを履いているけど、ボスボスっと足が埋もれて動きづらい。

 アイスベアーは怒り心頭の様子だったが、私の火魔法を警戒しているようで、両腕を振り回しながらも直接的な攻撃はまだこない。

 私はボスボスっと侯爵から反対の方向へ走った。

 アイスベアーは私に視線を集め、こちらへ向いた。

 ドスッ! とぶっとい腕が上から降ってきて、私の横をかすめ地面に叩きつけられた。

 その衝撃で大地が地震のように揺れて、私はひっくり返って尻餅をついた。

「どうしようか。侯爵が何をするつもりなのかっっととと!」

「りりちゃん、あんまり地面に衝撃を与えるように誘うんはあかんで」

 とおっさんが顔を出した。

「おっさん! いたんだ! どこに隠れてたのよ!」

「わし、寒いんあかんねん」

 おっさんはもこもことたくさん着込んで着ぶくれていた。

「寒さで身体が動けへんし頭もぼーっとしてしまうねんな。わし、春の妖精やから」

「あっそ……てかどうしよう。炎系の魔法は駄目だし、雷……超・雷電!」

 私は爪の先に集めた雷をアイスベアーに向かって放った。

 雷は轟き、凄まじい閃光を放ってから、アイスベアーに直撃したがアイスベアーの毛皮に少しの傷をつけただけだった。

「効かんやろ。アイスベアーは雪雷には慣れてるからな。やっぱり条件は同じや。最大級の雷電やったら効くかもやけど、山も谷も崩れて村は潰れる危険がある」

「じゃあ、どうしろって!」 

 おっさんはのんきに人のポケットの中だが、私は小さい攻撃魔法を打ちながらアイスベアーの気を惹きつつ走っているのだ。

 アイスベアーも苛立ちが募ってきたようで、両腕を振り上げてどすん!と地面を叩いた。その拍子に私は二メートルも浮き上がってから地面に落ちた。

「ててて」

「用意出来たようやで」

 とおっさんが言うので、視線の方へ振り返ると侯爵がこちらへ歩いてくるのが見えた。

「あれは!」

 侯爵の手には侯爵その人ほどの尺の大きな剣があった。 


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