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転生したらいじめられっ子のヒロインの上に醜い死神将軍に嫁がされたんだが、聖女に匹敵するこの魔力は内緒でモブに徹したい。  作者: 猫又


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牢獄

「俺達がここへ着いた時にはすでに騎士団は壊滅状態で、何人かの騎士が団長様の仇と言いながら死霊王へ向かっていく所だったんで………きっと……喰われた後だったと」


「ヤト!」

 私はヤトの背中に飛び乗った。

「死霊王の所まで飛んで!」

「リリちゃん、短気は損気やでぇ」

 とおっさんがもごもごと言ったが、ヤトに乗った瞬間から頭の中では聖なる魔法の呪文の詠唱が初めまっていた。

 チート故に修行もせずに無詠唱で魔法を放つ事は出来るが、魔力を溜め身体中の力を振りしぼった魔法はその効果を上げる。

 ヤトが死霊王までの100メートルの距離を縮める間に、私の言葉は完成していた。

 攻撃型の聖魔法を放つのは始めてだ。

 成功するかどうかも分からない。

 けれど侯爵が死んだ今、私にはもう何もかもどうでもよくなった。

 死霊王と相打ちでも、倒せなくても、これを放つ以外に私の選択肢はない。

 今、私が知っている最大級の聖魔法。


「セイント・プリズン・ゲート! 開門! 殲滅!」


 それは大きな大きな天使だった。

 素晴らしく綺麗な純白の羽は四枚、銀髪に白いローブ姿はこの世の者とは思えないほどの美しい。けれどそれも私の中ではそれほど感動を引き起こさなかった。

 侯爵が死霊王に喰われたという現実が、私の心を暗黒に落とし込んだからだ。

 

 天使はカッと眩しい光を放ち、上空から光の線が何十も降下してきて、牢獄に入れられた惨めな囚人のように死霊王を包み込んだ。

 さらに全ての光の線から閃光が縦に横に斜めに走った。

 光の中で悲鳴のような怒号のような叫びがして、何かが崩れる轟音がした。


 私はヤトの背中にしがみついたままで、光に目がくらんだヤトもしばらくはふらふらとしていたが、すーっと上の方へ浮上していった。

「ガイラス様……」


「やったでぇ。リリちゃん、あんたの聖魔法で死霊王、消滅や!」

 とおっさんの声がしたけど、私はヤトの背中に乗ったまま寝転んで空を仰いだ。

 眩しい光も天使も消え、青空が見えた。

 死霊王の放つ気配や瘴気、穢れが消えていた。

「瘴気の森の半分は浄化されたみたいだね」

「まあ、また森の奥から魔獣が生まれて徐々に戻るやろうけどな」

「それにしても凄いね、さすがリリアン様だ!」

 とヤトとおっさんの会話も聞こえてきたけど、そんな事、もうどうでもいい。 


 何なの異世界って、簡単に死ぬのね。

 自分だけチートで、魔力持ってて、安全で。

 でも誰も助けられないじゃない。


 ヤトが急降下し、地面におりた。

 死霊王がいた場所には崩れて落ちた残骸の山が出来、それは徐々に薄くなって消えて行ったが。

「アリアス様」

 と言う声と、ジンク達冒険者が賢者っぽい格好の女性を残骸の中から引っ張り出すのが見えた。


「賢者やから死霊王の腹の中でも抵抗して、吸収が遅かったから間に合うたんやな」

 とおっさんが言ったので、私は死霊王の残骸の方へ走った。

「ガイラス様! ガイラス様!」

 もしかして侯爵も無事かもしれないと思ったからだ。

 だが、さすがに魔力を使いすぎたようで、足がもつれて転んでしまった。

 頭がクラクラし、酸素を吸うのも上手く出来ない。

 意識が遠くなるのを感じた。

「ガ、イラス様……」



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