表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/60

参戦

 嫌がるアラクネを先頭に立たせ、ヤトに乗って瘴気の森の近くまで飛んだが、本当に目に見えるほどに魔獣達が逃げ出している。

 少しでも知能のある魔獣は死霊王を恐れ、吸収される事に抵抗があるようだ。

「この付近には村も町もないけど、死霊王がこのまま進路を西にとればやがてウエールズ領に入るなぁ」

 とおっさんが上空から下を見て言った。

 

 死霊王は今までにずいぶんと魔獣を食い散らかしてきたののだろう。

「死霊王ってのは、初めは一体のグールから始まるんや。そいつがうろうろして人間やモンスターを襲う。普通は冒険者に討伐され地に返るんやが、運良く生き延び、徐々に力をつけ、いろんな魔獣の特性を吸収合体してだんだん大きくなり、知恵もつける。そんでそれらが何体が合体して死霊王になるんや。過去にはもっとでっかい死霊王もおったけど、聖女や賢者と呼ばれる者に討伐された。あいつには聖魔法が効くからな」

「聖魔法……それなら使えるわ」

 とは言ったが、私程度の魔法使いのレベルの聖魔法が効くのかしら。

 上空からでは豆粒くらいにしか見えないが、地面に下りたらヤトの親ドラゴン危険指定魔獣αとは同じくらいはらうだろう。

 ビルにして十階分くらいはありそうだ。

「私の聖魔法が効くかどうか試してみる価値は?」

「まだや。ほら、ように見てみ。続々と冒険者が集まってきよる」


 目をこらすと、確かに数人の人間の集まりがあちらこちらに見える。

「冒険者が討伐に来たの?」

「そうや。聖魔法持ちの魔術師が仲間にいたら来るな。死霊王をやっつけたら報酬もでかいし、経験値もかなりあがる。国に一目置かれるパーティになるやろうし。それに足の速い伝令兵がもう国を動かしたようや。すぐに騎士団も駆けつける」

「そう。でも侯爵様がこの辺りにいたら戦いに巻き込まれるわ。早く見つけないと」

「そうやな」

 

 それから私達は周囲を伺いながら、ぐるぐるとその場を飛んで、侯爵を探したけど、どこにも目当ての人の気配を探し出す事は出来なかった。

 冒険者達のパーティは次々と集まり、団結して死霊王に立ち向かう姿勢も見えた。


「おっさん、あの冒険者達で死霊王を討伐出来ると思う?」

「さあなぁ」

 おっさんにもこの戦いの行方は分からないようだった。

「ヤト、下に降りてちょうだい」

「まさか参加するんやないやろうな?」


「私は戦いなんかしたことないし、出来ないわよ。でも回復役くらいは出来るわ。前にヤトの親ドラゴンを穢れから治したじゃない? それくらいなら出来ると思うの」

「まあ、リリちゃんの魔力やったら、瀕死でも速攻回復するやろうな。でも、あんたが怪我したら何にもならんで」

「分かってるわ。自分に鉄壁の防御結界を張っておくし。ヤト、お願い、降りてちょうだい」

 ヤトは素直にうんといって降下を始めたが、

「本気かよ」と言ったのはアラクネだった。

「アラクネ、あなたはもうここにいなくていいわよ」

「マジ? やりい!」

「あなたは下で侯爵様を探してちょうだい」

「え?」

「侯爵様を見つけるまで帰ってこなくていいわ」

「えー」

「人間には分からないあなた特有の感や情報網で侯爵様を探してちょうだい。お願い」

「……分かったよぉ……」

 アラクネはぱっと空中に飛び出したと思うと、風に乗ってあっという間に見えなくなった。

「私達は冒険者の加勢に行きましょう!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ