ラブレター
侯爵が王都へ行ってしまってからは私もやることが増え忙しい。
領内の街はデールだけではなく、他にも小さめだが街が一つと村が三つある。それらの視察はオラルドの連れて来た信頼のおける人達に任せて、そちらも教会修繕や街道の安全な改修工事などいろいろ計画をしている。
オラルド達と打ち合わせをして自室へ戻りほっと息をつく時間に私は侯爵からの手紙を取り出して読む。
一枚目は私からの問や提案への回答だけど、二枚目は私信という奴だ。
何度も何度も読み返しても、また読みたくなる。
『そちらの生活はどうだろうか? 何か不自由はしていないか。
ウエールズ領の冬は厳しいから、都会育ちの君にはつらいかもしれない。
側にいられれば顔を見て話が出来るのに、それが叶う日が遠いのが私にはつらい。
早く帰って君を抱きしめたい。
これまで任務だけに命を懸けてきた自分が、ふと気が付くと君のことを考えているのが信じられないくらいだ。
そう言えば君に足を治療してもらった事が皆に知られてしまい、引退を考え直すように毎日国王陛下の使者が説得に来るのに辟易している。
一日も早く、君の元へ帰りたいのに。
死霊王を倒したらすぐ帰る。
待っていてくれ。
愛している。 G 』
「見てみ、あの顔、甘い甘い顔やろ」
「ほんまやな、嬉しい事、書いてくれてんのやな」
「そんな幸せなんやったら、それを届けたあてにもきっと魔法玉くれはるわな」
「そりゃ、くれるやろ。自分だけ幸せになろうっちゅうそんな人ちゃうって」
窓際でクスクスこそこそ声がする。
「もう! わかりました!」
むむむと魔力を練って手のひらに集めるてぎゅぎゅっと丸めて固めて渡すとおっさん兄妹は大喜びしてそれに抱えついた。
「見てみ、兄様、これ魔法玉ちゃうで。魔法ハート型やで。リリちゃん、侯爵様とラブラブやん」