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転生したらいじめられっ子のヒロインの上に醜い死神将軍に嫁がされたんだが、聖女に匹敵するこの魔力は内緒でモブに徹したい。  作者: 猫又


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氷激の悪魔

 部屋へ戻る長い回廊を歩きながら、どうしたもんか、と考える。

 食事が終わった頃にもう一度侯爵に面会を申し込んでみよう。

 顔を見せてもらわない事にはあの人間が侯爵とは思えない。

 明らかに小さいでしょ。

 けど屋敷の者は本気であれが侯爵と思ってるようだし。


 あとは……ドラゴンもどうにかしないとなぁ。

 親ドラゴンの病気を治すって、どうしよう。

 


「ええか、あのリリちゃんはちょろいからな、大人しゅうして、可愛いとこを見せるんやで。例え親ドラゴンが「氷激の悪魔」という名で呼ばれる危険指定魔獣αやとしてもやで?」

 という声が聞こえて来て、私はばんっとドアを開けた。

「ちょっと! 氷激の悪魔って何よ! そんな危険な魔獣を治すなんて冗談でしょ!」

 と言いながら入って行くと、おっさんはあわわわみたいな感じで焦ってるし、子ドラゴンはキューと尾を巻いて小さくなった。


「まあ、そう言うたってくれな。危険指定魔獣は人間がつけた区別で、別のドラゴンに悪気はないんや」

「あのねえ! 悪気がなくても、それだけの危険な行動があったからそんな区別をつけられたんでしょ? 危険指定魔獣αが出た場合、軍の一連隊以上の出撃って知ってるのよ!」

「へへへ」

「へへへじゃないわよ。ドラゴンの治療はしません。その子だって今は小さいけど、大きくなったら魔獣なんでしょ?」

「そうやな。親ドラゴンを見殺しにされた恨みは深く、恨み辛み復讐を胸に誓う悪ドラゴンに成長するんは間違いない」

 とおっさんは言った。

「あのねえ」


「お待ちください……」

 と間に入ったのは白爺で、

「氷激のドラゴンを治療するのは危険と判断されたようだが、このまま放っておいて、呪い、穢れで命を落とせばドラゴンの身体は氷激の核に変化し、そのままこの辺りの大地は未来永劫凍りつきますぞ」

 と言葉を続けた。

「え?」

「このウエールズ領はもちろん、やがてはこの国すべてを凍らせてしまうでしょう」

「マジかよ……」

 私は疲れ切って、手近なソファにどさっと座った。

「サラ、暖かいお茶をちょうだい」

「は、はい、ただいま」


「そもそも、親ドラゴンが死霊王だっけ? に傷を負わされたのは何故? どこで? 危険魔獣よりも死霊王が強いわけ?」

 白爺は子ドラゴンの横でその冷たそうな身体を撫でてから、

「事の起こりは隣国スエルランドのある地方で古代ダンジョンが掘り起こされた事からですじゃ。古代ダンジョンに封印されし死霊王が放たれ、辺りを瘴気の谷にしてしまい、やがてその周辺の村人をアンデッド、グールにして配下としてしまいました」

「ええ~~」

「死霊王は縄張りを広げ、このアイスドラゴンの住み処まで奪おうと争いになり、そしてアイスドラゴンは呪いの刀傷を受けて負傷、命からがらこの国へ逃げてきたのです」

「つぇ~~死霊王、マジですか」

「ドラゴンの傷は深く、このままではやがて命を落とす。死ねばその代償としてこの国全土を凍らせてしまうでしょうな。この季節にしては領地内で寒さが厳しいのはそういう理由ですじゃ」

「え、ドラゴンを治さなくちゃ、結局?」

「この国はおしまいってこっちゃ」

 とおっさんが締めた。

「わしら妖精は別の国に行くけどな。南の暖かい国に親戚おってん。けど、この国の人間がぜんぶ隣の国に引っ越しは出来ひん。それこそ国同士のいがみ合いになるで」

「ドラゴンを治したら、ドラゴンはこの国に危害を与えない?」

「ドラゴンはあんたの思うてるより知能は高い。低級な魔獣とは違う」

 とおっさんが胸を張ってそう言った。

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