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『痛い目』

振り返って私を見下ろす倉岡。

倉岡が、ゆっくりと口を開いた。


「お前、腕太すぎ」


カッチーーーーーーーーンッ


「はぁぁぁぁぁぁぁ???!!!」


私の中の何かが音を立てて切れた。

もういい、こいつにはもう嫌われているんだから言ってやろうじゃないの!!


「勝手に人の腕握って嫌味言うなんて無礼にも程があるでしょ!?あんた常識ってもん母親のお腹に忘れて来たんじゃない?!胎児に戻ってやり直せ!!そもそも私にストーカーするのやめてくれない?ガチきもいんだけど??!!声は小せえし髪の毛も汚いし一人でメシ食うようなボッチに付きまとわれてたら私の精神おかしくなっちゃうわ!!!!!!!あーーーー気持ち悪い!!!!ほんっと気持ち悪い!!!!!次私の前に現れたら警察に通報するから!!!!」


ふぅふぅふぅ・・・振り返って私を見下ろす倉岡。

倉岡が、ゆっくりと口を開いた。


「お前、腕太すぎ」


カッチーーーーーーーーンッ


「はぁぁぁぁぁぁぁ???!!!」


私の中の何かが音を立てて切れた。

もういい、こいつにはもう嫌われているんだから言ってやろうじゃないの!!


「勝手に人の腕握って嫌味言うなんて無礼にも程があるでしょ!?あんた常識ってもん母親のお腹に忘れて来たんじゃない?!胎児に戻ってやり直せ!!そもそも私にストーカーするのやめてくれない?ガチきもいんだけど??!


肩で息をする私を、倉岡は目を細めてまるで変なものを見るように見てくる。


「その目ムカつくのよ!!!!!なんかいいなさいよ!!!この変態!!!!!!」


倉岡は顔を歪めた。


「醜いな。デブで不細工でおまけに気性が荒くて下品。最悪だ・・・・――」


倉岡は頭を抱えて溜め息を吐いた。何なのこの男?!

あんたも大概に無礼で下劣でメガネの陰キャで人の事言える立場じゃないでしょーが!!!


倉岡は改めて私を見ると、眼鏡をくいっと持ち上げた。


「そもそも、僕は変態でもストーカーでもない」

「じゃあ何なのよ?!」


倉岡は大きな溜め息を吐いて、向き直した。


「僕だってここの生徒だぞ」


?!?!??!?!?!?!?!??!?!?!!!!!!!!

脳天を突き抜けるように雷が走った。


「あ、あんたも看護学生なのぉおおお?!」

「そう???だから断じてお前のストーカーなんかじゃない。断じてな」


心の中で膨らんでいた怒りが、爆発せずにシュルシュルと音を立てて萎んでいく。


「全部お前の勘違い。これで分かったか?僕のことを変態呼ばわりするのはやめろ。第一、自分がストーカーされるような人間だと思ってるのが恥ずかしい」

「ちょっとそれどういう意味よ!!」


倉岡の胸倉を掴もうとするが、ひらりとかわされてしまった。


「さっきも見てたけど、お前、自分の性格をちょっとは改めたらどうだ?そんなんじゃ友達失うぞ」


倉岡はまるで本当に心配しているように眉をひそめた。


「うるっさいわね!!!ごはんを一緒に食べる友達すらいないような人間に言われてたまるかっちゅーの!!!!!!!」


すると倉岡は口をつぐんだ。


ほーーーーーーーーん。なぁーーーんだ、友達居ないの気にしてんじゃん。


「実はイケメンだからって調子乗ってるもんね。周りを見下してるのがバレバレなのよ。あーあ、かわいそうに!私が友達になってあ・げ・よ・う・か???」


倉岡の顔が引きつる。


ふっはっはーっ!!!

ざまぁみやがれね。


「ち、ちゃんとした理由があるんだよ。お前と一緒にするな」


倉岡がやっとの思いで言葉を捻り出す。所詮負け犬の遠吠えね。


「じゃあその理由がなんなのか、説明しなさいよ」


倉岡は一歩引いてまた口ごもってしまった。


「い、今は言えない」


ぼそっと出した言葉に私は腹を抱えて笑った。


「ちょっと勘弁してよ!!!!嘘つくなら理由くらい考えてからつきなさいよ!!」

「嘘じゃないし!!!!!!!」


顔を赤面させ、倉岡ががっついてきた。

なぁんだ、分かりやす。意外とかわいいところもあるじゃん。


「あーあ、お腹痛い。あっ、もうこんな時間!急いで戻らないとご飯食べる時間なくなっちゃうじゃない。面白いネタをありがとうね、倉岡くん♡」

「おっ・・・まえ・・・!!!調子乗りやがって!!」


倉岡の顔が歪む。あーあ、いい気味。


私はそんな倉岡に背を向け、ひらりと手を振った。


「またバイトで会えるのが楽しみだわ、ふふふっ」


すると、後ろからぼそっと倉岡がつぶやいた。


「すぐに痛い目みるぞ」


私はその言葉を鼻で笑った。

言ってなさいよ。友達の一人もできないあんたとは訳が違うのよ。


食堂に入り、元のテーブルを探した。


あれ?????


自分の居た席が分からない。え、どこだっけ。

だってみんなが座ってるはず・・・・――


その時、自分の座っていたテーブルを思い出した。

うん、合ってる。確かにこの席。


そこには食べかけの私の定食が2つ並んでいた。間違いない。


間違いないが、何かの間違いであってほしかった。





私の周りに座っていたはずの友人たちが、一人残さず居なくなっていたのだ――


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