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11 野バラが王宮にきた理由

どう見ても肉の塊を、こっそりと出すならまだしも堂々と皿に出していると言うことは情報が伝わってないか、ただの好き嫌いだと思われているか、嫌がらせで出してやろうという魂胆か。


野バラは表情を変えずに皿をじっとながめると、ナイフとフォークに触れもせずに済ました顔で無視を決め込んだ。その変わりテーブル上に美しく盛られている果物をとると一つ一つ味わうように食べ始めた。


(!やはり公爵家ともなると果物の甘さが違うわ。別邸でも美味しかったけど、本家ともなると選りすぐりの食材があるのね)


皿の食事には一向に手をつけることなく果物ばかりぱくぱくと食べる野バラに公爵家の人間は怪訝な顔をし、食事を提供する使用人は取り替えたらいいのか迷っているようだった。


「おや、手を付けていないようですがお気に召しませんでしたか」

「あらあら、お肉は苦手でしたか?でもお招きに合ったお家でこのような無作法なことをするのはよくありませんわ」

「もしかして食事の方法がわかりませんの?仕方ありませんわね、お育ちのせいですもの。でもこのようでは王宮には行けませんわねぇ」


口々に飛び出す嫌味にすべて答えることなく無視を決め込む。


(彼らの反応からして、嫌がらせとただの好き嫌いだと思ってる感じなのね)


野バラはまるで意に介さず給仕に視線を向けて自分の前の皿を下げさせようとした。その使用人はどうしたらいいのかと少々顔を青ざめさせ、公爵家の人々の顔色をうかがいながらそっと近寄ってさげていった。


それを見た面々はさらに嫌味を言ってきたけれど、水を飲んで飾ってある生花を眺めながら上手そうだなと考えて暇つぶしをしていた。そしてさらに運ばれてきたものは、魚料理だった。

ピクリと眉を上げて不快感を表した野バラに愉悦の笑みを浮かべる者たちを見て、もういいか、と野バラは諦めた。


これまた食器にはまったく触れずに目の前にある生花へ手を伸ばした。野バラが生けてあるガーベラを手にとったことに誰もがいぶかし気な顔をしたが、次の瞬間驚愕に目を見開いた。


花の香りを楽しんでいた野バラは、薄く可愛らしい口を開けてぱくりと花を食べだした。しん、と静まり返る中誰もがむしゃむしゃと食べ続ける野バラに目が釘付けになっていた。


最後の茎までぽきぽきと食べきって、芳醇な味わいに満足げに頷くと野バラは席を立った。


「何度も何度もわたくしは植物しか食べられないと伝えて、こちらでもそのように伝えていたはずなのにどうして肉や魚がでてくるのかしらと思っていたけれど。植物しか食べられないということがどういうことかおわかりになっていないようだったからもう一度お伝えいたしますね。わたくしは喰花族、あなたがたとは種族が違うの。生でお花を食べることができるくらい。よろしい?」


そう言うと、誰もが固まっている間に野バラはゆったりと出て行った。

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