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海の覇者  作者: リック
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第6話 厄介事

艦艇は好きなんですがただ名前を知っているくらいのニワカです。

この物語の艦の構造や設定も無い知識を一生懸命搾って出来た何となくの物なので、あまり細かい所までは考えないで下さい。

なんかごめんなさい。

 五日後


「なんもないね~」

≪そうですね≫


 この五日間は他の船舶に出会うこともメガフロートの町をみつけること無く、何もない平和な航海を続けていた。

 特にやることも無いので、トレーニングルームで体を動かしてみたり、的がない状態での銃の射撃訓練を外でしたり、厨房で料理やお菓子を作ったり、掃除をしたりと暇を潰していた。裸で。

 一様、腰巻タオルにしているがほぼ裸なため慣れ出した事もあり、一日だけタオルも巻かずにすっぽんぽんの状態のままで過ごしてみたこともあった。その結果意外としっくりくることに気付き心にひびが入った今日この頃、本日も平和な航海が続いております。

 あとアウラに自分がこの世界の人間ではなく、別の世界から転移もしくは転生している人間である事、一様向こうの世界では28歳だったが今の姿の年齢で、こちらの世界の人間として生きていく決意をした事を話した。話した結果アウラの反応は

≪なるほど。ですが私にとってご主人様はご主人様です。異世界の人間だとしても見た目が子供で中身がオッサンだとしても、私はご主人様の物です。これからもいつまでも≫

 嬉しい言葉なんだがある言葉で台無しなんだよな、間違ってはないけど。

 アウラの一面が少し見えたりしながら過ごしていると


≪ご主人様、レーダーに島が映りました。≫


 艦橋の椅子でボーっと座りこれからの自分の変態性(在り方)について考えているとアウラが教えてくれる。


「え、ほんと!?服が買える!あ、でもお金がない!てかこんな格好では人前に出れない!!」


 人が住んでいる島があるらしく椅子に立ち上がっている興奮気味な自分をよそに、アウラは冷静に報告をする。


≪いえ、残念ながら小さな無人島のようです。≫

「…そっかぁ」


 分かりやすいほど落胆しながら椅子に座る。勝手に人が住んでいる島と思い込んで騒いでいた自分が悪いが、それほどまでに服が欲しい。


(何か服が、着る物が欲しいよう。パンツだけでもいいからぁ。もう裸に慣れてきている。そのうち裸でいることが当たり前になって逆に服を着ることが嫌になったり、裸で生活することが習慣づいて無意識に外を裸で歩いたりとかして、最終的には露出プレイに目覚めたりなんかした時には自分は…ハハッ)


 心の叫びと不安が漏れていたのか


≪…上陸はできるみたいですので、気分転換もかねて上陸してみては?≫


 レーダーを見てみると小さな島がいくつか映っている。どうやらこの海域には無人島(小島)が点在しているみたいだ。アウラはその中の一つに気分転換として上陸することを提案してくれた。


「…そうだね、じゃあお願いできる?」

≪はい。お任せください≫


 この艦、御影で何も整備されていない場所の接岸は座礁などの危険があるため、ある程度の離れた場所で停泊してそこから別の物に乗って無人島に向かうことにした。停泊はアウラに任せて自分は部屋に戻ってクローゼットの中にあったズタ袋を手に取りそのまま厨房へと向かう。島で食べるためのサンドイッチと飲み物を用意しできた物をズタ袋に入れ今度は武器庫に向かう。

 無人島には何があるかわからないので護身用にハンドガンを持っていこうと思う。持っていくのはベレッタM92、M9と言った方が聞き覚えのある人は多いと思う。行くのは一応海岸だけで島の中までは入らないように決めているが用心に越したことはない。体は小さいが射撃訓練では何とか撃てていたので大丈夫だろう。…反動が強いだけだから。

 一週間ぶりの陸地に少し気分が上がる。御影は超大和(大型艦)であるため波の揺れはほとんど感じないが自分が敏感なのか寝る時などに微かに揺れを感じていた。今では慣れたが海上での生活は初めてなため陸地が恋しくなってきていた。そんな時に無人島であるが陸地に上がれるのは嬉しい…さらに着る物があればさらに嬉しい。漂流物として今から行く無人島に流れ着いていないだろうか…。

 準備が出来たので端末をズタ袋から取り出しアウラを呼び出すとすぐに応答した。


≪何か問題が起きましたか?≫

「いや、準備が出来たからどうすればいいのか聞こうと思って」

≪でしたらこちらも準備は出来ておりますので右舷側艦載艇格納庫までお越し下さい。≫

「わかった」


 端末を再びズタ袋に入れ格納庫に向かう。

 艦載艇格納庫――わかりやすく言うと大和型の艦後部の両側にぽっかりと開いている部分――には、左右それぞれの格納庫に内火艇2隻の計4隻が天井走行クレーンに繋がったまま格納――短艇もあったがそれは別の場所に収納――されていた。


≪それでは、一番奥の【内-6】と書かれている物にお乗りください。≫


 アウラに言われたとおりに一番奥――出し入れ口の前――にある【内-6】と書かれた内火艇に備え付けられている梯子を使って乗る。


≪それでは扉を開放します≫


 そうアウラが言うと、ビー、ビーと警告音が鳴りながら黄色いパトライトがクルクルと回りだす。

 するとゆっくりと目の前の鉄の扉が外開き左勝手――船体側――に開いていき、開いて90度の位置――全開状態――で止まる。


≪これより艦載艇格納庫から出しますのでお気を付け下さい≫

「わかった」


 返事をすると内火艇は少し浮いて前に動き出す。

 海面に下ろせる位置――最上甲板が艦尾両舷側に張り出している部分――まで来るとクレーンは止まり、次にゆっくりと内火艇が下ろされる。着水したのを確認すると


≪申し訳ございません。ここからはご主人様にも手伝っていただきたいのですが≫


 申し訳なさそうにアウラは言ってくるがわかっていたことなので特に気にはしていない。


「いや、全然大丈夫だよこのくらい。でもやり方は知らないからそこは教えておくれ」

≪はい。ありがとうございます。それでは――≫


 アウラの指示に従いながらアイフックを内火艇から外す。外し終わると安全確認を行いそれも終わらせ操舵室に向かう。操舵室の中は人一人が入れるスペースしかなく、操舵とエンジンレバー、メーターくらいしかない。あとは何かはめられそうな部分があるだけである。


≪そこのはめられそうな所にこの端末をはめて下さい。≫


 とアウラがいうので端末をはめてみると内火艇のエンジンがかかり、煙突から黒煙が噴き出し内火艇は動き出した。


「え、これも操縦できんの?!」

≪はい。艦に搭載されているこの内火艇や観測機、偵察機はこの端末をはめるだけで私が遠隔操縦することができます。御影から半径十km以内でですが。≫

「へ~」


 もう考えるのはやめて目の前に見える無人島へと意識を向けた。



 白い砂浜に海底が見えるくらい澄んだ青色の海。

 よくテレビや写真で見るような南国の島の海岸に内火艇は近づいていき船首が海岸に乗り上げる手前くらいで停船した。


≪ご主人様。無事に無人島に到着いたしました。≫

「はーい」


 自分は操舵していた端末を外し、梯子をつたって降り無人島に無事上陸した。


「上、陸!」


 そう言いながらガッツポーズをとってみる。


≪はい。おめでとうございます。≫


 アウラが合いの手を入れてくれる。


「それじゃあこの砂浜を歩いてこの島の周りを見てみようか」

≪はい。≫


 砂浜を歩きだす。自分は何時もの腰巻タオルスタイルで歩いる。つまりは裸であるため、もちろん靴なんてものは無く裸足なので砂浜がものすごく熱い。気温も高く日本のような湿度の高い暑さではなく、南国のカラッとした暑さだが快晴のため太陽光が強く肌を直に焼いていく。なので少しでも涼むために波打ち際を歩いていく。砂浜に寄せるさざ波を音と足で感じ、そしてジリジリと肌を焼かれていくのも感じながら歩いていると砂浜に何か打ち上げられているのを見つけた。気になったのでその何かに近づいてみる。

 近くで見るとそれは掌――五歳児の掌の大きさ――くらいの大きさで、毛に覆われた丸い物体だった。ちっちゃな丸いモップの様に見える。

 毛はもともと白かったのか茶黒く汚れ、所々砂や木の枝などが絡まっており海水で濡れたためか渇いて毛がベトベトしていた。


「これ、なんだと思う?」

≪…何でしょうか?≫


 アウラでもわからないらしい。


≪ご主人様、端末のカメラをそれに向けてみてください。≫


 アウラに言われたように端末の裏にあるカメラを謎の毛の物体に向ける。


≪これよりスキャンをして調べてみます。≫


 すると端末の画面に【スキャン中…】と表示され、五秒ほどで【スキャン完了】に変わる。


≪ありがとうございます。もう向けていなくても大丈夫です。≫

「で、何か分かった?」

≪はい。この毛の物体は生き物でして、名前はキャピルと呼ばれています。生息地域は寒冷地帯です。性格は臆病なので警戒心がとても強く人には全く懐きません。昔はたくさんいたようですがその見た目により大変人気の生き物でして、さらにその毛はシルクよりも滑らかで羊毛や獣毛のいい所だけを持ち合わせているので多くの密猟、密輸が行われたため絶滅危惧種となっています。≫


(そんな生き物がこんなところに打ち上げられているということは…)


「密輸か?」

≪その可能性が高いかと。このキャピルは模様の無い白い毛なのでなおさらでしょう。キャピルの毛は産まれつき何かしらの色、模様がついているのですが極稀に模様が全くない真っ白な毛のキャピルが産まれてくることがあります。要はアルビノです。また模様の無い真っ白な毛を持つキャピルは幸運を呼ぶといわれており、そのため収集家や金持ちに大変人気があり高額で取引され剝製にされたりしているようです。このキャピルはまだ子供のようですが希少価値は十分にあります。≫

「…もう死んでいるのか?」

≪いいえ。かなり衰弱していますがまだ生きています。しかしこのまま放置すればあと三時間程で死亡するでしょう。≫

「御影の医療施設で治療は可能か?」

≪はい。可能ですが…助けるのですか?≫

「あぁ、ダメか?」

≪いいえ。構いません。それがご主人様の意志ならば私はそれにただ従うだけです。≫

「アウラの意見も欲しんだが?」


 そう言いながら衰弱しているキャピルをズタ袋に入れていた予備の綺麗なタオルで包み内火艇が停泊している場所に戻る。


≪わかりました。ではまず絶滅危惧種であるキャピルをご主人様は保護しましたがそれを証明してくれる人がいません。疑われることは間違いありませんが最悪、密輸者として冤罪にされたり他の犯罪の濡れ衣を着させられたりと面倒ごとに巻き込まれる可能性がとても高いです。≫

「だろうな。自分はアウラ、御影の主。アウラは陽電子頭脳の人格AIで御影を制御、管理している。そして御影。特に御影の機関は一番やばいだろうな」

≪はい。その通りです。ですがこれは何処かの国にご主人様が保護を求め、ついでにキュピルを元の生息地域に戻すために事情等を話された場合です。一番可能性のある面倒事は密輸していた者が未だにそのキャピルを狙っていることです。≫

「探していると?キャピルが死んでいても剝製として価値があるからってこんな広い海に落ちたキャピルを見つ出すのは幾ら何でも不可能に近いはず。そんなことを密輸者がしているとは思えないけど。仮に探しているとしてどうやって見つけ――いや、待て、もしかして…」


 嫌な予感がしたので急いで内火艇に向かう。

 急ぎながら自分はタオルの中のキャピルを優しく触りながら確認する。


≪はい。ご主人様が想像した通りです。そのキャピルには――≫


 毛をかき分けながらキュピルの身体を触っていると、異物に触れる。


≪――GPSが付けられています。≫


 キュピルの胴部分にバンドが付けられていた。


「これがGPSか?」

≪はい。そのようです。それから電波が発信されているため密輸者にキャピルがここにいることが知られているでしょう。≫

「もし死んでいても剝製にすればいいから絶対に取り戻し来るよな。てか気付いていたのなら教えてくれませんかねぇ!?」

≪申し訳ございません。≫


 内火艇に着き急いで乗り込み、端末をセットしてアウラに内火艇を御影へと戻させる。

 内火艇を御影へと収納させながら錨を上げるように指示を行い御影の発進準備を急がせ、クレーンで内火艇を十分上げたところでアウラに御影を発進させる。ついでにキャピルについているGPSを外し海に捨てる。

 内火艇を格納庫に収納し終わると自分はまず汚れているキャピルを洗うために大浴場へと向かいキャピルを洗る。ついでに自分も洗う。

 キャピルは全体的に楕円形で小さな足の四足歩行、狐のような形の短い尻尾を持っていた。このような毛玉に手足と尻尾が生えている生き物を見たことがある気がして洗いながら思い出していると


(あぁ、モ○ャに似ているんだ)


 思い出したのは原作は漫画でアニメにもなった妖怪の依頼を解決する作品。その作品のマスコットキャラクターである<人に飼われていた動物が死んで妖怪となったもの>の毛玉の妖怪に似ていることに気が付いた。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

誤字、脱字等がありましたらお気軽に報告してください。感想、意見(こんな女の子や艦艇を出して欲しい等)も大丈夫です。

でも作者の心は薄い膜で出来たガラスよりも繊細なので優しくしてください。(二度目)

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