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海の覇者  作者: リック
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第4話 艦内探索

艦内は様々な施設、部屋があり一種の豪華客船になっていた。調理施設、食堂はもちろんのこと、医務室、手術室、集中治療室、といった高度な治療ができる部屋や、トレーニング施設や昼はカフェ、夜はバーになる休憩室といった―カジノやゲーセンは無かった―娯楽施設があり、トイレは水洗、洗濯場もあり極めつけは大浴場とサロンがあったことだ。海水からスティウムを抽出―大気からも抽出している―する際ついでに真水にしているらしく、その真水を生活水として利用、かなりの量の真水に変えることが出来るため大浴場で使ても問題はないらしい。大量の水を沸かすのに必要な電力もオーパーツである炉で潤沢すぎるほどの電力が作られているため問題ない。その潤沢すぎる電力の大体はこの艦の人格であるAIに使われているらしく、余った電力でそれぞれの施設、部屋に電力を割り振っているが、それでも余るため高電圧バッテリーに蓄電しているらしい。またすべての施設、部屋には冷暖房完備、扉は自動ドアとなっており、扉の前で停まるのを感知して開けるらしく、前を通り過ぎる場合は開かないようになっているとか。他には武器保管庫や貯蔵空間、格納庫、防空指揮所、見張り台など様々な場所を案内してもらったが、まだ入ることが出来ない区画もあった。自分この艦の主なのに。それでも


「ほんと、凄いなこの艦は」


率直な感想をAIに言う


≪恐れ入ります。≫


自分自身を誉められたのが嬉しかったのか、端末の画面には笑った顔が映る


「次は例の機関部を見に行きたいんだけど」


と案内を頼む


≪はい。わかりました。こちらです≫


そうAIが言った後、端末には艦内地図が表示され進行方向にマークがついている。これに従って例のオーパーツの機関部へと向かう。そして着いた先は


「これが例のオーパーツの機関?」

≪はい。この中にそれがある状態のようです。≫


目の前には10×10m程の真っ黒な正方体があり、まさにブラックボックスといえる代物があった。その代物には何かしらの模様が彫られているらしくそれに沿って光が走っており、いかにもSFチックでオーパーツであるとわかるものであった。


≪次はどうしますか?≫

「そうだなー…あっ」


他にないか考え、思い付いた最後の場所に案内してもらう。


≪ここです。≫


案内されたところは厳重なセキュリティと隔壁に守られた場所だった。扉が開くと身を震わせるほどの冷気が中から溢れ出しくる、中は暗くその部屋からは冷房の音と何かしらのファンの音が響いていた。一歩、中に入ると部屋には、スーパーコンピュータが大量に設置されているらしくチカチカと緑色のランプが点灯しているのを横目に、そのまま奥に進んでいくと橙色の粒子が動いている物が一番奥にあった。その前まで行くとスポットライトによってそれは光に照らされる。それは大きなガラスの筒の中にさらにガラスの球があり、そのガラスの球が浮いている状態で、そのガラスの球の中に橙色の粒子が螺旋状になったり、2つの輪になって輪違いになったり、波のような動きをしたりと、流動的な動きをしていた。自分は寒さを忘れその動きをじっと見ていた。すると

≪あの…そんなに見ないでください。少々恥ずかしいです。≫

照れた顔が表示され、ポーと高い汽笛の音が冷房とファンの音に混ざって微かに聞こえる。


「おぉ」


AIの声と汽笛の音で我に返る


「これが…?」

≪はい。これが私です。≫


案内をしてもらったのはAIの本体がある部屋。その部屋は艦橋の司令塔部分にあった。


「すごいな、とっても綺麗だからつい見惚れてしまった」

≪そうですか≫


また照れた顔が表示され、ポー、ポーと高い汽笛の音が聞こえる。


「で、なにこれ?」


見たことはある。実物ではなく想像上の物として


≪はい。これは陽電子頭脳です≫

「…ねぇ、それって」

≪はい。ご想像の通り、よくSF作品に出てくる想像上の代物です≫

「お前さんもオーパーツやないかい!」

≪申し訳ございません。≫

「ねぇねぇ、もうこの艦自体がオーパーツとかいわない?」

≪…≫


ねぇ、なんか答えてよ。その沈黙は肯定とみなすぞ


「ハ、ハックショイ!!」


問い詰めようとしたらくしゃみが出た。冷房がガンガンに効いている部屋で裸にブランケット1枚での姿では当たり前だが体が冷えたため急いで部屋を出て、大浴場に入って温まることにした。

大浴場から出ると時間は午後6時になっており艦橋に再び上がると空は紅く染まり、水平線も紅く染まっていた。


「結構かかったな」


甲板で起きた時太陽は高い位置にあったはず。それだけ夢中で質問や探索をしていたのだろ。


(これだけたっても目が覚める気配がない。しかもこの疲労感、夢ではほぼあり得ないだろうな。これはもう現実として受け止めるしかないのかもしれない)


席に座っていると、かなり動き回ったせいか疲労感からウトウトとしだす。


≪お疲れのようですね。ご主人様のお部屋にご案内いたします。歩けますか?≫

「ん、頑張ゆ」


呂律が回らず、フラフラとした足取りで自分の部屋に向かう。時々こけたり、壁にぶつかったりとしたが何とか部屋に到着することができ、そのまま布団に潜り込んだ。


≪おやすみなさいませ。就寝中の航海はお任せください≫


と端末から聞こえる声に


「ん」


と短い返事をして眠りについた。


陽電子頭脳、きっと綺麗だと思うのです。

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