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海の覇者  作者: リック
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第3話 登録

「あー、そうだ最後に質問させてほしい」


 最後に大切なことを聞き忘れていたことに気づき質問をする。


≪なんでしょう?≫

「君はなんだ?」


 今更ではあるがこのモニター越しで会話しているのは誰なのだろうか。


≪申し遅れました。ワタシはこの戦艦を制御、管理している人格AIです。この艦の人格とでも思ってくだされば結構です。≫


 まぁ、なんとなくわかっていた。貞操価値観やオーパーツの方で驚きすぎたせいでさほど驚きがない。


≪ワタシからも一つ、あなたのことを伺っても?≫


 そう聞いてくる。夢の中とはいえそのまま答えるのも面白くない。ここはそのまま異世界に転移、転生した世界の知識が全く無い状態の主人公がやるように記憶喪失でいこう。


「あ~、申し訳ないんだけど記憶がないんだ。何も覚えていない」


 全くの嘘を、AIに告げる。


≪…そうですか、それは失礼なことをお尋ねしました。≫


 …ごまかせたのだろうか?


「ううん、大丈夫」


 そこから何となく気まずい雰囲気になってしまった。


「そうだ、音声で会話はできないの?」


 雰囲気を変えるため話題を変える。


≪…少々お待ちください≫


 すると艦橋内の何処からか、ピー、ガッガ、ガピーという音が聞こえ、それから5秒ほど経つと


≪あ、アー、てすてス、こンにちハ、あいウえお――≫


 と発声練習をしだし


≪これでいかがでしょうか?≫


 声に感情はないが流暢な喋りで綺麗な女性の声が聞こえる。先程まで文字が表示されていたモニターには簡単かつシンプルな顔が表示される。


「あぁ、それで大丈夫、だいぶ会話しやすくなった。」


 やはり相手の声を聞きながらの方が会話がしやすい。


≪それでは質問は以上でよろしいでしょうか?よろしければDNAの提示にご協力いただけますか?≫


 そういえばそうだった。いろいろと質問してすっかり忘れていた。

 とても怪しいし、怖いがここは夢の中なのだからやりたいことを思いっきりやってやろうと思い答える。


「あぁ、ぜひさせてもらおう」


 するとAIは


≪ありがとうございます≫


 とお辞儀しているような表情の顔が表示され、汽笛が鳴る。

 3つの入れ物にそれぞれ血液、髪、粘膜を入れる。ちなみに血液は刃物が出てきたのでそれで指を切り、粘膜では綿棒を出だされそれで口内の粘膜を採取した。

 切れた指は痛かったです。痛みも感じる夢なんてスゴイナー、ハハハ

 入れ物に入れ終わると3つの入れ物は椅子の中に戻っていきモニターには≪検査中、登録中≫と点滅していた。

 5分くらいたっただろうか、≪登録完了≫の文字に変わりパッパラーとラッパの音が聞こえた。


≪おめでとうございます。登録が完了致しました。これより本艦はご主人様だけの物となりました。そしてご主人様の指揮のもと行動いたします。またご主人様に害を為すもの、為そうとするものは全力をもって排除いたします。何なりとご命令ください。≫

「なんでご主人様?」

≪はい。私はこの艦の人格、つまりこの艦は私と言っても過言ではありません。私の存在価値は奉仕。ですが奉仕する主となる方が居なければ私は存在価値がありません。ですが先ほどの登録でこの艦は正式に貴方の物となりました。つまり私は貴方の物となったことと同じ、私の主となった貴方には何不自由ない生活を過ごしていただくために私は全力をもって御奉仕させていただきます。よって私のご主人様と呼ばせていただいております。…お嫌でしたでしょうか?≫

「いや、別にいいんだけどそこはほら、提督や艦長とかがあるじゃん」

≪…ご命令とあらば変更いたしますが?≫

「いや、そこまでではないから大丈夫です」

≪ではご命令を≫


 そんなことを言われても何を指示すればいいのか…動かしてみようか


「えーとそれじゃあ最大戦速」

≪最大戦速≫


 するとゴウンゴウンと音が響く、右のモニターを見ると今の速力から、10、11、12、13、15、18、22ktと徐々に加速しているのが分かる。


≪40ktです。≫


 最大戦速に到達したらしい。


「えっと右旋回でグルッと一周できる?お任せで」


 艦を旋回させる指示の出し方がわからないので任せられるのか聞いてみる。


≪はい。可能です。面舵一杯、右旋回360度≫


 艦は速度を落として徐々に左へ傾いていきながら右回りで旋回をしていき、360度旋回し終わり元の進路方向に戻った。


「半速にお願い」

≪半速に戻します≫


 ゆっくりと速度が落ちていく、自分の指示でこの艦を動かした実感がわいてきた。そして最後は

「ねぇ、主砲は撃てるの?」

≪はい。可能です。しかし弾薬に限りがあると思われますので補給できるめどが立たない今の現状では控えていただければ助かります。≫


 そのように言われると撃ちづらい


「じゃあ砲塔の旋回は?」

≪それならいくらでも≫

「じゃあ、第一砲塔右に30度、第二砲塔左に15度」

≪はい。第一砲塔右に30度、第二砲塔左に15度に旋回します≫


 そう復唱したのを聞いて自分は椅子の上に立って下を見ようとするが見えなかった。なのでエレベーターに乗り下まで降りて外に出る。すると第一第二砲塔が動いているのを見て、この艦は自分の物になったことをしみじみと思う。

 艦橋に戻り砲塔を元の正面の位置に戻した後、今度は艦内を探索することにした。すると肘掛けからスマ○のような端末が出てきた。


「これは?」

≪これはこの艦とリンクしている端末です。陸地で離れたところにいてもこの端末から指示を出せますし、この端末から艦の位置もしくは艦からこの端末の位置がわかるGPS機能があり、艦内のマップ表示などの機能が搭載されております。≫


 そう小型端末から声が聞こえてきた。


≪それではご案内いたします≫


 こうして艦内探索が始まった。


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