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海の覇者  作者: リック
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第29-2話 模擬試合2

お、ひ、さ、し、ぶ、り


前回の投稿から1年も経ってた。ごめんなさい。


生きてるよ


試合の開始直後、律が立っていた場所に半径2m程の穴が唐突に開き、彼はその穴へと落ちていく。


「消し炭になれ」


ヤズクが一言呟くと律が落ちた穴へと火の雨が降りそそぐ。

それに続いて仲間の4人もが穴へと目掛けて攻撃を始めた。

炎や水、雷に岩といった雨が穴を目掛け降りそそぎ、あっという間に穴の周辺は砂煙が立ち上り穴は見えなくなった。

しかしヤズク達は砂煙で見えなくなろうがお構いなしにそのまま攻撃を続けた。

そしてようやく彼らが攻撃の手を止めたのは砂煙が立ち、穴が見えなくなってから10秒ほど経ってからだった。

攻撃を止めた彼ら、特にリーダーであるヤズクはスッキリした表情となり前髪を払った。


「ほら言ったじゃないか、早く降参した方がいい、と…。まったく時間の無駄だった」


ヤズクはそう言って背を向け、その場を去ろうとする。

そんな彼の表情は悦に浸っていた。

理由は単純。自分に恥を掻かせた者に圧倒的な力によって罰を与えることができたから、そして多くの民衆に自身の力を見せつけることができ、その力が絶対のものであると確信できたから。


(本家直属の駒というからどれほどの実力かと思ったけど…やっぱり大したことは無かった。あの時やられたのは僕が油断していたからに違いない。その証拠に奴は何もできずに沈んだ。やっぱり僕は最強だ)


ヤズクはそう思いながら歩きだした。その彼の背に観客達は遅れて拍手を送る。


しかし観客達の表情は一部を除き呆気にとられた表情をしながら拍手を送る。

一部の観客はヤズクに向かって熱烈な拍手を送りながら、称賛を送っている。


実際に観客達は期待していた。神護家直属の駒である者の力がどれほどのものなのかと。

ニュースでは『最近の近海での海賊による被害数が減少している』、と報道されておりそれには海軍や海上保安庁の他に、神護家から独自の戦力が投入されていることも報道されていた。

しかしその独自の戦力についての詳細はあまり報道されていなかった。唯一報道されたのは投入されているのは部隊ではなく1人であること、その投入されている者が神護家の独自の戦力であるという事のみ。これ以上の情報について民衆が知ることは無かった。

そして今日、謎に包まれた神護家の独自の戦力、所謂直属の駒が突如、分家の者と模擬試合をするということで多くの民衆が観戦するためにチケットを求め、チケットを手に入れた者達は闘技場へ、チケットが手に入らなかった者、元からテレビで見ようとしていた者はテレビを点け観戦する様子が各地で見られた。それが仕事中でも。

ついでにこの模擬試合で最近調子に乗っている分家の出鼻を挫くところが見たいというのもあり、この日のテレビの視聴率は、この試合を中継しているテレビ局がほぼ占める程であった。


そのような期待の中、時間となり最初に会場に審判が現れる。そしてその後に例の者が現れた。

会場に噂の人物が現れた瞬間、観客席、テレビの前で観戦している人々全員が驚愕した。何故なら噂の神護家直属の駒らしい人物が実は子供であったから。

全身黒いマントで覆い、白く片目だけ開た仮面を付けて会場に現れたその人物はただただ身長が小さかった。

審判の近くに行くとそれがよくわかる。身長が小学校低学年くらいなのだから。

全身マントで覆い、顔に仮面を付けているため性別不明でありどのような顔をしているのかも不明、唯一分かるのが髪が長いことのみだ。なのでほとんどの人はこの謎の人物(子供)は女の子ではないのか、と考えた。

それと同時に多くの者が神護家に認められる程の力を有しているこの子はどれほどのものか、と好奇な視線が会場に現れた子供へと向けられる。

そして試合が始まってみると決着はあっという間につき、観客達はその結果に愕然とした。


確かに分家側は模擬試合の対戦相手1人に対して5人と人数的に有利にしており、しかもリーダーであるヤズクは9000Pwの脳波持ち。謎の人物がどのくらいの脳波を有していようとも9000Pw以上の脳波の持ち主は滅多にいないため不利であることは明白であった。しかしあの神護家が認め直属の駒として手元に置いているのだからこれくらい簡単にいなすのだろうと、歳も一番高くて12歳くらいのためそれほど激しい戦闘(試合)にはならないだろうと観客やテレビの前にいる人達は考えた。しかし結果は観客達の考えは大きく外れることとなった。

まず攻撃が10代前後の子供とは思えない程激しかった。特にヤズクのものと思われる(能力)の威力が他の4人と比べて圧倒的に強い。安全装置が付いているにしても脳波が9000Pwもあるため多少は強くなるのだろうがそれにしても圧倒的に威力が強い。また付き添いであろう他の4人も一般人と比べると強い脳波を持ち合わせていることが能力の威力から推定することが出来た。

そして例の人物は先手を打たれてしまいなにもできずに穴へと落ち、そのまま5人のいい的にされてしまった。

審判が未だに試合終了の判定を下さないのは不明だが、結果はすでに見えてた。

観客達はヤズクの強さを知り顔の良さ、地位も合わさって女性のファンがさらに急増していく。

逆に神護家に対しての評判は急降下だった。

最近の分家の好き勝手を止められていない本家に不信感を覚えると同時に、あんな小さな子を()として戦場に立たせていたのだ。『海賊被害の減少のことも何か裏で糸を引いているのでは?』と疑惑が浮かんでくる。



しかし、そんな観客達の思考は次の瞬間、間違いであることを知ることとなる。




―――――――――――――


リツが穴へと落ちていくのを私達は眺める。私の左隣にいる面汚し共(分家の者達)はそれを見て既に勝利を確信しているのかお互いグラスをぶつけ合い、称えあっている様子。本当に目が節穴共ですね。

反対に武信さんと私との間で座っているリツに扮している彼女はただジッと穴が開いた場所を見ている。武信さんは……また目を開いたまま寝ているようですね。退屈なのでしょうか?

まぁ、この試合自体リツが負ける光景が浮かびませんしね。いかに(ヤズク)が9000Pw持ちだとしても所詮温室でぬくぬくと育った子供ですから。

しかしリツはどうしたのでしょう?あれくらいのこと普段であれば余裕で回避ができるでしょうに…何かあったのでしょうか?でも焦った様子もないですしアウラさんもついているから大丈夫でしょう。


そうこうしていると彼らはリツを落とした穴に目掛け、それぞれの能力で攻撃していきます。しかもかなりの威力で。

特に(ヤズク)の放つ能力()の威力は容易に人を殺すことのできる程のようですね、他の4人も大怪我になりうる程の威力です。

普段ではあれば審判が止めるはずですがそのような気配もないですね。おそらく買収されているか計測器を弄っているのでしょう。それでもリツが負ける要素にはなりませんが。

それにしても、あの地形変形の発動の速さ……おそらく、いえ間違いなく試合開始前に発動させ準備をしていたのでしょうね。

基本能力の発動には僅かにズレが生じるものです。そのずれを無くすために訓練をするのですが……多くの人はあまりやらないんですよね。そのズレというのもほんの僅かなので気にする人も少ないですから。しかしそのズレこそが勝敗を、生死を分けるものです。ですが平和な今の世の中では必要ではないのかもしれませんが…。

ですが訓練することでズレを無くす以外にも利点はもちろんありますから、やればやるほどいいのです。ですが訓練内容は地味ですし、効果がいまいちわかりませんし、なによりきついですからね。仕方ないのかもしれません。


そんな事を考えていると穴への攻撃は止み、リツが落ちた穴は攻撃によって舞い上がった砂煙で見えなくなってしまいました。そして(ヤズク)は審判の判定を聞かずにこの場を去ろうと、自身がやって来た方へと向かい、彼の取り巻きの4人もそれに付いて行きます。審判も蒼い顔をしながら終了の宣言のために手を上げようとして―。


「決着はついたようですな。ま、最初から分かっていたことですが。ああそうだ、この件で貴方の自慢の駒が使い物にならなくてもこちらは責任を持ちませんのであしからず」


隣で何かが何かを言っているが私は気にしません。なんせまだ試合は終わっていないのですから。

さぁ、リツ。遊んでいないで早くこんな茶番を終わらせなさい。


―チリンチリン


『前回の事と言い…。貴方は不意打ちしか出来ないのですか?』


静まり返った会場全体に、落ち着い性別不明な合成声音が響き渡りました。

その声を聞き、これから起きるであろう展開を想像すると私は口元がニンマリと歪んでしまいます。

所謂ざまぁ、が始まるのですから。


さぁここから反撃ですよ。

隣で持っていたグラスをその手から落とす程驚愕している奴らに、貴方の力を見せつけてあげなさい。

いま書き貯めているのですが、全く進んでおりません。

しかも御影の活躍させる場面まで行っていない状況、……いろいろと設定をつぎ込んでしまったと反省しています。

とにかく、頑張って書いて行こうとは思っています。

一年放置しているにもかかわらず、ブックマークに登録したままにしていただいている方々、理由はどうであれありがとうございます!!

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