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海の覇者  作者: リック
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第27話 やりたいこと

1ヶ月も開けちゃったホントゴメンナサイ。


書く時間も気力もなかったんです。

書きたい場面はいくつかあるのに。チクセウ。


「はじめまして、私の名前は神代文代。現神代家当主でありこの国の帝をしています。貴方が異世界から来た方ですね。お顔を見せてもらっても?」


やはりこの人が神代文代様で間違いないようだ。

まぁ当たり前か。

文代様の外見は40代くらい、髪は後ろで纏められ基本黒髪だが白髪も交じりメッシュのようになっている。

服装はいつもお母さんが家にいる時のような少し地味目な布地で(らく)そうな、しかし素材はとっても良さそうな和服。

それを完璧に着こなし、庶民的な感じがするが何処か高貴さを感じる雰囲気を醸し出している。


俺を見極めるためだろうか、微笑んではいるがその瞳の奥は心までも見通すような雰囲気があり微笑んでいるのに迫力がある。

俺はお母さんの方を見て“仮面を外してもいいのか”と言葉を介さずに許可を得る。

するとお母さんは頷いたのでフードを取り、仮面を外した。


「お初にお目にかかります。リツと申します。あちらでは違う名前でしたがこちらで生きていくと決意し、新たな名前を頂きました。こちらの世界に来て2年。その間に神護家に相応しい人間になろうと努力してきましたがまだまだ未熟者故、言葉遣いなどで不快な思いをさせてしまうかもしれません。その際はどうかご容赦頂けますようよろしくお願い申し上げます」


俺はそう言い、座礼をする。


「…顔を上げて下さい」


そう文代様に言われたので顔を上げ文代様を見る。

彼女は何か納得したような顔をして頷いた。


「弥恵佳が言っていた通り、見た目とは違い中身は年相応のものではないようですね。それではリツさん、貴方に聞きたい事があります」


「何でしょうか?」


「貴方は巨大な戦艦を個人として持っているようですね。貴方はそれを何に使うおつもりですか?そしてこの2年で培った力をどうするおつもりか」


文香様の表情は笑顔だったのが一変してかなり真剣な表情となり、柔らかな雰囲気だったのが空気が張り詰めたような雰囲気となったように感じる。これが国の頂点に立つ者の なのだろう。


「神護家の一員として神国、神代家の為に使う所存です」


「それは神護家の一員としての考えでしょう。私が聴きたいのは貴方個人。神護やこの国に利益になることではなく貴方個人が何をしたいのか、何をしようとしているのかです」


どうやら文代様は俺が御影を持ち、アホ親父と同じくらいの戦闘能力を得たことに脅威を感じているのだろう。まぁあんな物を個人が自由に出来るとなったら警戒はするよな。

しかし、俺がどうしたいか、か。


「……そうですね」


顎に手をあて、視線を宙に這わせながら考える。

お母さん達も気になるのか左右から視線を感じる


そうしながら考えを巡らし自分が何をしたいのか答えが出た気がしたので、再び文代様の方へ目線を合わし答える。


「この世界を周ってみたいです」


地球では海外、ましてや国内の旅行はしたことが無い。

修学旅行は流石にあるがそれだけだ。

行く暇も余裕もなかった為、国内、海外の観光地などの情報はテレビやネットでよく見聞きするくらいの事しか知らなかった。

いいのか悪いのか、俺がただただ単純だったからだろう、テレビやネットで見聞きしただけでもそこに行った気になってしまっていたこともあり、そこへ行ってみたいと思わなかった事も旅行や観光に行かなかった原因でもあるのだろうが。

だからこそ実際に行ってみなければ分からない事、感じ取れない事が多くあるはず。


この世界では後悔しないようにのびのびと生きていくと決意ているから、やりたいことをやっていきたい。

なので余裕があれば様々な場所、地域を周って見て、感じてみたい。

そして知りたい。どんな歴史、文化、食べ物なのかを。特に食べ物。


あ、ハーレムを築いてみたいとはさすがに言えませんよ。

それにこの2年はそんなことを考える暇もなかったですし、今思い出したくらいですし。

それに忘れているくらいですもん、自分にとってどうでもいい事だったんでしょう。


「……敵対されたら?」


「そりゃもちろん…………潰します」


潰すといっても話し合いで解決せず、痛い目を見させても敵対した場合だが。


そんな俺の答えを聴いた文代様は目を瞑った。

多分今俺が答えた事について考えているんだろう。

一分もしないうちに答えが出たのか、目を開いた文代様は微笑み、口を開いた。


「世界を周ることになったら、私も一緒に連れて行ってくださいね?」


……これは、合格でいいのだろうか?

どう答えればいいのか分からずに固まっていると。


「当然、私も連れて行ってくれますよね?」


「私も!私も!いいでしょ?」


姉さん、お母さんもノッてきた。


「……考えておきます」


考えておくだけだから。




その後、世間話というか地球(あちら)での話やこちらに来てからの話をした。

そしてやはり先程の問いかけは俺を見極めるためだったらしく、今ではめっちゃ親し気に話してきてくれる。俺は無事に合格を貰えたようだ。

姉さんやお母さんも加わり話していると誰かが近づいて来たので、話をこの1年に体験した任務や海賊退治についての話しに変えた。

話している最中にやって来た人は先程案内してくれた人で、お茶とお茶請けを運んでくれたので一旦休憩することに。


運ばれてきたお茶とお茶請けは、緑茶に芋羊羹。

早速いただこう。

まずは芋羊羹を一口。うん、おいしい。

アマイモ本来の香りと甘みが口の中に広がる。

甘みは砂糖も入れられているのだろうけどおそらくわずか。

甘すぎることもなく丁度良いし、舌触りも滑らか。

続いて緑茶を、ズズッ、ハ~。

んー、芋羊羹の甘さや香りで口の中は一杯だったが緑茶を飲んだことで緑茶の苦味や渋み、風味と交わりスッキリ。この緑茶めっちゃおいしい。落ち着く。ちゅき。


……芋羊羹、家に帰ったら作ろうかな。

以前お婆ちゃんの為に作ってみたが、あの時はゼラチンを使って固めたからな。

こう、サツマイモ!って感じがしなかった。

芋羊羹で有名な店を真似てみたんだが、あれゼラチン使っていないよな。多分サツマイモ100%で固めてる。

だから今度はサツマイモ…いやこっちではアマイモか、それ100%で作ろう。しっかりと裏漉(うらご)して……潰したら思ったより少なくなるからな、どのくらいアマイモが必要だろうか?旬は過ぎて今は2月辺り、収穫され寝かせられた芋がさらに甘くなった物が今の時期に売られ始めるよな。


「それでリツさんはこれからどうするのですか?」


芋羊羹の事を考えていたら文代様に尋ねられた。


「これから、ですか?」


「はい。学校には通われないのですか?」


当然この世界にも学校はある。

この国では7歳から5年制の初等教育を習う小学校。12歳から3年制と16歳から4年制の中等教育を習う中学と高校。そして20歳から4年制の高等教育を習う大学であったり専門学校であったりと分けられている。

義務教育はこの国でも中学までである、しかしこの国は教育に対してかなりの力を入れており、義務教育でなくなっても進学するのであればかなりの援助をしてくれるため格安で高校や大学に通うことができるようになっているみたいだ。


さて、今現在の俺の年齢は7歳であり、現在は2月である。この国は7歳から小学校に(かよ)い始めるのだが…お分かりだろうか?自分は今7歳そして今年で8歳――俺の誕生日はこの世界に来た日である5月30日とした――になる。


そう、学校に行っていない


本当ならば去年から学校に行かなければならなかったのだが、知っての通り大体1年の短期間で家族からの猛烈なシゴキを経て、ある程度形になった所ですぐさま様々な部隊に放り込まれ海賊退治や海上警備といった実戦訓練を10ヶ月近く行い、つい先ほど帰って来たばかりなのだ、学校に行く暇なんてなかったし。それ以前に学校についての話すら聞いていないし、していない。

どうするのか、と思い俺はお母さんを見ると目が合った。


「ど、どうするの?」


「問題ありませんよ。貴方が(かよ)う学校は決めてありますし、4月から2年生として編入するよう手続きも出来ています」


「あ、そう」


問題は無いらしい。


「どこの学校?」


「神代小学校です。琴葉様の他に、姉の(ミコト)様、真里菜(まりな)、今年からは愛莉(あいり)が入学する予定です」


俺は今年で8歳になるので2年生、愛莉は7歳になるので入学らしい。

名前の通り神代にある小学校。

一般の他に上流階級の子供も通うらしい。

学ぶ事は、普通の小学校で学ぶことと大差ないが、それ以外に選択で帝王学やマナーといった上流階級に必要なものが学べるらしい。そして上流階級の子は必修なんだとか。

そして上流階級にいる者にとって必要な人脈作り。

そんな学校に俺は通うことになるらしい。

当たり前だが神護として通うので上流階級、言わなくても分かるよね?

正直、いやめっちゃ面倒くさい。


「そんな顔をせずに、気楽に通いなさい。帝王学やマナーといった物は受けなくても大丈夫ですから」


苦笑いをしながらお母さんは言う。

どうやら顔に出ていたらしい。反省。


「リツさん申し訳ありませんが少し外、散歩へ出ていてはくれませんか?2人に大事な話がありますので」


ここから先は俺が聞いてはいけない事について話すのだろう。

お母さんの方を見ると頷いているからな。

なので俺は外に出て散歩することにした。

文代様から敷地内を見て回ってもいいと許可も貰たことだし行きますかね。

俺は座礼し仮面を付けてから部屋を出て離れから離れた。

……ややこしい。駄洒落じゃないぞ。


さてどうしよう。


敷地内を散歩しようとしても屋敷内をウロウロするのは失礼だから外、庭にでも行こうか。

一応玄関までの道のりは覚えているから問題ないが、勝手に外に出ていいものか……。

ま、ええやろ。

文代様から許可も得ているし、途中でお手伝いさんなんかに会えば話せばいい。


そう思いながら玄関に向かう際中にお手伝いさんがいたので事情を話し外へ出た。

向かうは先程までいた離れの場所。実際は池が目的地。


池に着いたが、改めて見てこの池の水は澄んでいて綺麗だ。

所々にある睡蓮の葉や花がいい風情を出している。

……あれ?睡蓮の花って今の時期だっけ?


……ま、いっか。綺麗だし。


周りを見ると小川があり、そこから水が流入してきているらしい。

その小川の流れに逆らうように歩いて行くと、水たまりのような場所に行き着いた。どうやら終点らしい。

その証拠にこの小さな水たまりの底で砂が湧き上がっている。湧き水だ。

少し手を入れるとかなり冷たい。

俺は少しの間湧き水をが湧いているのを見続けた。


俺、水の流れとか好きなんです。音も。わかるだろう?わからい?わかれ。


十分満足した頃に離れの方に戻り、池に何か生き物がいないか探すことにした。


ん~、あれはメダカか?

池の中には数種類の魚の他に小っちゃいエビやカニといった水中生物がいるみたい。

タニシっぽいのもいる……癒されるわ~。


この1年間殺伐としてたからな。こう心が清らかになるというか、なんというか……。


「……ご主人様、何人かがこちらに来ます」


「ああ、わかっている」


しゃがんだままの状態で池を見ていると、複数人の足音が聞こえ、俺の後ろ10mくらいで止まった。


「そこの者、何者だ」


声を掛けられたので立ち上がり、振り向く。


人数は5人。

俺と同じくらいの和服を着た女の子が2人、その後ろに何歳か年上で偉そうな男?男の子?が3人。


「何者だと聞いている!答えろ!」


観察していたら怒鳴られた。

というかそんな大声出さなくても聞こえてるよ。

てかお前の前にいる1人の女の子、ビクッて驚いてんじゃん。ビビらすなよ。


とはいえ何と言おうか。

今の格好で正体をさらしていいのはお母さん達と文代様だけ、と先程の話で決まったわけだから教えることはできないし、しようとは思わない。

それにあの2人、俺の護衛対象だろ。たぶん、きっと、メイビー。


「貴様!尊様、琴葉様の御前だぞ!答えろ!!」


ビンゴ。

ま、そんなのすぐわかるよな。

神代家の敷地内に護衛?を連れている女の子が2人なんて限られている。

いや、もしかしたら違ったのかもしれないが、高確率で尊様と琴葉様と思うはずだし。


う~ん……そろそろ名乗った方がいいか、尊様と琴葉様がいるのに無視は失礼だもの。

コードネームである白面(ハクメン)でいいか。


「貴様……この僕、夜守ヤズク様が直々に聞いているというのに、無視するとは言語道断!」


夜守。神護家に反抗している分家だったな。

てか自分に様付けとか、ないわー。

それに立て続けにお前が喋るから名乗ろうとしても、入り込めないんだが?


「尊様、琴葉様。危ないのでお下がり下さい。この賊はこの僕が成敗し、(おのれ)が如何に不敬な事をしているのかを思い知らせ、お2人の前へと跪かせ謝罪させてみせましょう」


賊じゃねぇです。

ヤズク様(笑)は前に出ると、残りの2人の男も前に出てきた。

いやいやいや、さっきの言葉通りならおまえ一人で挑んでくるじゃないのか?

何で3対1なんだよ。

あ、女の子の1人が溜息を吐いている。苦労しているようですね。


ヤズク様(笑)と愉快な仲間は腰に掛けている刀を抜いた。

おいおい、それ真剣だろ?いいのかよ。

溜息を吐いていた女の子の方を見ると、申し訳ない、と言っている様な目をして少し頭を下げた。

いや、止めてくれませんかね?あ、無理?言うこと聞かなさそうですもんね。

はい、自分で何とかします。


女の子の方を見ていたらその表情が一変、呆れ、疲れていた表情から驚愕の表情へと変わったと思っていたら、目の前に炎や岩の流弾が迫っていたので障壁(バリアー)で防いでおく。

いきなりですね。

しかも数発ではなく、連続的に。

てか俺が避けたら離れや池といった神代の建築物に被害が出ると思うんだが、ちゃんと分かっているんだろうか?


……分かっているようだな。


無数の炎、岩の流弾は障壁によって阻まれており、障壁へぶつかる衝撃で岩は崩れ砕け散り、次々にやって来た炎や岩の流弾でさらに細かくされていく。

そこに炎の熱気によって細かく砕かれたものが乾燥され土煙が起き初めていた。

そんな土埃や炎、岩の流弾の隙間から時折見える彼の顔は嫌らしい表情をしているもの。


そういえばここ、まだ話し合っていると思われる文代様達がいる離れのすぐそば、しかも窓側だ。

こんなに騒いでいるんだから気付いていると思うが……。


後ろを振り返って離れの方を見ると障子の窓が少し開けられ、3人がトーテムポールのように縦並びで覗いていた。

俺と目が合うと、3人はいい笑顔となりサムズアップをすると、その笑顔のままサムズアップによって立てられた親指で首を切るサインをした。

ヤッちゃっていいらしい。


許可を得たと同時に今まで飛んできていた炎の玉や岩の流弾が止み、目の前は土埃によって完全に視界を遮られていた。



☆★☆視点変更



「ハハッ、少しやり過ぎてしまったようだ」


何が少しやり過ぎじゃ。わざとやったくせに。

能力の威力は相手を只々痛め付ける程度、此奴の性の悪さがよくわかる。

しかし威力は痛め付ける程度じゃが長いこと的にされておったからの、最悪怪我だけでは済んでおらんかもしれん。

攻撃された者の姿は土煙によって見えぬ。


勝手にやりおって。

わらわは不敬とも、捕えろとも、ましてや攻撃しろ、などと一言も何も言っておらんというのに。


……いや、言い訳じゃな。本当ならばわらわが止めねばならぬのに面倒臭くて仮面の者に任せてしまった…あの者には悪い事をした。


使用人からお婆様に客人が来ており、そのうちの一人がわらわ達と同じくらいの歳の者で外に散歩に出ていると聞き、興味が出て見に来ただけなのじゃが……。

此奴らは勝手に付いて来おった。


貴様らは屋敷の警護がどんなものかを見学する為に来た神護の分家の者だろうが。

敷地内なのじゃからわらわ達の護衛をする必要はないし、して欲しいとも思わん。

ましてやわらわ達の担当でもないじゃろう。

ま、わらわの護衛を担当していおる真里菜や琴葉の護衛を担当することになる愛莉なら屋敷内でも護衛してもらっても構わんが。


「ふん、口ほどにもない」


いや、相手は何も言ってはおらんかったぞ?


「やはり僕は最強だな。力を抑えてもこれ程の効果を出せてしまうなんて、これなら神国一と言われている神護武信も倒せるだろう」


「流石ヤズク様です!」「ヤズク様なら将来、必ずや武信など片手で葬り、神国一の真の武人となれるでしょう!」


貴様1人だけではなく取り巻きも一緒に攻撃しておっただろう。

取り巻き共はうるさい。

あと、神国一の武人は無理じゃろ。

あの武信殿を倒せる者がこの先現れるものか。


……ええい、こちらをチラチラと見るな。貴様なんぞに興味はない。


土煙が次第に晴れてゆくと人影が浮かび上がった。

なんと先程の仮面の者は未だに立っておるようじゃ。

完全に土煙が晴れ仮面の者の姿を見ると、なんということか傷一つどころか汚れすらおらん!

何かしらの能力で防いだか。


「!……な、なかなかやるじゃないか。何かの能力で防いだようだが今度はそう簡単にはいか――」


気付けば、仮面の者はリーダー格の……ええっと何じゃったか?まぁいい、とにかくリーダー格の者の前にいた。

い、いつの間に。全く見えなんだ。


リーダー格の者の取り巻き2人も、急に目の前にいるものだからかなり驚いているのか動かない。

次の瞬間、ヤズクは一瞬空中に浮いたと思ったら、身体をくの字して地面に突っ伏しおった。

何が起きたのか分からなんだが、仮面の者の拳が握られているので腹に一発ぶち込んだのじゃろう。


取り巻きの2人も何が起きたのか分かっておらんようじゃな。

次第に自分達の主人がやられたことが分かったのか、刀を向け仮面の者を切りかかろうとした。

じゃが取り巻きの2人は刀を振るうどころかそのまま刀を手放し震えだす、終いには尻もちをつき仮面の者から距離を取ろうと下がろうとしだす。

身体が硬直してるのかうまく下がれておらず只々足をバタつかせながら藻掻き、玉砂利をジャラジャラと鳴らしているだけじゃ。

……何か悪臭がするの?……あぁ、此奴ら漏らしおったのか。


「貴方達、何故ここにいるのですか?神代の敷地内での護衛は必要ないはずですが?」


徹底して正体を隠すようじゃな。声は合成音声にしておる。

あと、そのことを知っているということは御三家の関係者か。


「お、俺達は将来この神代家の屋敷を警備することになるから、そ、その見学に」


「み、尊様達とい、一緒だったのは、た、たまたま向かう方向がい、一緒なだけであって」


見苦しい言い訳じゃ。

仮面の者も分かっているようで呆れておる。


仮面の者は地面に突っ伏しているリーダー格の者の襟首を掴み、怯えている取り巻きの前に放り投げ失せうるように言った。

取り巻き2人は気を失っているリーダー格の者を担ぎ、()()(てい)で逃げ出した。


……さて、残ったのは仮面の者とわらわ達だけか。

どうしたものか、おそらくお婆様のお客様の付き添いじゃとは思うんじゃがそれ以外が分からん。

御三家の関係者じゃとは思うんじゃがのぉ。

なんて考えておると仮面の者が一歩前に踏み出した。

すると琴葉は怖がりわらわの手を軽く握ると、後ろに隠れた。

そんな琴葉の行動を見て、仮面の者はその場に立ち止まり腕を組んで何やら考え出す。


そして仮面の者は片方の掌を広げると、掌上に水の玉が生成された。


手を強く握られる。

わらわは琴葉を護るために能力を行使しようと準備する。

かなりの速さを持っているようじゃが、わらわにかかれば関係ない。

一瞬で奴を消し炭にしてくれる。


そう思っておったが、仮面の者はそこから一向に動き出そうとはせず、サッカーボールくらいの大きさに生成した水の玉を見て唸っておる。

能力の不発かと思っていたが、水の玉がグニュグニュと動き出した。


油断させてからの攻撃かと思ったが、どうやら違うらしい。

水の玉は海の生き物へと形を変えよった。


「わぁ、クジラだ」


琴葉の言うとり水の玉はクジラの形を模し、こちらへやって来る。

クジラの見た目、動きは本物そのものでわらわ達の周りを回遊すると、今度は2つに分かれイルカへと変わり、仲良く周りを泳ぎ回る。

先程までわらわの後ろに隠れておった琴葉じゃが、今は前に出て水で出来たイルカに夢中じゃ。

わらわもつい見惚れてしまっている。


2頭のイルカはわらわ達の元から離れ、仮面の者の所まで戻ると形が崩れ元の水玉に戻る。

そのまま上へ上へと上がっていくと2つの水玉は弾けた。

弾けると同時に水は霧状へとなったのでこれで終わりじゃろう。

目線を仮面の者へと戻すと、琴葉は未だに上を向いておる。

仮面の者も上を向いていた顔をこちらに戻すと、わらわに上を見るように上の方を指さした。


「おお」


もう一度上を見ると虹のリングが出来ておった。

先程の霧で光が屈折して出来たのじゃな、綺麗じゃな。

虹も消えたところで仮面の者の方へと意識を向ける。

仮面の者は物語などでよく見る他国のお洒落なお辞儀―確かボウアンドスクレープじゃったか―をしたので見世物はこれで終わりということじゃろう。


琴葉は喜び、拍手をしておるのでわらわも拍手を贈る。確かに見事じゃったしの。


……さて、そろそろ本題に入るか。


「わらわは神代尊。現神代家当主であり現神国の帝でもある神代文香の孫であり、次期神代家当主にして次期帝となる神代由美の娘じゃ。こっちは妹の―」


「妹の神代琴葉と申します。お見知りおきを」


琴葉は相変わらず礼儀正しいの。


「先程のは見事であった。して、其方は何者じゃ?」


わらわが尋ねると、仮面の者は跪いて頭を下げた。


「お初にお目にかかります。(わたくし)白面(ハクメン)と申します」


「そうか。ではハクメン、お主どこの者じゃ」


「神護に所属しております」


「ふむ。歳は?」


「お答えできません」


「男か、女か」


「お答えできません」


「仮面を外し、素顔を見せよ!」


「お断りいたします」


「むー。命令じゃ!答えよ!そして仮面を外せ!!」


「お断りいたします」


「むっきー!!何故じゃ?!わらわは神代の人間じゃぞ!神代の者が尋ねておるのだぞ!?」


「無理なものは、無理でございます」


「もうよい!わらわが実際に其方の仮面を剥がして確かめてやる!!」


「お、お姉さま!?」


「止めるな琴葉!これは確かめなければならぬことなのじゃ!なに、心配するな。加減はできる」


そうじゃ、確かねばならぬ。

最も重要なのは男なのか、女なのか!

そして、あわよくば仮面を外しその素顔を!!


ハクメンの素顔(正体)を暴く為、わらわは能力を行使しようとしたところで、パンパンと手を叩いた音が響き渡った。

音がした方を見るとお婆様がいた。

その横には弥恵佳お婆様と優香叔母様も。


「やめなさい、尊。その者について詮索するのは」


「ですが!」


「当主としての命令です。やめなさい」


お婆様がわらわに命令するほど、このハクメンという者のことは秘密なのか?!


「む~」


「そんなに知りたいですか?」


「それは、もちろん」


「琴葉もですか?」


琴葉も気になるらしくコクリと頷いた。


「ふむ」


お婆様が考え出す。

お?これはもしかすると教えてくれるのかの?

こうなったお婆様は大抵のことは教えてくれる。

何かしらの条件は求められるじゃろうが、教えてくれるのであれば此方の物じゃ。

さぁ、お婆様。早く教えてくりゃれ。


「やっぱり駄目です」


なんでじゃぁぁああああ!!


「弥恵佳、よろしいですか?」


「よろしいも何も、当たり前の事ですよ。尊様、琴葉様。シロの事は極秘ですからこれ以上の事はお話しできないのです。また今日の事は秘密でお願いします。シロもよいですね?」


「はい」


「ん?お主ハクメンというのではないのか?」


「はい、ハクメンですよ。ですがこの仮面が白なのでシロ、とも呼ばれもしております」


「そうか。ではわらわもシロと呼ばせてもらおう。構わぬな?」


「はい」


「ではシロ、帰りますよ」


「はい、御当主。それでは尊様、琴葉様、失礼いたします」


「うむ。いつか其方と再び会える日を楽しみにしておるぞ」


「え、えっと。私もまた会える日を楽しみにしております。シロ様」


琴葉しれっとシロと呼んだの、まぁ、よいが。


しかし、面白そうな奴に出会えたな。

身長的にわらわ達と同じくらいかの?それにしてはかなり礼儀正しいというか大人びているというか……、他人(ひと)の事は言えんか。

性別は………どうじゃろ?女ならそれでも良いが、もし男なら…………むふ。


唾を付けとなぬとなぁ……むふふ。

誤字脱字報告ありがとうございます。


ここで報告。

この先さらに忙しくなり書く時間がない可能性が大でございます。

楽しみにしていた方々には大変申し訳ありませんが、当分お休みすることになると思います。

失踪つもりはありませんが、いつ再開できるかわからない状態です。


でも、絶対に戻って来るカンナ。一杯プロットを書き貯めとくカンナ


では、また会う日まで。

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