第20話 やばいですね☆
遅くなっちゃった。
ゴメンね。
誤字・脱字の報告を受け、修正をしていますが、もしかしたら修正できていない箇所があるかもしれません。その際は、申し訳ありませんがもう一度報告をお願いします。
では、短いかもしれませんがお楽しみください。
あの後おっさん…武信さんをその場に寝かしておいた。
その際、姉さんがふざけて目が開いたまま寝ている武信さんの瞼を撫でるようにして目を閉じさせ、胸の前で手を組ませた。それを見ていた佳枝さんも便乗して武信さんの顔に白い布を掛け、二人で手を合わせだした。
つまり武信さんを死んだ人扱いしたのだ。
いいのだろうか、とお母さんの方を見ると弥恵佳さんも手を合わせ、正彦さんも合わせていた。
なので自分も手を合わせておいた。可哀想な武信さん。
そして現在、武信さんを家に置いて来ているので、武信さんを除いた先程のメンバーで車に乗り佳枝さんが院長兼理事長をしている病院へと向かっている。
しかもその病院は動物病院も兼ねているらしく、ムーの検査もしてもらうことになっている。
ちなみに車は普通のワゴン車で、二列目の座席が回り、向かい合わせに出来る。
運転は正彦さんがやっています。
「あの、なんでまた膝の上なの?」
そして自分はまた、お母さんの膝の上に乗せられていた。
「ここが貴方の席だからです」
「何言ってんの?」
最初に出会った時の、あのキリッとしたお母さんは何処に行ったの?
「そうよ!何言ってるの母様!りっくんの席は私の膝よ!」
「いいえ!りっちゃんの席は私の膝です!」
向かい側にいる姉さん、佳枝さんそれぞれが同じ主張をする。
どれだけ自分を座らせたいんだ。あとりっくんとりっちゃんって。
「いや、他に空いている所があるんだから、そこに座るよ」
「ダメです」
「え」
「今走行中なので動くと危ないです。止まってから動きなさい」
「ア、ハイ」
お母さんに真っ当なことを言われ、赤信号で止まるのを待つことにしたのだが、それ以降、赤信号に引っ掛かることなく目的の病院へと着いた。
――――――――
自分の事は特一級機密なので病院へは裏口から入る。その際、誰にも顔を見られないように念の為という事で、仮面を付けるように、と姉さんが渡してくれたのだが…
「これ、何?」
「何って、お面、ひょっとこの。知らない?」
姉さんが渡してくれたお面はひょっとこだった。
別に顔を隠すためという事で仮面をするのはいいのだが、何故ひょっとこを選んだのか、それがわからない。
………ドジョウ掬い、やりましょうか?
「優香、律は何故ひょっとこのお面なのかと聞いているのです」
そうそう、さすがお母さん。
こちらの気持ちをわかってい…
「ここは、戦隊やライダーと言ったヒーロー系の仮面でしょう」
…なかった。
お母さん、チガウ、ソウジャナイ。
いや、ひょっとこよりかはましか
「もういいです」
隠すならタオルや服とかで隠せばいいと思ったが、自分はひょっとこのお面を付けて病院へ入った
「「お待ちしておりました」」
中へ入ると二人の女性が丁寧なお辞儀をして出迎えてくれた。
「ご苦労様。準備は?」
「ご指示通りに」
「よろしい。姉様、私が担当でいいのよね?」
「ええ、構いません」
「それじゃあ行きましょうか。最初にムーちゃんの検査をして、その後に君の精密検査、能力検査をしましょう。貴方達は補助をお願いできる?断ってもいいのだけど、でも今日の事は絶対に誰にも、もちろん家族にも喋ってはいけないわ。もし喋ったら……どうなるかわかるでしょ?」
「「…」」コクコクコクッ
佳枝さんの問いかけに二人は高速で頷く。
「よろしい。それで?補助はお願いできる?」
「「はい。お任せください」」
「それじゃ、行きましょう」
佳枝さんの案内で検査室へと向かった。
――――――――
二時間後
能力検査以外の全ての検査が終了し、結果も出た。結果はムー共に体に異常なし。
ついでにワクチンをムー共に打ってもらい。次の能力検査へ向かう。
「体に異常が無くてよかったわ。次は能力検査だけど貴方はどんな超能力を持っているのかしらね。どんな超能力があって欲しい?」
移動途中に姉さんが尋ねてくる。
俺の名前、愛称を言わないのは、佳枝さんの補助としている二人に知られないようにする為だろう。
カルテ、所謂、俺の診療情報を見ればわかると思うかもしえないが、それは佳枝さんしか記録しておらず、彼女達には見せないようにしている。
「さっきも言ったけどアクアキネシスがあって欲しいな。優香さんは何か欲しい力があったの?」
一応、彼女達に俺達の関係を知られないように、名前で呼んでおくことにした。
「私はね~、透明になれるのか透視できる超能力が欲しかったわ」
「…へ~」
……あ、理由分かったかもしれない。
でも、一応、もしかしたら違うかもしれないから訊いてみる。
「で、何で?」
「そしたら、覗き放題、犯りたい放題じゃない!?お風呂や更衣室とかを覗いたりしてね?見ていてムラムラしたらそのまま、ッ!?!」スパァーンッ
予想通りでした。
そして正彦さんに叩かれる姉さん。一段といい音だからかなり痛いんだろうなー。
「全く、君は………恥ずかしくないのかい?」「優香、はしたないですよ」「そうよ。こんな小さい子に何言っているの?教育に悪いわよ」
三人から非難を浴びせられる姉さん
しかしお母さんと佳枝さん、姉さんを説教しているけど、二人が微かに頷いたの、俺、見てたよ。
そして佳枝さんの補助として付いて来ている二人もな。
「変態共」ボソ
「「「「「ッ?!!」」」」」ゾクゾク
女性五人はこちらへ一斉に目を向けた。
おっと、つい口から洩れてしまったようだ。
しかし、かなり小さい声だったのによく聞こえたな。正彦さんは聞こえている様子はないけど。
でも、その反応は予想外。
やめて下さいよ?家族の女性全員がショタに貶されて喜ぶような変態になるようなことは。
「そ、それじゃあ、検査室にも着いたことだし、早速やっちゃいましょうか」
検査する装置はMRIみたいなもので筒状の装置の中へ横になって入り、調べるらしい。
その際、頭に目元まで隠れる装置を付けるらしく、お面は外さなくてはならない。
「貴方達、目を瞑ってあちらへ向いていなさい」
佳枝さんの指示に二人はクルッ、と素早くこちらに背を向けた。
いやー、お面って意外と息苦しいんだね。あと、ちょっと蒸れる。
…前髪が鬱陶しいな。
「帰ったら髪を切りたい」
目元が隠れるくらいまで伸びている前髪、肩甲骨位まで伸びている後ろ髪、慣れたつもりでいたがやっぱり鬱陶しい。
「切るかどうかは、検査結果と貴方の力を見てから決めます」
「え、なんで?」
「理由を話すのは結果と貴方次第です。さあ」
とても気になるが、どのみち検査はしなければならないので頭に装置をかぶり、寝台に横になって乗る。
遠隔操作で寝台が動き出し、寝台ごと筒の中へ入っていく。
『この検査は脳波を検査するものでね。脳波の強さによって超能力の強さが分かるの。どんな超能力が備わっているのかは、実際に能力を使ってみないと分らないから、調べるのは帰ってからになるわね。検査は十分ほどかかるわ。だから眠ってしまってもいいから、リラックスしておいてね。それじゃあ始めるわよ』
頭に付けた装置から佳枝さんの声が聞こえ、検査が始まったのかクラシックが流れ始めた。
十分後
『……はい。お疲れ様。今装置から出すわね』
佳枝さんの声が聞こえ、寝台が動く。
装置から出て、頭に付けている装置も外しお面を付ける。
部屋には誰もいないので操作室が見える窓の方を見ると、全員が結果が出ているのであろう画面を驚いた表情で見ていた。
検査室から操作室へ行くと、全員がこちらを見る。
その表情は誇らしげな表情であったり、驚きの表情、面白そうな者を見つけたような表情であったが、一番目に付くのは………
怯えている表情だった。
顔に出ているわけではない。
目が……怯えている。
怯えているのは佳枝さんの補助をしていた二人の女性だった。
初めて向けられた感情にショックを受け呆然とする。
「…?、どうかしましたか?」
「え、あ、いや。何でもない。で、どうだった?」
心配を掛けないように普段通りに話す
「そうですか?…結果なのですが、脳波の強さはPwで表され、数値が高いほど顕現する超能力は強力になります。平均は100Pwくらいでして、この強さですと炎であればマッチくらいの、風であれば扇風機の強くらいの微風、水だと打たせ湯くらいの強さとなっています。そして貴方の場合、10万Pwです。…はっきり言いましょう。貴方の力は国に管理、監視されるレベルです」
「…はぁ」
怯えられていたからヤバイと思っていたが、国に管理、監視されるレベル、か…実感がないな。
「ですが、まずはどのような事が出来るのかを調べる必要があります。場合によっては本当に管理されることになりますが…神護家の猶子となっているので管理ではなく監視くらいになるでしょう。…監視といっても、私が視ることになるでしょうから大丈夫ですよ」
大丈夫なんだ。
「では、帰ってどのような事が出来るのか調べましょうか。お昼も過ぎていますし」
「はい!この子にペペロンチーノを作って欲しいです!この前作ってもらって、めっちゃおいしかった!」
「ほう。頼めますか?」
「え、うん、いいけど。口に合うかわからないよ?」
「それは大丈夫でしょう、優香がおいしいと言っているのですから。楽しみにしていますよ。さぁ帰りましょう。お二人もお疲れさまでした。くれぐれも今回の事は内密に」
「「は、はい!」」
検査が終了した俺達は屋敷へと戻る。
――――――――
帰りは膝の上ではなくお母さんの隣に座り、向かい側には来た時と同じように姉さん、佳枝さんがいるが来る時とは違い、車中は静寂に包まれており、車のエンジン音、すれ違う車等の風切り音しか聞こえない
そんな中お母さんが口を開いた。
「…律。私達は絶対に、貴方のことを怖がったり拒絶したりしません。またどんな事があろうと貴方の味方です」
「…どうしたの?お母さん?」
「律、貴方、先程の二人に怯えられたでしょう?」
「!」
もしかして、あの時の動揺を見抜かれていたのだろうか
「あの数値を見れば、ほとんどの人は恐怖するものですからね。怯えられるのも仕方ありません。それに力を使えばおのずとその強さも気付かれますから、今のうちに慣れておきなさい」
「…はい」
「大丈夫ですよ。私達は貴方の味方であり続けますし、アウラさんもムーさんも貴方の傍にずっといますよ」ナデナデ
≪そうですよ、ご主人様。この者達が裏切ったとしても、私はご主人様の事を絶対に裏切りません≫ 「キュイ!」
「…ちょっとアウラさん?それはどういうことですか?」
お母さんの声が不機嫌そうになる。
≪そのままの意味です。私はまだ貴方達の事を信用していません。ですからご主人様の事を裏切る可能性があると考えています≫
「家族となったのにですか?」
≪家族でもです。実際、血が繋がった子を売ったり、利用する親がいるではないですか≫
「…そうですね。ではアウラさん、貴方は私達を監視してください。そして律の情報管理を貴方に任せます」
≪既にやっています。先程の検査結果の情報はすべてこちらに移し、病院にあったご主人様に関する情報、監視カメラ等の映像、すべてを削除済みとなっています≫
「え゛?!うちの病院のセキュリティを突破して、盗んだってこと!?」
≪はい。まぁ盗んで、削除したのはご主人様のだけなので、安心してください。あと流出も無いようにしているのでご安心を。あ、ですがちょっかいを掛けている者がいるようなのでセキュリティは強化した方がいいですよ。破られる心配はありませんが念の為に≫
「ア、ウン、アリガトウ」
佳枝さんは白くなった。
「神国でも二番目に強固なセキュリティのはずなのだけどね。あれだけ佳枝姉さんが自慢げにしていたセキュリティを、こうもあっさりと突破するなんて…」
「佳枝さんが開発したんです?」
「ウン。でもこうも簡単に突破されると自信無くすわ」
≪いえ、他の物と比べるとかなりの強固さでした。ですのでもっと誇ってもよろしいかと≫
「誇っていたのよ!それを今ぶち壊されたの!!」
「すいません!うちのアウラがすいません!」
≪何故ご主人様が謝るのですか?≫
「お前はちょっと黙っとれぃ!そうだ。姉さんと正彦さん、佳枝さんはこのまま一緒でいいの?この後、用事があったり、真里菜ちゃんや愛莉ちゃんが待っていたりするんじゃないの?」
無理矢理ではあるが、話題変更をする。
「二人は今学校と保育園に行っているの。用事はりっくんのペペロンチーノを食べて、力を見ることね。その後二人を迎えに行ってそのまま岩戸鎮守府へ戻るわ」
「私もりっちゃんのペペロンチーノを食べて、力を見て、りっちゃんに異常が無いか診た後は帰るつもりよ。優香ちゃんがおいしいって言うくらいなんだから、かなりの物よね。娘も料理が出来ればいいんだけど」
「あ、佳枝さん、娘さんがいらっしゃるんですね」
意外だ。旦那さんが一緒ではないみたいだから独身かと思った。
いや、旦那さんは正彦さんのように、そこまで関われる人物ではないからいないだけ、かもしれないけど。
「む、それはどういう意味かしらぁ?りっちゃ~ん?あと私にも敬語はいいわよ」
「あ、はい。えっと、旦那さんと一緒じゃ無かったから…てっきり」
「もう。失礼ね。娘は既に15歳よ。旦那は今、海が――」
「佳枝姉さん、離婚しているのよ」
「――い、ちょっと!?」
「え?離婚?」
「そう。佳枝姉さん、結婚してすぐ妊娠したんだけど、相手はどうも結婚する前から他の女とデキていたみたいでね。妊娠が分かるとお金を盗んでドロンよ。しかも結婚して一か月後に。佳枝姉さんの結婚した相手は神護家の分家の人でね。その人は当然勘当されたんだけど母様が怒り狂ってね。その分家の遺産、権利をすべて佳枝姉さんに譲らせ、その分家の関係者すべて神護家から破門。潰したの」
ワォ、お母さん、分家潰しちゃったんだ。
「でもそれだけで潰したら、その分家の人達は逆恨みしてるんじゃないの?横暴だ~、みたいな感じで」
「そうでもないわよ?元からあの家には良い噂が無かったから、いつかは潰すつもりでいたのよ。で、佳枝姉さんの件を切っ掛けにして、その家を潰したの。まぁ見せしめもあったんだけどね」
「それじゃ、佳枝さんの苗字はその分家の?」
「いいえ、違う苗字よ。最低な結婚相手の苗字を名乗りたいと思う?」
「それもそうか。じゃあそのドロンした人は……」
「ねぇ…もう…いいでしょ?」
佳枝さんを見ると、目が死んでおり、何やら暗いオーラみたいなモノが出ている。
「フフ、そうよ。私なんて男を見る目が無い、そこら辺のAIに突破される様なセキュリティを開発して、浮かれていた世間知らずのお嬢さんで――」ブツブツブツ
闇が、深そうです。
どうやら佳枝さんの黒歴史に触れてしまったらしく、その歴史に先程のセキュリティの件が追加されてしまったようだ。
≪そこら辺のAIとは失礼な。私は最高峰のAIです。発言の撤回を要求します≫
アウラは佳枝さんに発言の撤回を要求しているが、当の本人は聞こえていないらしく未だにブツブツと何か言っている。
お母さんや姉さんを見て、どうにかできないか目で訴えると、お母さんは俺を持ち上げ佳枝さんの膝の上に座らされた。
すると佳枝さんはすぐさま俺のお腹へ腕を回し、縋るように抱きしめた。
そこまではいい問題は……耳元でブツブツと言っている事。
囁きみたいに言っているので耳がこそばゆいのだが、その内容があまりにも暗いためそれどころではなく、心が侵食されていく。
これはまずい、と脱出すべく身体をモゾモゾと動かしてみるが、全く抜け出せる気がしない。
しかも、俺の事を逃がさまいと、回された腕に力が入り腹部が少し圧迫される。
背中に佳枝さんの胸を感じるが、今は耳元で囁かれている恨み辛みが、俺の正気度をゴリゴリと削っていくため、感触を楽しんでみる暇も無い。
お母さん、姉さんに助けを求めるが、彼女達は「「頑張れ」」と言っただけで何もしてくれなかった。
あぁ……この闇……ふっかい………。
――――――――
結局、俺は屋敷まで解放されることは無かった。
そのおかげか、屋敷に着く頃には佳枝さんは元の状態に…いや、キラキラした状態に戻ったのだが、逆に俺は目が死に、体に力が入らずグデー、とした状態で佳枝さんの腕の中にいた。
佳枝さんの闇には…底が無かったよ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ブックマーク登録者、100名突破。
ありがとうございます。
これからも皆様に楽しんで頂けるよう、頑張って書いていきます!
………艦艇同士の戦闘は当分待ってね。
ここで訂正を
14話 愛情表現の最後で空母を含めた陣形を執らせていましたが、空母を無くし戦艦を中核とした輪形陣に変更しました。
そして、話の都合上、今後空母は出て来ません、戦闘機も出て来ません。
楽しみにしていた方、誠に申し訳ありません。




