第19話 神護家の人達
お・ま・た・せ 待った?
二週間ぶりですね。楽しみにしていた方がいればすいません
短いですが、どうぞお楽しみください。
小鳥の囀りが聞こえ、閉じている瞼越しに光を感じた。
心地良い微睡みが段々と無くなり、覚醒していく。
瞼を開けると、そこは木造で造られた知らない天井だった。
横になったまま周りを見ると、右側は一面障子になっており外から光が差し込んでいる。
左側は襖になっており、この和室を見た感じはただ広く、広さが一、二、三……八帖の部屋だ。
自分は布団に寝かされていて、服はそのままの様だ。
起き上がってみると何か布団の上に乗っていたようで、コロコロと転がっていく。
「……キュー?」ポケー
まぁ、わかっていた。真っ白な毛玉が転がっていくのだからそれが何なのかはすぐにわかる。
「おはよ、ムー」
「…キュー」
ムーはヨチヨチと覚束無い足取りでこちらに戻てくると布団の中に入って来た。
ムーはどんどん進んでいき自分の大腿部にぶつかるとその場で止まり動かなくなってしまった。
そんなムーを掌に乗せ撫でてあげると心地良さそうな表情となり、そのまま夢の世界へと旅立った。
≪おはようございます。ご主人様≫
声のした方へ振り返ると、何か畳まれた布の上に御影の端末が置いてあった。
「あぁ、おはようアウラ。ここは?」
≪はい。ここは神護家本家の本宅です。現在の時刻は九時三分二十一秒、起床されたらこちらの、端末の下にある物に着替えるように言われています≫
「そっか。わかった」
どうやら自分が眠ている間に神護家に運ばれたようだな。
アウラも普通にしているし何か問題があったわけではないようなので、着替えを手に取り、着替え始めることに、だが。
「こ、これは!」
≪…?、下着ですよ?≫
そう、下着だ。念願のパンツだ!
今の格好は裸Yシャツなのである場所が大変スースーしている。…もう慣れてしまったが。
だがこれで、これによってパンツの無い生活とはお別れできる。
こんなにも、こんなにも下着は大切な物であると実感することになるとは思わなかった。
早速パンツを穿き着替え始める。
服は紺で無地のシンプルな和服であり、アウラに補足してもらいながら着替えた。
着替え終わると同時に襖の方から声が掛けられる。
「起きていますか?」
声の主は弥恵佳さんだった。
「はい。起きています」
そう返事をすると襖が開き、弥恵佳さんが現れた。
弥恵佳さんも和服を着ており、黒生地に白の縦線が入った模様の和服でとても似合っている。
がその顔は少し不機嫌そうだ。
「あの…どうかしました?」
「敬語に戻っていますよ?」
ああ、つい癖で敬語になっていた。
しかし身分が高い家の子供は親に対しても敬語を使うものだと思ったので尋ねてみると
「確かにそんなことをやっている家もあります。しかし我が神護家は必要ありません。子供にまで敬られたり、させたくはないですから。砕けた話し方で結構です」
「なるほど。でもお母さんは丁寧に話していますが?」
「これは癖ですのでお気になさらず。それにしても…ふむ……」
弥恵佳さんがこちらをジッと見つめるので不安になる。
着方が変だっただろうか?
「え、なに?」
「…いえ。とても似合っていていますので、つい。後は…」
弥恵佳さんは近づき、服装の微調整をしてくれた。
「はい。これで完璧です。とっても似合っていますよ」
弥恵佳さんはそう言うと頭を撫でる。
気恥ずかしいが、気持ちいい。
「では行きましょうか。貴方に紹介したい人がいますので」
弥恵佳さんはそう言うと、自身が来た襖の方へ向かっていくのでムーを起こし肩へ乗せ、端末を持って付いて行く。
部屋を出ると廊下となっており、これまたこの廊下が広く長い。
そんな長い廊下を付いて行くと、弥恵佳さんはある部屋の前で立ち止まった。
「この部屋に貴方に紹介したい人がいます。いいですか」
「は、はい」
緊張して声が上擦ってしまった。
弥恵佳さんクスリと笑って「そんなに緊張しなくてもいいですよ」と優しく言ってくれた後「連れて来ましたよ」と、中にいる人に向かって声を掛け部屋の襖を開けた。
入って正面に見えたのは綺麗な日本庭園。
障子が解放された先は縁側のになっており、さらにその先がかなり広い日本庭園となっているのが見える。
右側は砂壁で中央に床の間が設けられ、左側は襖で仕切られている部屋となっており、広さは大体十二帖。
この部屋は客間なのだろう。
部屋には優香さんに正彦さん、そして知らないおっさんと優香さんと同じくらいの女性が部屋におり、優香さん、正彦さん、おっさんは障子側に、女性は出入り口側に座っている。
優香さんは自分と目が合うと笑って手を振ってくれ、正彦さんも笑顔でこちらを見ているが、優香さんの隣――上座側――に座っている筋肉質な体付きで厳つく、強面のおっさんは入った瞬間にこちらをジッと見てくる。正直コワイ
女性はこちらに振り向き、ジッと見てきている。
この人達は弥恵佳さんの家族だろうか?
弥恵佳さんは自分の手を取り、上座――床の間の前で双方の間――に行くと座ったので自分は弥恵佳さんの隣に座り、ムーを降ろす。
「…揃っていますね?よろしい。律、ここにいる者達は貴方が思っている通り、私の家族であり、これからは貴方の家族にもなる者達です。他にも紹介しなければならない者もいますがそれは後日です。とりあえずここにいる者達は神護家の主要な人達なので先に紹介しておきます。この者達は昨晩、アウラさんの許可を得て貴方達の事を話しています。大丈夫。私が最も信用し信頼している者達です。絶対に貴方達を利用したり、裏切るなんてことはしないと神護家当主として誓います」
弥恵佳さんは真剣な眼差しでこちらを見ており、優香さん、正彦さん、おっさん、女性の方を見ると姉さん、正彦さん夫婦、女性は真剣な顔で頷いたが、おっさんは腕を組み胡坐をかいたまま動かない。
「…昨晩お聞きになられた通り、自分、いや俺は異世界からやってきました。名前は律と言い、弥恵佳さんに付けてもらいました。名家である神護家に猶子として保護して下さり感謝しております。神護家の皆様の顔に泥を塗らないように精進いたしますので、不束者ですが、誠心誠意尽力いたしますので何卒よろしくお願いいたします」
言い終わると俺は座礼をした。
パチパチと拍手が聞こえたので顔を上げる。
「もっと気軽な挨拶でいいのですが、まぁいいでしょう。この子が律です。猶子として神護家に引き入れましたが何か質問なり、意見なりありますか?」
弥恵佳さんが周りに尋ねると、女性が手を上げた。
「彼女は守家佳枝、私の腹違いの妹でして、既に家を出ています。では佳枝、何かありましたか?」
弥恵佳さんに教えてもらった女性、佳枝さんは羨ましそうな顔で弥恵佳さん見て
「守家家の子―― 「ダメです」 ――にしたぃ…」
弥恵佳さん即答である。
「この件については昨晩の内に決まった事ではないですか。何故今更なのですか?」
「だって実際に見たら羨ましくて…それに守家家なら他の分家がうるさく言わないし、危険じゃないでしょ?」
「家がどうのこうのではありません。分家の者達はどのようにしてもうるさく言ってきます。というか貴方も分家側の人間でしょう?それに本家の猶子になるから危険になるのではなくこの子自体が狙われ、危険にさらされるため本家の猶子として保護をすると説明したでしょう。狙われた時、守家家でこの子を、律を守り切れるのですか?」
「ゔっ……ぅぅうう!!ずるいわ!私だって息子に『お母さん』って甘えて欲しい~!」
「はぁ~、既に決まった事ですから諦めなさい。それより自己紹介しなさい」
「…は~い。初めまして。私は守家佳枝。貴方のお義母さんとなるその人の腹違いの妹よ。家は出ているんだけど神護家が経営している病院の理事長をしているわ。一応、貴方の主治医を任されたから、よろしくね」
「はい、よろしくお願いし―― 「ねえ、守家家に来ない?」 ――…ます」
「佳枝」「ええ~いいじゃない~」「よくありません。大体貴方はいつも――」「そんなこと言う姉さんこそ――」
喧嘩?を始めた二人を眺めていると優香さんが手招きしているので、ムーを回収し、こっそりと二人の言い争いから抜け出し優香さんの所へ向かう。
「「おはよう」」
「おはようございます。優香さん、正彦さん」
「もう!姉さん、でしょ?ムーちゃんもおはよ」
「…」
挨拶されたムーは警戒して自分の後ろ、髪の中へと隠れた。
「あぁ、隠れちゃった」
「やっぱり警戒しているね。さて、また会えて嬉しいよ。律という名前を貰ったんだね。いい名前だよ。優香の弟になるのなら僕は義兄さんと呼ばれるのかな?」
正彦さんも何かノってきたので愛想笑いで流し話題を変える。
「ははは…あの~、あの二人は?」
「ああ、母様と佳枝姉さん?仲いいでしょ。40歳近くも離れているのに。もう母娘にしか見えないわよね」
優香さんはケラケラと笑う。
てか40も離れた妹って何?!
顔に出ていたのか優香さんは
「どうも母様のお父さん、つまり私のお爺様なんだけど。お爺様の隠し子みたいでね。精が枯れ果てているはずの162歳で子供を作ったみたいなの。当時は絶倫王なんて言われてたらしいわよ。しかも母様が家督を継いだばかりの時にその隠し子が発覚してね。もうてんやわんやしながら処理をしている間にお爺様は亡くなって、さらに忙しくなって。ようやく落ち着いた時に私が生まれたの。ちなみに今母様は73歳で佳枝姉さんは33歳よ」
母娘やん。
というか、優香さんとも佳枝さんは2歳差やん、姉妹いけるやん。
…弥恵佳さん苦労したんやな
「佳枝さんのお母さんは?」
「ああ、もう亡くなっているわ。事故でね。確か28歳で亡くなっているはずよ」
「若!え、佳枝さんはそのとき何歳だったんです?」
「生まれてまだ五ヶ月だったみたいよ」
だいたい140歳差での結婚、出産か…すげぇ。
「その事故、なんか怪しくないです?」
「まぁね。でもその後ゴタゴタしてたから詳しく調べられなかったみたいでね。よく分かっていないのよ」
「そうですか…」
弥恵佳さんと佳枝さんの方を見ると楽しそうにおしゃべりをしている。
「そういえば、この後は何かあるんです?」
「それより敬語。戻っているわよ」
「ああ、つい」
「ま、これからは気を付けていきなさい。多分健康チェックと能力検査をすると思うわ。ついでにムーちゃんの検査もね」
「能力検査?」
「超能力の事だよ。例えば……」
正彦さんは指先から小さい炎を出して見せた。
「こんなのを調べるんだよ。とはいえ分かるのは超能力の威力くらいなんだけど」
「何を持っているのかは分からないの?」
「ああ、実際に能力を使用してみないと、その人が持っている能力は分からないんだ」
「へぇ~、正彦さんや姉さんは何を持ってるの?」
「んふふー。お姉ちゃんはね~、水と電気と風の超能力よ~」
「僕は火と土、あと治療系だね」
「へー、名称とか無いの?」
「あるわよ。一括りだとフェノメナキネシスって言うんだけど。自然現象に干渉できる超能力で、大体の人が何かしらのフェノメナキネシスを持っているわ。それで水使いはアクアキネシス、電気はエレクトロキネシス、火はパイロキネシス、土はアースキネシスって個別の名称があるの」
「へー、あ、パソコンを壊したのもその超能力で?」
「ピンポーン、その通り」
俺の事情聴取で記録を取っていたパソコンを優香さんが持ったまま壊したのを思い出した。
確かあの時バチッと音がしたので、電気を流してショートさせたのだろう。
「君はどんな力を持っているんだろうね」
「神護家はアクアキネシスが出やすいみたいだから、それがあればいいな。………ねぇ、訊きたい事があるんだけど、いい?」
入った時から気になっていた事を二人に尋ねてみる。
「なに?」「何だい?」
「姉さんの隣にいる人は…誰?多分義父になる人だとは思うんだけど…」
「「あ」」
どうも二人の反応からして、義父(仮)は忘れられていたらしい。哀れ、義父(仮)
「母様、母様」
姉さんはお母さんと佳枝さん、二人の所へと行き何やら話始める。
おそらく義父(仮)の事なのだろう、ほら二人共さっきの姉さんと正彦さんと同じように(あ、ヤッベ、忘れてた)みたいな表情で義父(仮)の方を見ているもの。
「コ、コホン。えー、律。この人は私の夫で武信と言います。ほら武信さん、その様な偉そうな態度をしたままではなく早く挨拶をしてください」
「………」
「「「「?」」」」
「…武信さん?」
お母さんの声掛けにも全く反応を見せない武信さん。
不審に思った姉さんと佳枝さんが武信さんに近づき、異常が無いか調べ始めた。
姉さんは目を見開いたまま気絶した人に意識があるのか確認するやり方で、武信さんの目の前で手を振っており、佳枝さんは脈拍を測っているようだ。
調べ終わったのか二人はその場で正座し、こちらに向き直る。
「母様」「姉さん」
「ど、どうしたのですか?まさか武信さんは何か病気に!?」
二人の顔、声が真剣味を帯びているためお母さんは不安そうになる。正彦さんも不安そうだ。
「父様は…」「武信義兄さんは…」
「「ゴクリ」」
「…」モミモミ
「ンギュ、ンギュ、ンギュ~」
お母さん、正彦さんは固唾を呑んで次の言葉を待っているが、俺はどうもオチが分かった気がしたのでムーのお腹や背中をマッサージをしながら成り行きを見守る。
「寝てる」「寝てます」
でしょうね。
まぁ、俺は気絶かと思っていたが、結局は意識がないのだから変わらないだろう。
こうして、神護家の顔合わせは終了した。
ここまで読んで下さりありがとうございます。誤字、脱字報告もありがとうございます。
「養子」より「猶子」の方がいいのではないのかと報告をいただき、調べた結果、「猶子」の方が合っていると思ったので「養子」を「猶子」に変更しました。
初めての感想を頂き、大変うれしく思います。
この物語は基本イチャイチャのハーレム物を目指して始めたものでして、あまり戦艦同士のドンパチを考えていませんでした。しかし現時点でのプロットでは能力系のバトルハーレム物に侵食されてきている様に思います。
何故こうなっているのか、そう行き当たりばったりで書いているからですね、ごめんなさい。
これからは戦艦同士のドンパチも増やせるようにしていこうと思いますので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。




