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海の覇者  作者: リック
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第13話 真実

今回は優香視点です。

お楽しみください

 

長門 艦長室


「どう思う?」


正彦さんが部屋に入ってすぐに尋ねてくる。いつもなら部屋に入って落ち着いてから話始める彼にしては珍しい。


「あの子の事?それとも船?」


「全部だよ」


そんなの私も知りたい。

あの子、記憶喪失らしい五歳児。普通の五歳児なら泣きながら錯乱していてもおかしくない状態のはずなのに妙に落ち着いていた。もしかしたら泣き錯乱した後なのかもしれないがそれにしては落ち着きすぎている。そして自分の状況やキュピルを保護した時、ホーリー・モノポリーに襲われた時の状況説明もしっかりと出来ており本当に五歳児なのか疑ったほどだ。

礼儀もしっかりしており――時折私への扱いが適当な気がしたが――それでも五歳児が出来るような礼儀作法では無かった。


「…どこかの国の身分の高い子息かしら?」


「それは無いだろう。もしハーフだったりクォーターとかの混血なら他の特徴があるはずだけどあの顔はうち、神国の人間の特徴しかなかった。でも民間であれ程礼儀正しい五歳児はそういない。可能性の高い御三家やその分家の子だとしてもあの子はデーターベースに登録されていないよ」


「愛人とかの隠し子とかは?」


「そんなのありえないのは君もよく知っているだろう?もし秘密裏に愛人を作れば徹底的に調べられ問題が無ければ家に引き入れられ、問題があれば口止め料を渡してさようなら。別れた後子供が出来ているのが発覚すればデーターベースに、その子供のデータは秘密裏に一応登録され、万が一のための保険にしていることを」


「それもそうね」


正彦さんの言う通り御三家や分家そして帝などの身分の高い子供はデーターベースに登録され継承権の管理などを行っている。

正彦さんは外交官であるが私と結婚して私の秘書の様な立ち位置なので勝手にそういた御家関係の話が入ってくる。なのでデーターベースに登録されている高官の子息、子女の事や顔はある程度知っている。一応民間にも同じようなデーターベースがあるので戻ってから調べる必要があるだろう。


「問題はあの艦艇だよ」


正彦さんは溜息をつきながら言う。


「あんな巨大な艦艇どこの国にも存在していない。それに何かがあの艦艇全体を制御していると言っていたがそれを賄う電力は?あれ程巨大な艦艇を制御できる何かとは…まぁAIの類だろうけど、そんな事が出来るAI技術を有する国は多分無い。艦艇の構造、形状的には神国うちの海軍の艦艇に類似している所がいくつか見られたけど、でもあんな物が造られた形跡、記録なんて何処にもない…君も何か聞いていたりしないかい?」


「そんなの正彦さんが分かっているでしょ?私の仕事やってくれているんだし」


「…」


そう、私の仕事のほとんどが正彦さんがやってくれている。さすがに戦術や指揮といった現場指揮などは私がやっているけれど書類関係はほぼ正彦さんがやってくれている。だってその方が終わるのが早いから。私も就任して最初の方は頑張ったけどダメだった。泣きを入れて正彦さんに手伝ってもらうと私の十倍くらいの速さで終わってしまった。しかも見やすい、適切、的確と素晴らしく、私が書いた書類を添削していた副官のゆーちゃんも驚いて「やれば出来るじゃないですか!」と褒めてくれた。

でもすぐに母様にもバレて怒られた。正彦さんも説教をされていたがすぐに解放されていた。私は二時間も説教されたのに。

説教が終わると、正彦さんに書類関係は任せるように母様からお許しをもらい、印鑑も正彦さんに渡すように言われた。あの、それが無いと私が提督でいる意味が無いと思うのだけど…えっ?お飾り?戦術や指揮を執るだけで事務は正彦さんに任せていい?機密は?…正彦さんなら問題ない?それでいいのか元帥閣下。…私の正彦さんが機密を漏らすような奴かですって?そんなわけないじゃない!正彦さんは誠実で優しくて真面目な人だもの機密なんか漏らすわけないじゃないわ!なら問題はない?ええそうね、正彦さんなら大丈夫よ!はーい正彦さんと頑張りまーす!


そんなわけで正彦さんは外交官でありながら岩戸鎮守府の書類関係の仕事をして忙しく、そして夜には私に…グフフフ、フ?あれ?正彦さん忙しすぎない?それに比べて私の仕事量少なすぎ。


「なんかごめんなさい」


「…急に殊勝な態度になったね。本当に反省しているみたいだしいいけど。それで?これから彼はどうするんだい?できれば助けてあげたいし、あの艦は手元に置いておきたいほど魅力的だ」


「…もしかしてあの子からあの艦を奪うつもり?」


彼がこんな欲求的な事を言うのは珍しい。でもいくら愛しい旦那様でもその発言は寛容出来ない。目を細め正彦さんを睨む。

正彦さんは苦笑いしながら両手を上げ降参というかのように首を横に振る。


「勘違いしないで欲しい。僕は別にあの子からあの艦艇を奪うつもりは無いよ。助けてあげたいのは本当だけど。ただあの子をこちらの陣営に引き込みたいって思惑はあるよ。味方は多い方が良いし、信頼できる人間ならなおさらいいそうだろ?」


正彦さんが言いたいことはわかった。しかし


「あんな小さな子を権力の渦中に放り込むのは酷だと思うのだけれど…」


あんな小さな子をあの爺婆共の様な薄汚い大人達の餌食にさせたくはない。正彦さんも分かっているのか頷いている。


「それはもちろん。彼が成長してからこちらの陣営の味方になってくれるようにすればいい、それまでは僕達が彼を保護か養子にして教育する。その教育の内容が僕達の味方になるような内容でね。ま、保護か養子にして一緒に生活していけば情が移って勝手に味方になってくれるとは思うけど」


確かに一緒に生活すればこちらの考えを教えることができ勝手に味方になってくれる可能性は高い。しかしそれはお互いが信頼できてこそだろう。

私達は信頼していてもあの子が信頼してくれなければ意味がない。まぁ信頼してくれるようなことをすればいいだけの事でしょうけど。でも今の関係であの子が信頼できる、してくれる証拠は何も無い。むしろ裏切られる可能性もある。一体何故正彦さんはあの子は信頼できると思ったのか尋ねると。


「そんなの君がいつも感じている直感だよ。それに君も直感では彼のことは信頼できると思っているのではないのかい?」


驚いた。理性的で物事を考えてから動く正彦さんが自分の直感で動こうとしているなんて。

確かに私の直感でもあの子は信頼できるし心強い味方になってくれると感じていけど…。

あまりにも珍しい正彦さんの言動に何故直感に従ってみたのか尋ねてみたら


「君も同じ直感を感じているような気がしたからね。するとこれも直感になるね。まぁ君と同じなら嬉しいし何より確実だ。それになんて言ったって僕は君の夫だ。君の直感や考えがわからなくてどうする」


耳を少し赤く染め照れながら素敵なことを言ってくれる正彦さん。もう私のメスの部分はキュンキュンです。具体的には下腹部が。


扉のロック、ヨシ。盗聴の心配、ナシ。電話等の通信機の電源、OFF。準備、ヨシ。目の前の獲物にロックオン。


正彦さんは私の状態に気が付いたのか顔を青くしてハリセンを構える。そんな怯えた顔はとても可愛い。


「ま、待って優香。今はまだ行軍中だよ。それに先程言ったことを忘れたのかい?今やれば本当に実行するよ?」


先程脅されたことは、うちの鎮守府で男性職員、水兵の着替えやトイレ、居眠り、入浴などの日常生活の盗撮写真集が女性達の間で秘密裏に出回っている事、そのことを上に告発する。ということだった。出所は確定済み、いつでも差し押さえが出来る状態らしい。


だがそれガどうしタ。モうこの衝動ヲおさエることはデキなイ。


「そ、それ以上近づいたらほ、本当に告発するよ!?いいのかい!?」


一生懸命強がっているがその足は小鹿のようにプルプルと震えている。カワイイ。何とも嗜虐心を煽るような表情に私ノ理性ハ決壊寸前。ソレに彼ニハ真実ヲ教エてあゲナけれバナラナイ。


「教えてあげる。その件は元帥閣下も知って黙認しているわ」


「え?」


「ついでにその盗撮の事を知らない男性はアナタだけよ」


「え?え?」


「男性の方達にはちゃんと許可を貰って撮らせてもらい、その分給料を増やしているの。そしてそういう性癖の人に頼んでいるわ。ま、うちの鎮守府の男性職員、水兵のほとんどがそうゆう性癖の持ち主で顔が良く、口が堅い連中なんだけどね。いやーいろんな所から引っ張てきたり起用したりするのは大変だったわ~」


本当に大変だった。その時の書類関係は正彦さんにさせるわけにもいかず全部一人でやった。しかしその時の苦労が今は報われている。その盗撮写真により岩戸鎮守府(うち)の部隊は他の鎮守府の部隊に比べ飛躍的成果を上げ、高い水準で戦意を持続させていることで神国の主力戦力の一つになるほどにまで成長できたのだから。


「なら先程の怯え方は何だったんだい?」


「あれはただの演技よ。どうだった?ま、その反応を見る限り名女優になるのも夢ではないみたいね。あぁ、写真集を利用している水兵や海兵隊、士官などの皆はこのことは知らないわよ、知っているのは、写真集に協力してくれている男性達を除けば極一部の人間だけよ」


「……」


正彦さんは真相を知り頭を抱えている。そしてハッとして顔を上げる。どうやら気付いたらしい。


「僕にはそんな性癖も支払われたお金もないんだけど?それにあれには杜宮君も載っていたはず…」


「それはほら、私の夫だし。それに出所は知っているんでしょ?男性に関してはさっき言った通りね」


「チクショーーー!!杜宮くーーーん!!」


そう出所はもちろん私。正彦さんの部下である杜宮君はよく鎮守府(うち)に来ているのでその時に撮らせてもらっている。

部外者である彼がこのことを知った時は終わったと思ったけれど、まさか彼自身からお願いされるとは思わなかった。それに


「元帥閣下も幹部の皆様も愛読してくれているわ」


「お義母様―――!!」


トップが愛読し、黙認しているのだからいくら騒ごうが揉み消されるだけ。これで正彦さんは終わりだ。


「ハァハァ、サア観念シナサイ」


「くっ、うちの鎮守府が、海軍のトップが変態の巣窟だったとは。僕は必ず、必ず鎮守府を、男達を正常にして神代家にそして海外に!中身も誇れるような立派な鎮守府へ、海軍へとしてみせる!」


「そう、素敵な決意ね、感動的だわ、でも無意味よ」


そう、いくら正彦さんが頑張ったとしても、もう手遅れ。利害が一致している我々は深々と鎮守府から海軍へ、そして神代家へと侵食していき蔓延っているのだから。

彼を追い詰めた私は彼に向かってダイブする。ダイブしながら服を脱ぎ下着姿へとなり、そして


「イタダキマース♡」


「嫌だーーーー!!……………………あっ」


朝日に照らされる長門の艦内に神護正彦の叫びが響き渡った。多くの水兵は声のした艦長室の中の様子に聞き耳を立てようとして向かい。艦橋等で仕事をしなければならない者達は歯を喰いしばり涙を流しながら作業を続け、正彦の部下である杜宮を含めた五人の男性達は響き渡った声を聞いて合掌し彼の冥福を祈った。

ブックマーク、評価ありがとうございます。

かなりゆっくりな投稿ですが楽しんで下されば幸いです。


話の流れは考えているのですが、それを言葉で表現するのが難しく、手こずりずるずるすることようやく十三話。この話が終わるのはいつになるのか。三日とかで更新している方はすごいですね。

今回は会話にも一段開けてみましたが見やすくなっているでしょうか?

あと艦を活躍させようとしたのに全く活躍させおらず、超能力で戦う話になってきそうな気がしています。どうしよう。


さて、後書きのここまで読んで下さりありがとうございます。

一週間に一話という投稿スピードになるとは思いますが見捨てずに読んで下さるとうれしいです。

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