彼女が持つ二面性の意味とは
朝、七時三十分。いつもどおりの時間に目が覚める。
意識がもうろうとしながら階段を下りて、トイレに行って、歯を磨いて、冷たい袖に腕を通す。テレビでは、今日もいつもと同じ男性のアナウンサーが笑顔で国民を送り出すような口調で、常套句を淡々としゃべる。なぜ私はいつも何かに追われているのだろうか。
私の母は、「朝ごはん!」と叫ぶような、いわゆる物語上のおかあさんというタイプではない。いい意味で少し天然で、私は怒られたことはないし、兄が怒られているのも見たことがない。「食べないの?」といわれるが時間がないので食べない。どうせ毎日お茶漬けだし。
七時五十分には家を出る。友達のkちゃんの家まで一人でひたすら歩く。ひたすらといっても7分くらいで着くが、なんとなく遠く感じるのだ。kちゃんとははっきり言って仲がいいとは思ってない。毎日登校するのは一緒だけど、いまいち話も合ってないように感じるし、ひとりで学校に行きたくてノートを忘れたと嘘をついて家に戻るふりをしてから一人で登校したこともある。
なぜkちゃんと登校するようになったかというと、もともと4人だったのが一人は転校、もう一人はkちゃんのお姉ちゃんで上級生だったため先に中学校にあがってしまい、のちに二人になってしまった。
それにしても毎日何を話してもいまいち盛り上がらない。なんでだろう。もっと小さい頃は誰と話しても、遊んでも楽しかった気がするのに。もっと小さい頃といっても私はまだ小学生中学年。なんでこんなに人生に俯瞰しているのだろう。
学校について、仲のいい友達とどうってことない話をする。適当に相槌を打ち、笑って流していると先生が教室に入ってきた。実は、これは私の表の顔。学校のように、素の自分があまり打ち明けられないような、公、社会的、表面的、といった言葉がぴったりだろうか。とにかく、この化けの皮が剝がれることは学校ではまずない。はがれそうになったことはあるけども。
---私の表の顔が剝がれるのは放課後。裏の顔へとシフトチェンジするのは、このひもをきつく締めた瞬間だ。---