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呪命のシュメルツ  作者: 鳥抹茶
8/8

最終回 呪命終焉

今日は最終回だよ。

 桜智夜の計画を阻止してから数ヶ月が経った。

 とっくに夏休みは終わり、むしろ冬休みが始まろうとしていた時。


「…うわぁぁぁあ!!」

「おいおい、愚神また転んだのかよー」

「男なのにドジだよね、愚神くんって。」

「…えへへ…」


 これが僕なりの『シュメルツ』との向き合い方。

 こうやってわざと転んだりして不幸を解消していくのだ。

 その結果、学校一のドジっ子と一時期話題になった。

 今はなんというか、僕は大人しいイメージを持たれていたらしく、でも実際はドジっ子というギャップにより、先輩後輩問わず人気者となった。


「零人。」

「…あ、弦太。」


 校門で弦太に声を掛けられた。

 僕がドジっ子として定着してから僕の周りに人が溜まっているから弦太ともロクに話ができなかったのだ。

 久々に弦太と一緒に帰った気がする。


「最近楽しそうだな、あぁ寒っ。」

「…うん。ただ『シュメルツ』と向き合ってるだけなんだけどね。」

「成り行きでもこうして楽しく学校生活出来たんだから良いじゃねえか。俺なんてそろそろ受験だか大変だぜ?」

「…そっか、弦太成績ヤバいもんね」

「やめろ言うな…そういうお前は成績優秀とまではいかねえが、普通の高校なら必ず受かるくらいの成績だから羨ましいぜ。」

「…まぁ高校に関してはそこまでこだわりが無いから正直どこでも良いんだよね。」

「俺もそんな台詞言ってみてー!このままじゃあのヤンキーばっかの不良校しか行けねーよ!」


 弦太は嘆く。

 まぁ言ってしまえば、元々弦太ってちょっとヤンキーっぽいから不良校に行っても意外と馴染めそう…なんて、弦太にはとても言えないけど。


「…ははっ、じゃあ頑張って勉強しないとね。」

「勉強…やりたくねェ…」

「…何がわかんないの?」

「国語と歴史は大丈夫なんだが…数学とか化学とか地理とか…英語なんて何一つわからねえ」

「…英語は僕も苦手だよ」

「何が苦手だ!赤点取った事無いくせに!」

「…ははは…」


 弦太は勉強が出来ない。

 国語と歴史は大丈夫、とはいうけれどあくまで赤点を取らないというだけであって、決して高得点取れるというわけではない。


「そんじゃーまたなー」

「…うん、またね」


 僕達は分かれる。


「…ただいまー」

「あらおかえりー零人くん」


 帰ってくるといつものように叔母さんがいる。

 そして当たり前のように出迎えてくれる。


「今日寒かったでしょー、早くあったかい部屋いこ!」

「…この家あったかい機械あったっけ。」

「こたつ。」

「…ストーブは?」

「無いよ?」

「…エアコンは?」

「無いよ?」

「…ヒーターは?」

「無いよ?」

「…あったかい部屋ってどこ?」

「こたつの中。」

「…こたつの中って…」


 節電、節約しているのか、この家には異様に機械が少ない。

 あるとすればこの異様にでかいこたつと扇風機くらいだ。

 お陰で夏も冬もキツい。

 前の家でどれだけ良い暮らしだったのかが思い知らされる。


「ねーこーはこったつーでねーむくーなるー…♪」


 叔母さんはこたつの中に入ると絶対に出てこない。

 時々死んでしまったんじゃないかと思うくらい出てこない時があり、焦ってこたつをめくったら


「んー…?もう朝なのー…?」

「…アンタ朝までこたつの中で寝る気かい。」

「んー…そーかもねー…すやぁ…」


 その内火傷して出てきそう、と思うが、これが不思議と火傷していたとしても絶対に出ないのだ。


「…というか、叔母さんがこたつの中いたら僕入れないじゃん。」

「すやぁ…すやすや…」


 いつもこんな感じで僕はこたつの中に入れず、結局僕の部屋で僕はベッドに包まれ、自分の体温で自身を温めるのだ。



…翌日。


「…行ってきます」

「んー…いってらっしゃぁい…」


 叔母さんは抱き枕代わりのぬいぐるみを片手にピンクの可愛いパジャマを着て目を擦りながら僕を見送る。

 叔母さんは朝に弱い。

 いつもこんな感じで寝ぼけながら見送ってくれるのだ。


「…あ、雪だ。」


 今日は朝から雪が降っていた。

 なので道も雪が積もり真っ白になっていた。


「零人ー!」

「…ん?ぶふぉあっ!!」


 声のする方を向いた途端、突然目の前が真っ白になり、顔が冷たくなった。


「ヘヘッ、ウィークショットー!」

「…弦太…何やってるの…」

「雪玉投げてんだよ、こーすれば不幸も解消できて俺も楽しめて一石二鳥!」

「…不幸解消は血を流さないと出来ないでしょ。」

「あ、そうだっけ?」

「…だからいつも転んだら絶対に怪我するところで転んでるんじゃん。」

「わりぃわりぃ、すっかり忘れてたわ。」


 まぁ忘れるのも仕方ない。

 僕達はまともに会話も出来てなかったし、何よりあれから数ヶ月も経っているのだ、そりゃあ忘れていても仕方ない。


「なぁ、そういえばさ。」

「…ん?どうしたの?弦太。」

「いや、お前が入学してきて早々担任が自殺しただろ?」

「…うん。」

「あれ、何で自殺したんだろうなってさ。」

「…あの先生、生徒に嫌がらせを受けてたとか?」

「いや、確かに嫌いな生徒は多かったと思うけど、あの先生はクソ真面目が故にむしろ生徒に対してめっちゃ厳しかったからなー」

「…でも僕を保健室に連れていくときはそうでも無かったよね?」

「まぁあの先生とは仲良かったからなー。」

「…仲良かったなら、何か聞かなかったの?」

「まぁ仲良かったとは言え、普段からめっちゃ話すって訳でも無かったしなー。」

「…ふーん。」

「でも仮に殺されたとは言え、多分だけど殺したい!って程嫌いな奴はいないと思うんだよなー。」

「…うーん、まさか桜智夜が関係してるとか?」

「いやまさかな…」


 しかし振り返ってみると、確かに自殺現場に桜智夜はいた。

 死体を見上げていた。


「…でもあの時確かに居たよ、桜智夜。」

「仮に桜智夜がいたとするよ、あいつの復讐に先生がどう関係するんだ?」

「…うーん、わからない…」

「まぁ自分から吹っかけてきた話だけど改めて考察するとやっぱわかんねぇなぁ、二人で考えればなんかわかると思ったんだが。」

「…わからない人とわからない人が束になって考えても何も生まれないでしょ。」

「確かに。」


 先生がどうして自殺したのか、もしくは本当に自殺なのか、それは誰にもわからない。


「…おはようございます。」

「おはー。」


 僕達は一緒に教室へと入った。

 

「愚神と弦太が一緒だなんて珍しいな」

「あの2人って友達だったんだー。」


 何故僕と弦太の組み合わせが珍しいのか僕からしたら不思議だが、本当に最近まで一緒に登校することも、話す事も、下校する事も無かったので、みんなからしたら珍しいのだろう。


 その日は特に何も起きず、学校から帰ろうと校門から出ると、校門前に突然リムジンが止まり、黒いスーツを着た男女が僕達の前に立った。


「あなたが愚神零人さんですね?」

「…え、あ、はい。」

「我々と同行していただけないでしょうか?」

「なぁ…これって…誘拐って奴じゃね?」

「誘拐ではありません、我々はあなたの『シュメルツ』を研究させていただきたいのです。」

「…どうして『シュメルツ』を?」

「それは企業秘密です。」

「なぁ、これって研究するって言って拷問と同レベルのことされるパターンじゃね?」

「その心配はありません、零人様。すぐ終わりますのでご同行願います。」


 これ完全に誘拐だ。

 しかし、これで何かキツいことをされてもそれは『シュメルツ』の不幸を解消する事が出来る。


「…わかりました。すぐ終わるのでしたら、同行します。」

「ちょ、零人…!」

「…大丈夫、すぐ終わるって言ってるし、仮にキツい事されたとしても不幸解消できるし、この人達も研究できて、win-winだよ。」

「うーむ…わかった、気をつけろよ。」

「…わかったよ。」


 そして僕はリムジンへと乗った。

 車が発進した。


「…。」

「不安ですか?」

「…そりゃまぁ…不安ですよ。」

「大丈夫ですよ、痛い思いはさせません。」

「…言ってしまうと、あまり信用出来ないです。」

「まぁそうでしょうね。でも安心してください、我々はあなたの『シュメルツ』を摘出するだけですから。」

「…え、でも『シュメルツ』って押し付ける対象が死なないと出来ないんじゃ…」

「そんな心配はございません、我々の技術を持ってすれば可能です。」

「…そ、そうですか。」


 あまり信用していないまま、かなりの距離を走り、ようやく辿り着いた。

 その後、施設へと案内され、麻酔を打たれ、僕は眠りについた。

 

「はい、終わりましたよー。」

「…え?」


 気がつくとリムジンの中で横たわっていた。

 あれから1時間しか経っていないぞ。


「無事『シュメルツ』を摘出しました。これで貴方はようやく普通の人間ですよ。」

「…本当ですか?!」

「はい。」


 物凄い突然で、急展開だったが、なんだか僕は『シュメルツ』では無くなったらしい。

 僕はその後、叔母さんの家まで送ってもらい、帰ってきた。


「…ただいま。」

「あら、おかえり零人くん、今日はちょっと遅かったわね。」

「…うん、ちょっとね。」

「えーなんでそうやってあやふやにするのよー、一応家族なんだから教えてくれたっていいじゃないのよー!」

「…あー、疲れた。お風呂はもう沸いてる?」

「誤魔化さないでよ!まぁ沸いてるけど…。」


 そんなこんなで僕は『シュメルツ』では無くなった。

 それにより、もうドジっ子を演じる必要は無くなり、みんなからの人気は無くなってしまったが、そのおかげでまた弦太とも気軽に話せるようになった。



 遠い未来、あの人達が『シュメルツ』を良い事に使ってくれることを祈る。

この話の続きは、次の新しい小説で。

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