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呪命のシュメルツ  作者: 鳥抹茶
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第6話 呪命救出

 零人…僕が退院して数週間が経過した。

 僕は放課後、とある生徒について先生に聞いていた。


「紅稜子?」

「…はい。彼女に会いたいんですが。」

「彼女なら、もうとっくに亡くなったよ。」

「…え?」

「鈴音を階段から落として以来、彼女も気が狂ってしまってな。」

「…それで?」

「そしてその後自殺したよ。」

「…そうですか。」

「というか何でそんな稜子に対して聞いてくるんだ?零人って稜子と関係持ってたか?」

「…はい、昔ちょっと一悶着ありまして。」

「そ、そうか。」


 そう、鈴音ぼくと…ね。

 紅稜子は僕を殺した後、自分も死んだのか。

 なんだ、じゃああの死の快感はもう既に味わってたのか。


 でも今の僕はあの快感を何度も味わえるのだ。

 何故なら今の僕は『シュメルツ』…不老不死なのだから。


「待て、蒼崎鈴音。」

「…何を言ってるんだ、僕は…ッ!?」


 そこにいたのは一ノ瀬弦太だった。


「何だその死んだ人を見るような目はよ。」

「…だ、だって君は僕が殺したはずじゃあ!?」

「そう、確かに俺は4階から落とされ死にかけた。でもな、俺は零人が言ってた例の女の子に助けられたんだよ。」

「…あぁ、あの子が…いや、何故だ?!」



 遡ること数週間前。


「うわぁぁぁぁあ!!!!!」


 マズイ、この高さから落ちたら流石に死ぬ

 とは言っても空中で抵抗しても何も起こらず、ただただ落ちていくだけなのだ。


 俺は何も出来ずに鈍い音を立てて地面へと体を打ちつける。

 体中、頭が痛む。

 目の前には自身の頭から出てきた血が地面に広がっている。


「い…意外と…意識…保ってられんだな…」


 …と強がってみるが、実際体のあちこちは痛いどころの騒ぎではないし、頭は死ぬほど痛いし、意識も保っていられるのが精一杯だ。


「くそっ…このままだと…零人がっ…!」


 蒼崎鈴音の狙いは零人に憑いている『シュメルツ』だ。

 それを手に入れるために零人の体を乗っ取る気だ。

 とは言え俺に何が出来る!?

 体は動かねえし、死ぬのも時間の問題で、こんな絶体絶命の状況で俺が零人に何が出来る?!


「あなた…死にそうね。」


 突然白い着物を着た同い年くらいの女の子が俺に声をかけてきた。


「お…お前…誰だ…?」

「私?私の事なら彼…零人から聞いているはずだけど。」


 そうか…こいつが…例の女の子か…

 遂に俺にも見えるようになったか。


「俺に…何の用だ…?」

「あなたを甦らせてあげる。」

「何言ってんだ…もうお前に…『シュメルツ』は無いだろーが…」

「あら?別に『シュメルツ』を与えるとは言ってないよ?」

「はぁ…?」


 そう言うと女の子は突然俺に触れた。

 その途端、身体中の痛みが無くなり、傷が癒えた。


「お、体が動く!でも何で」

「蒼崎鈴音の存在は私にとって邪魔な存在なの。」

「いや、それで何で俺を復活させたんだよ」

「あなたは彼にとっても、私にとっても必要だから。」

「それってどういう…」

「とにかく急ぐよ、零人が危ない。」


 俺達は急いで病院内へと入り、零人の病室へと急ぐ。


 病室に入ると、そこには既に零人はおらず、鈴音に憑依されていた女子が抜け殻となり倒れていた。


「時既に遅し、だね。」

「案外冷静だな。」

「まぁ予想はしてたからね。」

「それより、鈴音を零人からどーやって引き摺り出すんだよ」

「あなた…霊媒師の家系でしょ?」

「まさか…お前…」


 この女、まさか俺にやらせるつもりか、おい。

 

「俺に霊媒師の才能は無い、だから無理だぞ。」

「良いの?あなたの友達が何度も何度も傷つくことになるのよ?」

「元はと言えば、お前が零人に『シュメルツ』を与えたからこうなったんじゃねえかよ!」


 そうだ、こいつが零人に『シュメルツ』を与えなければ、こうして体を乗っ取られることも、何度も事故に遭う事も無かったのだ。


「でも私が『シュメルツ』を与えなければ、彼は死んでいたわ。私が与えてなければ貴方は彼と出会う事も無かったのよ?」

「そ、それは…」


 零人は俺の唯一の友達だった。

 ようやく仲良くなれた、たった一人の。

 …俺にはもう、叶芽姉も、母親もいない。

 だからこれ以上、大切な人を失いたくないのだ。


「あぁ、やってやるさ霊媒師!」



 そして数週間後、現在。


「あの日から俺は、数週間掛けて霊媒師としての力を付けた。」

「…忘れたのかい?僕は元地縛霊…この世に対する強い思いがあって、君の父親ですら成仏出来なかったんだよ?」

「ああ、そんなもんわかってる。」


 そう、こいつは思いが強すぎて成仏が出来ない。

 だが俺はあくまで成仏する気はない。

 零人から鈴音を分離させる、その後はあの女の子に任せる。


「…フッ、じゃあどうやって僕を成仏させるのさ!?まさか君は父親を超える程の力を持ってるとかかい?!」

「生憎、俺は霊媒師には向いてねえ。そんな漫画みてーな展開は無ぇんだ、悪いな。」


 俺は少しずつ鈴音へと距離を詰めていく。


「だったらどうやって僕を…」

「成仏しねえっつってんだろうが。」

「いつの間にっ!?」


 俺は一瞬で鈴音との距離を詰め、零人の身体に手を添える。


「憑依剥がし、強制離脱!はっ!!」


 俺は零人の身体に衝撃を与える。

 その瞬間、零人の身体から鈴音が剥がれ、分離していくのが見えた。


「おい!今だ!」


 そういうと女の子が姿を現し、飛んできた鈴音の魂を病室に倒れていた抜け殻の少女の身体に入れた。


「くっ、またこの女の身体にっ…!!」

「さて、虚空階段へ行きましょう?」

「お前は…零人に『シュメルツ』を与えた少女?!」

「あら、私も有名人になったものね。」

「弦太が生きてるのは…あなたの仕業ね…!」

「そんな事より早く虚空階段に行きなさい、そこでたっぷり快楽を与えてあげる。」


 そういうと鈴音は渋々虚空階段を展開し、そこで少女の身体から分離した。


「後は頼んだぞ。」

「…うーん、あれ、学校?」

「お、目が覚めたか零人。」

「…弦太?僕は確か病院にいたはずじゃあ…」


 俺は今まで何が起こったのか、全て零人に話した。


「…そっか、かなり迷惑かけたみたいだね。」

「そんなこたぁねえよ。ただ友達を無くしたくなかっただけだ。」

「…友達、かぁ。」

「実は俺、お前とちょっと似ててさ、姉と母親がいなくてさ。」

「…お姉さんとお母さんが?」


 姉は生徒間でのイザコザに巻き込まれて勢い余って殺害され、母親は姉が殺されたショックで俺達を置いて自殺…。


「今の俺達は、父親の霊媒師の仕事だけで食っていってるような家庭なのさ。」

「…そうなんだ…色々大変だったんだね。」

「そ!大変なんだよ!でもこれ以上大切な人を失いたくなかった、だから霊媒師のことだって勉強したし、色々頑張れた。」


 多分もう霊媒師としての力は使わないだろうが、これからも『シュメルツ』の呪いから零人を守っていく、そう誓ったのだ。



 虚空階段にて。


「いやあああぁあああっ!!!」


 胸部を突き刺した際の返り血を浴び、白い着物と日本刀が真っ赤に染まる。


「どうしたの?死んでしまう程の痛みが快感に感じるんじゃなかったのかしら?」

「あぁっ…ち…ちがっ…あぁっ…ああっ!!」


 鈴音は既に手足を切り裂かれ、股から子宮までを真っ二つに切り裂かれていた。

 少女は日本刀に付着した鈴音の血を舐めとる。


「死ぬ程の痛みが快楽として感じるというから原型を留めてない程に痛めつけてあげたというのに、一切喜んでいる気配が感じられないのは何故かしら?まだ足りないのかしらね………?」

「んんんっ!!んんんっ!!」


鈴音は声にならない声で全力で否定するが、少女は無情にも日本刀で鈴音の喉を突き刺す。


「んんんんんんっっっ!!!!」

「どうかしら、喉を突き刺された感想は?」

「っっっっ!!!!!!」

「何を言ってるかわからないわ。喉を治してあげるわね?」

「んんん!!!んんんんん!!!!!」


 そういうと少女は鈴音の喉の傷口に手を入れ、喉の中を弄り、喉仏を引きちぎる。


「〜〜〜〜っ!!!!!!」

「あら、ごめんなさい。石が入ってるのかと思ったの、今戻すわね。」


 そういうと引きちぎった喉仏を無理やり鈴音の口のに押し込んだ。


「〜〜〜〜っ!!!!」

「何故泣いているの?しょうがない、私が拭いてあげる」


 すると少女は鈴音の瞳を舐め、キスをする。

 そして、ちゅーっと瞳を吸い取り、引きちぎってそのまま飲み込んだ。

 もう片方の目も同じく吸い取り飲み込んだ。


「…………。」

「あら、動かなくなっちゃった。絶頂のあまり死んじゃったのかしら。それとも…成仏した?」


 鈴音はもう動かなくなった。

 少女の前に見えるモノはもう地縛霊でもなんでもない、ただの残骸だった。


「さて、これで邪魔者はいなくなった。さて、私の…復讐の続きを再開しようかしらね。」

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