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呪命のシュメルツ  作者: 鳥抹茶
3/8

第3話 呪命把握

えーっとですね、誰が話してるのかわからないと思うので、説明します。

「…」から始まる僕口調なのが零人。

「…」から始まらず俺口調なのが弦太。

「…」から始まらず僕口調なのが鈴音。

「…」から始まらず私口調なのが少女。


…と覚えてもらえれば、誰が喋ってるのか分かると思います!


それでは本編どーぞ!

「…『シュメルツ』って…一体何なんだ?」


 僕は、彼女に言われてからずっと謎だったある言葉の意味を問いかける。


「シュメルツ…それは、私のお父さんが人を想って作り、私に宿した呪い。」

「…の、呪い?!」


 『シュメルツ』が呪いなのだとしたら、少女は僕にこの呪いを押し付けたと言うことなのか?


「…『シュメルツ』は…どんな呪いなんだ…?」

「『シュメルツ』は、本来人々の不幸を解消するための呪い。だけど…この呪いには穴があったの。」

「…穴?」

「そう…この呪いは、人々の不幸を解消する、問題はその解消の仕方。」


 『シュメルツ』…僕は呪いというからてっきり死に近くなる呪いかと思っていたのだが、人の不幸を解消するという人を想った呪いなのだ、が。


「君も感じているでしょう?君が明らかに死に近づいている事…それは何故かって言うとね…」

「零人ー!今救急車呼んだから、とりあえずどっか安静なところに…」

「どうやらここまでみたい。それじゃあまた…君が1人の時に…ね?」


 弦太が戻ってくると、少女は消えていった。

 あと少しで『シュメルツ』の確信に迫れたのに。


「とりあえず、お前んちって何処だ?遠ければ俺んちに行くことになるんだが…」

「…あっちの方。」


 僕は弦太に肩を貸してもらいながら、叔母の家がある方向に指差す。


「あー…こっから俺んちより遠いなー…よし、俺んちに行くぞ!」

「…弦太の家ってどこらへん?」

「すぐそこ、ほら、古民家みたいなあの家!」


 弦太の指差す先には立派な古民家があった。

 確かに霊媒師の家系とはいえ、こんな立派な家に住んでいるのかとちょっとだけ、本当にちょっとだけ嫉妬した。



〜一ノ瀬家、弦太の部屋にて。〜


「そんじゃ、俺はちっとトイレ行ってくるから。ずーっと我慢してて漏れちまいそうなんだっ!!」


 そう言うと、弦太はトイレがあるであろう方向に猛ダッシュしていった。

 …長くなりそうだ、そして救急車が来るまで1人ずっと寝込んだままなのか。

 …1人という事は。


「あら、その様子だと私の事を待ち望んでたみたいね。」

「…別に待ち望んでたって訳じゃ…」

「あの話の続き…する?」

「…うん。」

「改めて…君が明らかに死に近づいている事…それは何故かって言うとね…」

「…うん」

「私がヘイトを溜めたから、なの。」

「…ヘイト?」

「そう、ヘイト。」

 

 ヘイトを溜めた、とはどういう事なのだろうか。

その意味は『シュメルツ』の穴に繋がっていくのだろうか?


「…ヘイトを溜めたって、何?」

「ヘイトは、人々の不幸。」

「…人々の不幸を…溜めた…?」

「そう、ここからが、『シュメルツ』の例の“穴”の話。」

「…う、うん。」


 僕は息を呑んだ。

 遂に『シュメルツ』の呪いがわかるのだ。


「それで、その穴っていうのがね、『シュメルツ』は、人々の不幸を解消させる呪い、だけど、それを解消させるには、誰かが代わりに不幸にならなくちゃ駄目なの。」

「…誰かが代わりに不幸に…?まさか…!」

「そう、その代わりが『シュメルツ』を宿した人…すなわち、私達。」

「…そ、そんな…理不尽だよそんなの…!」

「そう、理不尽。でも人々を平和にする為なの。」


 ただ人の不幸が解消する、で終わりなんて都合が良すぎるが、だからって『シュメルツ』を宿した者が周りの人間、友達や親戚、家族、どこぞの知らない人の不幸を勝手に貰い受け、その不幸を自身が受けるなんて、いくらなんでも理不尽過ぎる。


「…君の父さんは…君に死ねって言っているようなものじゃないか!」

「でもね、理不尽だけど、デメリットだけじゃないの。」

「…え?」


 こんな理不尽に見合うメリットとは一体何なのだろうか?

 

「人類の永遠の夢、不老不死になれるの。」

「…不老不死に…?!」

「というか、本来は不老不死が本命なのだけどね。」

「…て事は、君の父さんは人々を不幸から救う為じゃなくて、君を、我が子を生かそうと…?」

「そう。不幸から救うのは、あくまでおまけ。本来は、病気で先が長くない私を生かすための呪い。」


 …少女曰く『シュメルツ』は、不幸から人々を救う代わりに自身がその不幸を背負う呪いではなく、病気により先が長くない我が子を救うべく父親が作り出した呪い。

 だが、不老不死にするつもりはなく、ただ病院を治すだけの呪いのつもりが、偶然不老不死にする呪いが生まれたのだという。


「…人の評価って、言葉一つ変わるだけでこんなに変わるものなんだね。」

「そうね。最初は我が子に死ねという最低の父親、でも事情を知ったら子供想いの良すぎる父親、という評価になるの。不思議よね。」



 『シュメルツ』の事を一から改めて説明すると。


不老不死になれるが、そのデメリットとして我が子を周りの人間誰と問わず理不尽に不幸を背負ってしまう呪い。


 だが、僕はふと気になったのだ。

 この理不尽なデメリットがあるとは言え、人類の永遠の夢である不老不死になれる『シュメルツ』を何故少女は僕に受け渡したのか?


 …何故、僕に『シュメルツ』を受け渡した時、“ありがとう”と喜んだのだろうか?


「さて、お友達がそろそろ来るね。それじゃ私はここまでね。最後に一つ。」

「…?」


 そういうと少女は僕の耳元に口を近づけて囁いた。


「…絶対に血を流さないで」


 そう言うと少女は消えていった。


「…待って!あと一つ聞きたい事が!」

「俺に何聞きたいんだ?」


 そこには長トイレから生還し仁王立ちしている弦太の姿があった。

 弦太にはあの少女は見えていないようなので、弦太から見たら僕は一人でずっと喋っている痛い奴なのだ。


「…弦太…君には何も聞きたい事は無いよ…」

「もしかして例の女の子かぁ?」

「…うん。あ、でも収穫はあったよ!」


 僕は弦太の言っていた“とてつもなくヤバい何か”…『シュメルツ』について全て話した。


「なるほどねぇ、『シュメルツ』か…。にしても不老不死か…そんなもんどうやって作ったんだか」

「…流石にそこまで聞いてないけど、偶然出来たって言うし…」

「いや不老不死なんて凄いものが偶然できる訳ないだろ。それに、その女の子は何で零人に不老不死の呪いをあげちゃったんだよ」

「…そう、そこなんだよ。僕も聞こうと思ったら弦太が来るからって言って居なくなっちゃったんだ。」

「何だよそれ!何か俺が悪いみたいじゃねえか!こっちはなぁ、大変だったんだぞ!腹に力入れても…」

「…だーっ!わかったわかった、わかったから!」


 僕は弦太のトイレ踏ん張り話など聞きたくもないので、全力で話を止める。


「まぁこれはあくまで俺の予想なんだが…その女の子の『シュメルツ』の話には裏があると思うんだ。」

「…裏、かぁ。」

「あくまで俺の予想だからな?まぁ本音を言っちまえば、俺がその女の子を信用できる要素が無いって事なんだが…零人は何でその女の子をそこまで信用するんだ?」

「…それは…現に、こうやって色々教えてくれたり、事故に巻き込まれて死にかけた時、助けてくれたし!」


 そう、僕はあの少女に何度か助けてもらっているのだ。弦太は何もしてもらってないし、見えないから信用できる要素がないかもしれない。

 でも僕は…


「『シュメルツ』に関して、都合の良いことしか教えられてなかったとしたら?」

「…え?」

「その女の子は、零人に『シュメルツ』の1番厄介な事を教えてなくて、それが理由であげた…いや、押し付けたのかもしれないじゃん?」

「…1番…厄介…。」

「それに、最後の『血を流すな』、だっけ?それって、要するに怪我をするなって事だろ?」

「…うん。」


 正直僕も『血を流さないで』には一瞬気にかかったが、あの時はそれ以前に、何故『シュメルツ』を僕に受け渡したのかを聞くことで頭がいっぱいだったので後回しにしていた。


「そんなん無理じゃね?だって周りの不幸を背負うって事は、自動的に怪我しちまうじゃん。」

「…だったら僕が怪我で血を流さないように、あの時学校で窓ガラスが割れた時みたいに弦太が僕を傷つかないように守ってよ!」

「なーんか納得いかねぇけど、まぁ友達を守れってんなら任せろよ。」


 そんなこんなで、ようやく救急車が来た。

 僕はその後救急車で運ばれ、病院へ直行した。


「そのヘイト…不幸を身体に溜め過ぎると…どうなっちまうんだろうな………」


 弦太はふと、その一言を言ったが、その声は、誰の耳にも響いてなかった。



 病室にて。


「…僕、一人だけど…あの少女は来ず、かぁ…」


 僕はその後眠りにつく。

 そしてあれ以来、僕が一人になってもあの少女と出会う事は無くなった。






「へぇ…不老不死…ねぇ?良い事聞いたなァ…フフ…零人に取り憑いてて正解だったなァ…?」


 実は、零人に抱きついた時、鈴音は零人に憑依していたのだ。

 鈴音の本体はずっと虚空階段にいるのだが、零人がどこにいて、何をして、何を聞いて、何を食べているのか、など、全てが筒抜けになっていたのだ。


「『シュメルツ』…不老不死の呪い…それってさァ…死んだ人にも適用…つまり蘇られるのかなァ…?!」


 鈴音は自身の股を弄る。

 そう、鈴音は未練…思いが強すぎてこうして地縛霊としてこの世に留まっているのだ。

 しかしそれは“生きていたかった”という事ではない。

 やりたい事があるからなのだ。


「不老不死…不老不死ィ…!そうかそうか…僕はねェ…まだ未練があるんだァ…だからさァ…!」


 鈴音の息が興奮で荒くなる。

 その興奮は股を弄っているのと、蘇って未練を果たせるかもしれないと言う高揚感によるものだった。


「ああああああ!!!!!零人ォオオ!!!どうすればァアアア!!!!!!」


 絶頂に達した鈴音はその場に倒れ込む。

 そして興奮が徐々に収まりつつある時、ひとりでに呟いた。


「零人ぉ…はぁ…僕はどうすればぁ…『シュメルツ』をぉ…君から奪えるのかなぁ…?」


 …鈴音は気付いてしまった。

 零人から『シュメルツ』を奪う方法…いいや、奪う必要なんて無い。


「君をぉ…僕の物にしちゃえばいいんだぁ…」


 そう、鈴音は幽霊なのだ。

 ならば、生きている人間の身体を乗っ取ればいい。

 取り憑く、と乗っ取る、は違う。

 取り憑くのは、あくまでその人間に憑いていく事だが、乗っ取りはその人間の身体を奪い取り、自身の思うがままになるのだ。

 …だから、零人から『シュメルツ』を奪う必要なんて無いのだ。


 …自身が零人になれば良いのだ。


 そう考えると、また鈴音は興奮が止まらなくなり、体は疲れているにも関わらず股を弄りはじめる。


「えへへ……僕ぅ…明日からぁ…零人になれるんだぁ…あぁ…っ…零人っ…んっ…零人っ…あはっ」

…え?鈴音がえちえち?

良いじゃん。えちえち。

…多分ね、見てる人全員俺に対して引いてると思う。

でもね、鈴音は裏ではかなり狂ってる感じにしたかったの。

だからこうするしかなかっ…え?他の方法はなかったのかって?


…うるせぇえええええええ!!!!!

えちえちは世界を救うんだァァァァァァァァァァァ!!!

(ちなみに俺は鈴音を全力で推す。…自分が生み出したキャラだけど。)

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