表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/22

第9話 メーロ侯爵


 そんなある日――。


 ルヴィニ夫人の父親であるメーロ侯爵が、アイゼン様の城に訪ねてこられた。


 今は亡き最愛の妻との間に出来たルヴィニ夫人のことを、彼は大層可愛がっているそうだ。しかも、なかなか子どもを授かれなかった中に出来たのだというので、目に入れても痛くないほどの可愛がり具合だそうだ。


「ルビー、大変だよ。侯爵様が『盗みを働くあげく、娘に嫌がらせしている女を出せ』と怒っているらしいんだ」


 女主人に言われたわたしは、侯爵のいる客間へと向かった。


 客間の扉を開くと、ルヴィニ夫人とともに一人の老人が立っている。


(あのご老人が、メーロ侯爵……)


 メーロ侯爵は、茶色の髪に、少しだけ赤い茶色の瞳の持ち主だった。どことなくぼんやりした色合いをしたルヴィニ夫人に比べて、くっきりとした色彩の老人である。


(どうしてだろう、どこかで見たことがある気がする……)


 漠然とそんなことを考えてしまった。

 貴族の男性と、一介の村人である自分が知り合いのはずはないのに――。


 わたしに気づいたルヴィニ夫人が、メーロ侯爵に声をかけながら、わたしの方を指さしてきた。


「お父様! この女ですわ!」



 今から糾弾されるのだと思うと、身がすくむ。顔をあげることができず、俯いたまま部屋の中に入った。

 娘であるルヴィニ夫人と一緒にいる侯爵へ声をかけ、わたしは深々と謝罪する。



「お初にお目にかかります、メーロ侯爵、ルヴィニ夫人に誤解を招くような行動をとってしまい、大変申し訳ございませんでした」



「貴様か――! わしの大事な娘をないがしろにする悪女と言うのは!」



 話し合う間もなく、突然――。



 わなわなと震えるメーロ侯爵が、手に持ったステッキを振り上げてきた――!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ