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第17話 大事なのは貴方の気持ち




 馬に乗って、アイゼン様と一緒に城に戻ってきた。


 元々の彼の自室に運び込まれたわたしは、整然としたベッドの上に丁寧に横たえられた。

アイゼン様は、ベッドの脇に跪く。

 わたしの金色の髪を、彼の綺麗な手が優しく撫でてきた。

 そうして、切なげに眉根を寄せながら、鳶色の髪をした彼は謝罪してくる。


「ルビー、本当に申し訳なかった。最初から、ルヴィニとの結婚をきっぱりと断れば良かったのに……私に意気地がなくて、断ることが出来なかった……」


「そんな……アイゼン様のお立場もありましたもの……」


 アイゼンの同母兄イグニスは、異母兄グラースに殺害されている。本来なら、アイゼンも幽閉されてしかるべきだったが、異母兄はアイゼンに地方統治を任せるなどして、待遇を悪くするようなことはなかった。

 そんな異母兄グラースへ恩義を感じているため、兄からの頼みをアイゼンは断ることが出来なかったのだから。


 けれども、アイゼンは首を横に振った。


「地方巡回の際に、兄上に会ったんだ。私がよほど浮かない顔をしていたからだろうね。二人きりになった時に言われたよ、『そんなくだらないことで悩んでたのか。好きでもない女が相手なら、断れば良かったのに。それぐらいで、私の治世も揺るがなければ、お前のことを嫌ったりしない。思った通りに生きればいい』って」


「アイゼン様……」


「一人で勝手にからまわっていただけなんだ……帰り際に兄上が、ルヴィニ夫人の都での振舞いや、メーロ侯爵家での金銭で不審な箇所があることなんかを教えてくれたよ。グラース兄上は聡いおかただから、全て見越して動かれていたのかもしれない」


(皇帝陛下グラース様は、聡いというよりも、むしろ末恐ろしい方というか……)


 そうして彼は、真剣な眼差しで告げてくる。


「こんな不甲斐ない私だが――君が本物のルヴィニ・メーロである以上、戸籍上では私が君の夫になる――」


 不甲斐ないという彼の言葉に、わたしは首を横に振った。


「いえ、アイゼン様ともっとしっかり話していたら、事態が大きくなる前に二人で頑張ることも出来たかもしれません――なのに、わたしも貴方様が別の女性との結婚が決まってしまったことで、話し合うのを避けてしまった――」


 懺悔するように、わたしも告げる。

 そんなわたしに、彼は恐る恐るたずねてきた。


「その、君が嫌なら離縁しても良いんだよ――? 私は、ルビーが幸せならそれで――」


 判断を自分に委ねてくる彼に、わたしは問いかける。


「その……アイゼン様のお気持ちはどうなのですか?」



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