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第1話 燃え盛る村での出会い




 燃え盛る辺境の村は戦場と化し、阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈していた。


 煤が舞い散り、灰色の煙がもうもうと立ち込める中を必死に駆ける。

 焼け焦げた匂いが熱を伴って、肌や鼻腔を刃のように突き刺していく。

 いつもは艶やかに輝く金色の髪も、今は灰ですすけてしまっているだろう。


(逃げるのよ、ルビー……!)


 涙が零れて止まらず、一筋の線を描いて後方へと流れていった。

 父や母は私を逃がそうとして、今しがた蛮族に殺さる場面を見たばかりだ。

 いつもは奴隷のようにこきつかってきていた彼らだったのに、成人を迎えた誕生日だったからか珍しく優しくしてくれて、嬉しさでいっぱいだったのに……。

 本当はその場にとどまって、唯一の肉親である二人を弔いたかった。

 だけどそんなことが許される状況ではない。


(お父さま、お母さま――絶対に生き延びて弔いに参りますから――)


 紅い宝石のついた銀のブローチをぎゅっと握る。

 先ほど、誕生日を祝われて両親から渡された品物だった。

 小さい頃にも、賊に襲われたことがあるのだと、何度か母から聞かされたことがある。


 肺がつぶれそうなほど、胸が重くて苦しかったけれど立ち止まることは出来ない。

 

「きゃっ――!」


 蛮族に腕を掴まれる。視界が反転したかと思えば、背中に鈍い痛みが走った。

 灰色の雲に覆われた空が見える。

 気づけば地面に倒れていたわたしの身体の上に、蛮族が跨ってきていた。

 下卑た笑みを浮かべた男がわたしの胸元に手を伸ばしてきたかと思うと、上着に手をかけてきた。

 男に乗られ、あまつさえ服に手を伸ばされる事態に、あまりの恐怖で声をあげることも出来ない。


「こんなところに、こんな可愛いお嬢さんがいるなんて運が良い――可愛がってやるからよぅ」


 男は下卑た笑みを浮かべ、口からは涎を流しながら、私の胸に顔を近づけてくる。


(いや……気持ち悪い――誰か助けて――!)


 あまりの恐ろしさと絶望に、私が瞼をぎゅっと閉じると――。


 突然、男の悲鳴が聞こえ、身体がふと軽くなった。


(なに……?)


 恐る恐る目を開くと、そこには――。



「大丈夫か――?」



 ――鳶色の髪に、水色の瞳をした騎士がクロスボウを手に立っていたのだった。



 弓の使い手として有名な美しい騎士に助けられた私は、ここから数奇な運命をたどることになる。





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