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王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ  作者: 猫子
第二章 迷宮に潜む悪意

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第三十三話 あの御方

「こんな化け物が、どうして学院迷宮なんかに……! こんなの〈金龍騎士〉どうこうなんて次元じゃない! そうかい、僕のペットの修羅蜈蚣を殺したのも、コイツだったのか!」


 ハームの生首が声を荒げ、俺を睨み付ける。


「言え、マリエット達はどこにいる」


 俺はハームの帽子を頭の高さまで持ち上げて問うた。


「ヒ、ヒヒヒ……喋ると思うのかい? この僕が」


「口を割らないのなら、そのときは自分の足で捜す。お前がぺらぺらと得意げに話してくれたお陰で、人間が絡んでいることはわかったからな。だが、お前達悪魔に、他人のために少しでも身体を張ろうという気概はないだろう。話せば、案内している間は生き延びることができるぞ」


 ハームが口をへの字に曲げる。

 少しの間思案する素振りを見せた後、口許をフッと和らげて笑みを作った。


「……ヒ、ヒヒ、いいだろう。君は悪魔に心がないというが、それは大きな間違いさ。君達とは物の感じ方が少しばかり異なる。それを心がないと断じるのは、君達ニンゲンの驕りに過ぎない。確かに僕達悪魔には、利害無しに主のために身を尽くすなどという心掛けは存在しない。だがね、知人を助けたいという君達の熱意には動かされた。ニンゲンの激情を観察するのは、僕達にとって有意義な時間さ。君ならば確かに、あの御方にも敵うかもしれないね。それを見届けて消えるというのも、悪くはない」


 ハームは先程までとは言動を一転させ、長々とそう口にした。


「前置きはいい。それで、マリエット達はどこにいる。俺はさっきから、そう訊いている」


「し、信じるんですか、アインさん。本当に、悪魔の言うことなんて真に受けて大丈夫でしょうか? 手がかりがないのは確かですが……」


「アイン、このクソヤローは煮ても焼いても食えねえぜ。俺は悪魔に遭ったのなんかこれが初めてだが、自分の勘には自信がある。悪魔は知らねぇが、こいつは信用に値しねぇ」


 ルルリアとギランが、そう言って俺を止めた。


「ヒヒ、信じないのならそれでいい。だが、この広大な地下迷宮で、僕の手助けなしにあの二人を見つけられるかな? 無傷で助けたいのなら、急いだ方がいいとは思うけれどね。あの御方は、ニンゲンというより悪魔に近い。ヒヒ、手足が無くなっていてもいいのなら、ゆっくりとこの迷宮を探せばいいさ」


 ハームの言葉に、ルルリア達が不安げに顔を見合わせる。


「大丈夫だ。悪魔の性格の悪さは信用できる。嘘で誘導して時間を稼いだって、この悪魔にとってはその後に殺されるだけだ。悪魔にとっては、それなら主を裏切ったって、主と俺達をぶつけて、そのどさくさに紛れて逃げる機を窺った方がいい。悪魔というのはそういう連中だ」


 頭を掴んでいてわかったが、ハームにはまだマナが残っている。

 抗戦や逃走を選ばなかったのは、今強行しても勝算がないと考えているためだろう。

 ハームはこの期に及んで、力が尽きた振りをして俺達の隙を窺い、逃げる算段を考えているのだ。


 追い詰められた悪魔が命懸けで人間に嫌がらせをすることは充分に有り得るが、ハームが逃げ支度を整えている以上、その線は現状では薄い。

 道案内させるのは悪くない選択だ。

 事前に情報を取っておいたお陰で、ハームの吐ける嘘の自由度も大幅に下がっている。


 万が一の逃走を許さないためにはもう少し斬って弱らせるべきかもしれないが、追い込み過ぎればハームが自爆的に俺達に嫌がらせをする可能性が増す。

 マリエット達の救助を優先するのであれば、逃げられるリスクを取っても、今は見逃しておいてやるべきだろう。


 ハームが口許を大きく曲げた。

 恐らく、少しは騙せている自信があったのだろう。


「ヒ、ヒヒ……まぁ、僕の思い通りになるのなら、何でもいいのだけどね」


 ハームは歯切れ悪く、そう言った。


「あのお嬢さん方なら、地下五階層の奥に囚われている。君の力なら、お嬢さん方を助け出すことも、さして難しいことではないかもしれないねえ」


「地下五階層……」


 以前、俺達が魔石集めに入った際には、結局地下四階層への入口付近で引き返している。

 地下四階層は学生の過去最高到達階層だと聞いている。

 地下五階層は、騎士団が調査で浅い部分に入った例しかこれまでなかったらしい。

 それも、随分と昔の話だったはずだ。


「そんなところを拠点にしている人間がいるのか? 信じ難い話だな」


「ヒヒヒ、本当の話さ。あの御方は、追われる立場にあると言っていた。学院迷宮だからこそ、入るのは難しいが、それだけ追っ手の心配をせずに済む、とね。それに、レーダンテ地下迷宮の深部には、古くに王家が秘密裏に作らせた研究所や、表に出せない書類を纏めた書庫が存在する。研究熱心なあの御方にとって、学院迷宮深部は、最高の隠れ家だったのさ」


 俺はヘレーナへと目を向けた。

 この手の話は一番彼女が詳しい。

 ギランは貴族だが王国や貴族界隈の話には関心が薄いし、ルルリアは平民の出である。

 ネティア枢機卿は〈幻龍騎士〉をあくまで戦力として用いていたため、俺も犯罪組織絡み以外の話は別段詳しいわけではない。


「た、確かに、その手の噂は聞いたことがありますわ。古い王家が、レーダンテ地下迷宮をそういった用途で使っていたことがある、と。ですけれど……その、もし言っていることが本当だったとして、この悪魔の飼い主って、とんでもなく危険な人物なんじゃなくって?」


 地下四階層以降では、大鬼級(レベル4)相当の魔物が出没するという。

 地下五階層ともなれば、恐らく巨鬼級(レベル5)、修羅蜈蚣のような化け物だって複数生息しているはずだ。

 以前出てきた修羅蜈蚣も、恐らくハームが地下五階層から引き連れてきて、低階層へと嗾けたものだったのだろう。

 そこで平然と暮らしているとなれば、かなり危険な人物だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 折角裏の騎士業を休めて学生気分を満喫していたのに、また本業に戻らなくてはいけないパターンなのでは?可哀想なアイン……
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