表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ  作者: 猫子
第一章 王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ
39/124

第三十九話 事の顛末

 こうして、無事に迷宮演習事件は幕を閉じた。


 あの後、学院長であるフェルゼンの指示で緘口令が敷かれ、エッカルトと俺の決闘については、口外しないということになった。

 表向きには教師の威厳のためということだったが、恐らく俺に気を使ってくれたのだろう。


 エッカルトとの決闘が目立ちすぎることはわかっていた。

 だが、エッカルトを追い出さなければ、ルルリア、ギラン、ヘレーナの三人も無事では済まない。

 あの一件によって俺が〈幻龍騎士〉に戻されたとしても、彼女達のために決闘を挑まなければならないと考えていた。


 ただし、あの後にすぐフェルゼンの命令で解散することになったため、エッカルトの扱いが実際にどうなったのかは、まだわかっていない。


 翌日、トーマスが〈ワード〉の魔法を用いて、クラス全体に現在のクラス点を公開してくれた。


―――――――――――――――――――――

〈Dクラス〉:133【-40】

〈Eクラス〉:208

―――――――――――――――――――――


 迷宮演習事件での妨害のペナルティもあり、〈Eクラス〉と〈Dクラス〉のクラス点の差は、既に七十点以上になっていた。


「よくやった……というのも変な話だが、これでまず、前期の間にクラス点が逆転することはないだろう。クラス点が大きく変動する行事もそこまで多くはないからな。新しい寮を期待しておけ」


 トーマスの言葉に、ヘレーナがガッツポーズをして喜んでいた。


「これで、大部屋とのお別れもほとんど決まったようなものですわ!」


「やったなァ、アイン! ハッ、カンデラ共の悔しがる顔が、頭に浮かぶぜ。しばらくはちょっかいも掛けられねえだろうよ。逆にこっちから出向いてやるかァ?」


 ギランが豪快に笑いながら、そう口にする。


「大部屋でなくなるのは少し寂しい気もするが、仕方がないか」


 俺の呟きに、ルルリアが苦笑いを浮かべた。


「アインさん、結構、寂しがりなんですね……」


「それから、だ。〈Dクラス〉の担任だったエッカルト先生が、急遽退職なさることになった。既にこの学院にはいない。ご実家のエーディヴァン侯爵家の問題だそうだ」


 トーマスは、世間話でもするような気軽さでそう口にした。

 すぐに教室全体がざわついた。


「それって、明らかに昨日の……」

「そういうことだよな?」


「なんでも歴史あるエーディヴァン侯爵家の名誉に関わる問題らしい。いい加減な噂を口にすれば、どんな目に遭うかはわかったもんじゃないから気を付けておけよ」


 その一言で、教室中が一瞬にして静まり返った。


 何にせよ、エッカルトは無事に退職したらしい。

 俺は安堵の息を吐いた。

 フェルゼンも、なるべく公にならないように手を回してくれているようだ。


 エーディヴァン侯爵家の名誉に関わる問題というのは、実際まあ、あながち間違いということでもないだろう。

 次の〈Dクラス〉の教師は真っ当であることを願う。



 ホームルームの後、座学を挟み、訓練場での模擬戦があった。

 俺がルルリアと組んで剣を打ち合っていると、すぐ背後から怒声が聞こえてきた。


「ヘレーナァ! お前、昨日のあのすげぇ技はどこへやりやがったァ! ぜんっぜん、それらしい動きもできてねぇじゃねぇかァ! わざとやってんのか!」


「ひぃっ! ど、怒鳴らないでくださいまし……! そ、そんな怒られたって、できませんわ。だって、私が一番、再現したいですもん……」


 ……どうやら、ハルゲン相手に使った剣の返し技が、またできなくなってしまったらしい。

 結局ヘレーナには、またあの妙に隙の多い、歪な剣術だけが残ってしまった。

 かなり繊細な技のようだったので、ヘレーナの練度ではその日の体調にもかなり左右されるのかもしれない。


「ヘレーナさん……昨日、凄く格好よかったのに……。だって、相手が多少気を抜いていたとはいえ、〈Dクラス〉の二番手であるハルゲンに勝ったんですよ? それが、また普段のポンコツヘレーナさんに戻ってしまったんですね……」


 ……ポンコツヘレーナさんは止めてあげて欲しい。

 昨日とのギャップを考えると、そう言いたくなる気持ちもわかるのだが。


 ヘレーナは剣の型さえ変えれば、それだけで一段は剣の技術が上がるはずだ。

 ただ、恐らく、返し技を完全にものにしたときのための修練も兼ねて、あの型を使い続けているのだろう。

 俺が口を挟んで変えさせれば、台無しになってしまいかねない。


「大丈夫ですかね……あの二人。あの、私、止めてきます。何なら、今からペアを変えませんか? 普段はアインさんとギランさんが組むことが多いですし……」


 ルルリアがそう言い、彼らへと駆け寄ろうとする。

 俺はそれを手で止めた。


「いや、大丈夫だろう」


 俺はヘレーナを手で示す。


「おら、もう一回やんぞヘレーナァ! また同じところから斬り掛かるからな!」


「わっ、わかりましたわ!」


 あの〈Dクラス〉との団体戦を経て、ヘレーナとギランの仲も多少は深まっているように思える。

 ギランが荒っぽいのは不安だが、大きな問題に繋がることはないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
↑の評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!





同作者の他小説、及びコミカライズ作品もよろしくお願いいたします!
コミカライズは各WEB漫画配信サイトにて、最初の数話と最新話は無料公開されております!
i203225

i203225

i203225

i203225

i203225
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ