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王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ  作者: 猫子
第一章 王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ
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第三十六話 団体戦⑥

「大将戦は、〈Eクラス〉アイン……〈Dクラス〉、デップ・デーブドール」


 俺はデップと向かい合い、剣を構える。

 いよいよ〈Dクラス〉との団体戦も、この大将戦で最後の戦いとなる。


「頼む、頼むぞ、デップ君……。私には、もう、君しか希望がいないのである! 君ならば勝てると信じているぞ!」


 エッカルトが祈るように口にする。


「任せてください、エッカルト先生」


 デップは胸を張ってそう口にする。

 だが、カンデラに至っては既に戦いを見ていなかった。

 ぼうっと宙を眺めて、たまに小さく溜め息を吐いている。

 

「戦いの前に、言っておきたいことはあるか、アイン」


 デップが俺に指を突き付ける。


「ん? ああ、えっと……いい勝負しよう」


「フン、望むところだ」


「大将戦、開始……」


 エドモンが、団体戦最後の戦いの始まりを宣言する。

 開始と同時に、俺はデップへと接近して足払いを掛けて転ばせ、デップの背を剣で打った。

 勝負は一秒と掛からなかった。


「大将戦……勝者、アイン」


 エドモンは静かに、勝者の名を宣言する。

 エッカルトは顔を両手で覆い、その場に崩れ落ちた。

 さすがに無駄だと思ったのか、やり直しを要求してくることはなかった。


「これにて、〈Eクラス〉が三勝、〈Dクラス〉が一勝……。この団体戦形式の決闘は、〈Eクラス〉の勝利とする。よって校則に則り、迷宮演習での一件については〈Eクラス〉の言い分を認め、彼らへの退学等の処分は行わないものとする。また、〈Dクラス〉より妨害を仕掛けたものとして、彼らのクラス点に40点の減点措置を行う」


〈Eクラス〉の生徒達から、歓声が上がった。

 反対に〈Dクラス〉の生徒は、まるで葬式のように静まり返っていた。

 ただでさえ迷宮演習の完全敗北で、クラス点最下位に落ち込んでいたのだ。

 ここで40点もの減点を受ければ、〈Dクラス〉の再浮上は絶望的なものとなる。


「フン、勝手なもんだなァ。俺らのときは散々退学だのほざいていたくせに、連中に非があるとなっても、クラス点の処分だけとは」


 カンデラ達はがっくりと肩を落として床を見つめたまま、顔を上げなかった。


 ただ、俺達が退学になりかねなかったのは、無抵抗の、それも侯爵家であるカンデラを含む彼らを一方的に攻撃したと、そう思われていたのが原因だ。

 ただの演習中の喧嘩だったと証明されれば、妥当なところだろう。

 それに、カンデラはその件については主犯ではない。

 別に叩かなければいけない相手がいる。


「俺は元々、カンデラ達を退学に追い込みたくてやってたわけじゃない。皆が残れることになってよかったよ」


「チッ、まぁ、あんな小物共虐めても仕方ねぇわな。どうせ侯爵家の退学なんて、学院もできねぇだろうよ」


 ギランがカンデラ達を睨む。

 カンデラ達は何も言い返しては来なかった。

 さすがのカンデラも心が折れているようだった。


「みんなが残れることになって、本当によかったです……。私が負けた時には、もう駄目かと思いました……」


「フフン! 今回は私のお陰ですわね! もっと感謝してくれてもよろしくってよ!」


 ヘレーナが得意げに言えば、ギランが彼女の背を軽く叩いた。


「今回ばっかりは、ヘレーナのお陰だな。よくやってくれたぜ」


「ギ、ギランさんが私を褒めるだなんて、後が怖いですわ……」


 ヘレーナが怯えたように肩を狭める。

 ルルリアがヘレーナの手を取った。


「本当にヘレーナさんに助けられました、ありがとうございます……。ヘレーナさん、あんなに強かったんですね」


 ヘレーナは耳まで赤くして、落ち着かなさそうに眼をあちこちへとやった。


「や、止めてください、私、その……褒められるの、慣れてないんですの……」


「ええ……普段あんなに、褒めて褒めてって煩いのに……」


 ルルリアが呆れたように眉を垂らす。


 これで、〈Dクラス〉との抗争には完全に決着が着いた。

 カンデラも、もう俺達相手に何かをする気力は残っていないだろう。

 降りかかる火の粉を防げれば、俺はそれでいい。

 

「待ってくれ、エドモン先生」


 俺は逃げるように去ろうとした、主審役だったエドモンを呼び止めた。


「な、なんだ、何か言いたいことでもあるのか?」


「校則の決闘を、このまま適用して欲しい。学院内の関係者であれば、誰に対してでも挑める、そういうことになっていたな?」


「はぁ……何をしたいのかはわからんが、相手が引き受けなければ意味がないのだぞ」


 エドモンが眉を顰める。


「エッカルト先生、俺はこの場で貴方を告発する。〈Dクラス〉の生徒に俺達を襲撃させ、魔物寄せの呪印文字(ルーン)まで持ち出した主犯であるとな。故に、貴方の辞職を求める」


 そう……校則では、決闘の相手は学生に限定してはいないのだ。

 詭弁のようなものだが、教師相手に成立しないという趣旨の内容は一切存在しない。


「な、なんだと……? 教師であるこの私に、決闘を挑むだと? どこまでもふざけた真似を……!」


 エッカルトの声は、怒りに震えていた。


〈Dクラス〉の生徒は、エッカルトのような人間がいなければ、せいぜいしょうもない嫌がらせが関の山だろう。

 だが、エッカルトは違う。

 彼は身勝手で、狡猾で、あまりに邪悪だ。

 放っておけば、必ず逆恨みで俺の学院生活を脅かす。


「調子づくなよ、クソガキ……! 君が強いと言っても、所詮は学生間のお遊びごっこだ! 学院教師など、大したことはないかと思ったか? 私は元々〈銅龍章〉を有する程の騎士であるぞ! レーダンテ騎士学院に、騎士の誇りを穢す平民が多く入り込んでいると聞き、それを正しに来たのだ!」


 エッカルトはそう言うと、エドモンが片付けようとしていた模擬剣を奪った。


「よかろう! だが、貴様にも、自身の退学を賭けてもらう! もう逃げられんぞ、アイン! エドモン、このまま審判を続行しろ!」


 エッカルトは興奮したように息を荒げながら、俺へと模擬剣の刃を突き付けた。


「ア、アインさん……それはさすがにまずいです! エ、エッカルト先生は、騎士の中の騎士……〈龍章〉持ちですよ! 魔石の真相は、トーマス先生達にお任せしましょう」


 ルルリアが不安げに俺へとそう言った。

 だが、それでは駄目だ。いつまで経ってもエッカルトは野放しのままになりかねない。


「大丈夫だ、すぐに終わらせる」

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― 新着の感想 ―
[一言] デップさんなんか下克上かましそうな雰囲気あったけど普通にやられた、まあそりゃそうか
[気になる点] ギャグ、一辺倒じゃないとこが良いなぁ(゜ο゜人)) ちゃんとストーリーもありそう✧\(>o<)ノ✧
[良い点] デップさん人気がとどまるところを知らない
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