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王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ  作者: 猫子
第一章 王国の最終兵器、劣等生として騎士学院へ

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第十七話 迷宮演習①

「前以て告知していた通り、今日は迷宮演習を行う」


 入学より一か月近く経過した頃、朝の教室でトーマスよりそう告げられた。

 トーマスに先導され、俺達は教室を出る。


 迷宮演習とは、学院地下にある迷宮に潜って行う実技演習である。

 この学院では、年に数回この形式の演習が行われるらしい。


 迷宮というのは、魔物の蔓延っている地下の巨大空間のことだ。

 世界の奥底には、〈深淵〉と呼ばれる、巨大な魔力の流れが存在している。

 魔物はそこから湧き出てくる生物のことで、多種多様な姿を持っており、そして例外なく凶暴である。

 そのため地下の〈深淵〉の流れの傍では、魔物が生まれ、彼らが穴を掘り、空間が広がっていく。

 それが迷宮の正体である。

 当然、下へと向かうほど〈深淵〉が近くなり、強大な魔物が現れるようになる。


「しかし、王都の地下の、それも学院下に迷宮があるとはな」


「あらあら、アインはご存知ないのかしら? 田舎育ちの平民は、これほど世俗に疎くなるものですのね」


 ヘレーナが鼻息をふんすと吹き、得意げに話しかけてきた。

 それから、ちらっ、ちらっと、俺を窺う。

 話の続きを促してほしそうな様子であった。


「なんだテメェ、アインを馬鹿にしてやがんのか?」


 眉間に皴を寄せたギランが、ヘレーナへと食って掛かる。


「ひぃっ! べべ、別に私、教えてさしあげようとしただけですってよ……。そんな、凄まなくたって」


 ヘレーナがルルリアを盾にして、ギランから身を守る。


「……私かアインさんを、ギランさんからの盾にするのは止めてくれませんか?」


 ルルリアが呆れたように零す。

 ……模擬戦の授業以来、どうにも俺はギランから懐かれていた。

 放課後に剣術訓練に付き合うことも多く、寮棟でも同じ部屋なので、ルルリアやヘレーナよりも顔を合わせている時間が長いこともある。


「ヘレーナ、教えてもらっていいか?」


 俺はヘレーナを助ける意味もあって、彼女へとそう言った。

 ヘレーナはそれ見たことかという表情でギランを見て、睨み返されてまた委縮していた。


「も、元々、このアディア王国は、レーダンテ地下迷宮を中心に発展してきた歴史がありますのよ。五百年前……このレーダンテ地下迷宮を探索する、多くの冒険者が現れましたの。レーダンテ地下迷宮は、世界の中でも最大規模の迷宮。発見された当初は、この広大な迷宮の低階層に、大量の魔石が転がっていたんですのよ」


 魔石というのは、〈深淵〉の瘴気が結晶化したものである。

 多くは結晶化と同時に肉を得て魔物の心臓となるが、小さなものであれば魔物化せずに迷宮に転がっていることもある。


「それを基に発展した大都市が、この王都レーダンテの前身であり、ひいてはアディア王国の前身でもありますのよ。今は採り尽くされて魔石採掘場としては枯れたようなものですけれど、王家は騎士の訓練場や、極秘資料の書庫として、このレーダンテ地下迷宮を活用してきましたの。そして今は、迷宮の上に学院が建って、魔物災害を牽制すると同時に、次代の騎士達の訓練場になっているというわけですのよ」


「なるほど……。ありがとう、ヘレーナ」


「フフン、アインったら、講義内容から少しでも逸れたところはてんで駄目らしいですわね。そんなのじゃ、テストの点数は取れても、知識を活かすことはできなくってよ? 学院のお勉強の本質を見失っていますわね」 


 ヘレーナは鼻を高くし、上機嫌にそう語る。


 俺が学院にやってきたのは、世俗を学ぶ意味合いもある。

 俺もネティア枢機卿が、これまで〈幻龍騎士〉をただの自分の武器として扱っていたのはわかっている。

 ただ、彼女はそれではこの先不都合が出るかもしれないと警戒し、俺に価値観を広げさせるために、この学院へと送り込んだのだ。


 今の俺は、授業にもならない、貴族の中では当然の知識、そういった面に疎いのかもしれない。

 そこが欠けては本末転倒だ。 


「授業や試験に手いっぱいで、肝心なところに目が向いていなかったようだ。ヘレーナ、お前にはいつも学ばされる」


「そっ、そうかしら? フフン、ま、まあ、私って、そういうところがありますわよね」


 ヘレーナが嬉しそうに口にする。


「……ヘレーナさんは、テストの点数を取ることを学んだ方がいいんじゃないですか?」


 ルルリアの冷たい言葉に、ヘレーナは口を曲げる。


「なっ、何を言うのかしらこの平民は! 卒業できればいいんですのよ、卒業できれば! 教えておいて差し上げますわ、ルルリア。この学院でも、騎士になっても、上位貴族連中と何度も関わることになるんですから。上位貴族相手に穏便にやり過ごすためにはね、社交場で出やすい話の知識が必要ですの。遠い国の遠い昔の歴史より、ひと世代前からどことどこの家に利害関係があるだとか学んでおいた方が、よっぽど役に立つんですのよ!」


 ヘレーナは必死にそう自己弁護する。

 確かに言っていることは間違っていないのかもしれないし、俺に彼女の言うような知識や能力はないので参考になる。

 だが、なんともまあ、身も蓋もない話だ。

 ギランも呆れて溜め息を吐いていた。


「ハッ、煩い奴がいたら、全部ぶん殴って黙らせておけばいいんだよ。んなみっともねぇ派閥争い、俺やアインは興味ねぇよ」


「……貴方、父親がそれをやった結果、この〈Eクラス〉に叩き込まれることになったのではなくって?」


 よせばいいのにまたそう返して、ヘレーナはギランに睨まれていた。

 ヘレーナはびくっと身を震わせ、俺の陰にさっと隠れる。

 ……いつかまた、模擬戦のときのような事件が再発するのではないかと、不安で仕方がない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これもうギランがメインヒロインでしょ
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