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「はあ…」
慣れない環境での1日を終え、やっと帰路につくことができた。
外はもう日が暮れていて暗い。
予想通り、阿部光は面談には来なかった。
2番、3番の生徒は特にこれといった特徴はなく、至って普通の生徒だった。
2人とも何となく大学に行ければいい、というようなことを言っていた気がする。
本当に、今の俺に丁度良い。
__「あなたにうちの子どもを指導させるんじゃなかった‼」
「…」
サアっと、春の冷たい風が吹く。
足元を見ると、花びらが散る前の桜が落ちていた。
立ち止まったその瞬間、鞄の中の携帯が鳴る。
通知で表示されたのは、見慣れた男の名前。
「もしもし」
「おー、譲太!学校終わった?暇してる?」
海野慎平。高校時代からの友達の名だった。
「まあ。今から帰るとこだけど」
「じゃあちょっと付き合えよ!駅前集合な」
「おい、ちょ…」
俺の返事を聞く前に一方的に電話を切る慎平。
本当に、強引な奴…。
まあ、酒でも飲んでスッキリしたい気分ではある。
おれはゆっくりと足取りを進め、駅前へと向かった。