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水商売女子高生と惰性教師  作者: みるきー
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 ガラガラと戸を開けると、ザワついていた教室が少し静まる。


 今年からこの学校に来た俺は今、彼らにとって異物のような存在だ。

 この雰囲気はこんなに息苦しいものだったか?


「ではホームルームを始めます。号令」


 俺が声を発すると同時にチャイムだけが教室に鳴り響く。

 生徒の誰も、何も口にしない。


「あれ、日直は...」


 チラと目を左にやると、廊下側の一番前の席の生徒がいない。

 名簿1番の日直のはずの生徒。

 さっき名簿を見たばかりだったから、いないのは要注意人物の彼女だとすぐにわかった。


 新学期1日目から遅刻か...


「じゃあ代わりに...伊藤くん、号令お願いします」


 今度は名簿を見直して、2番の生徒にそう声をかける。


「起立、礼」


だろうな、というような顔をして、伊藤という男子生徒が号令をかける。

生徒全員がゆっくりと席を立ち、数名の挨拶の声が聞こえる。


形式だけの行為が終わり、全員が席に着いたところで自己紹介を始めた。


「えー皆さん初めまして、担任の三村です。今年からこの高校に赴任してきました。科目は数学で、このクラスの授業も受け持つことになったのでよろしくお願いします」



自己紹介をするのは、3年ぶりだ。


前は教師になって1年目、初めて教壇に立った年のとき。

緊張していたけど、それと同じくらいワクワクしていて、多分変な笑顔で自分の名を名乗っていた気がする。


あのときは、何と喋っていたっけ。

もう少し捻った自己紹介を考えて、生徒に覚えてもらおうとしていたはずだ。


今の俺に、そんな感情は芽生えない。



俺の10秒程度の自己紹介を、生徒たちは聞いているのかいないのかわからないような表情で聞いていた。

茶化してくるような奴も、真剣に聞いている子もいない。



ここは賢い進学校でもなければ、スポーツが強いというわけでもない、何の特徴もない普通の高校だ。


ここが赴任先だと聞いたとき、今の俺にぴったりだと思った。



もう進学校はうんざりだったから。



「では今日の予定は…」


話し始めた瞬間、教室の前の戸がガラガラと音を立てた。


目をやると、長い黒髪の女子生徒が立っている。

彼女は日直のはずだった阿部光の席に腰をかけた。



この子が阿部光か。


どこか大人びていて、異質な雰囲気を放っていた。


それが俺の、彼女への第一印象だった。

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