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19・悪霊を倒さなくては!(使命感)

 だれもいない部屋でベッドに腰かけて、わたしはクラウス殿下を待っていました。

 ダンスのときに告げた通り、メイドや使用人は下がらせています。

 ふたりっきりです。神獣ガルム様もいらっしゃいません。悪霊を警戒させないためです。


 クラウス殿下は、わたしなんかの言うことを信じてくださるでしょうか。

 今にも口から飛び出しそうな心臓をドレスの上から押さえます。

 お母様が選んでくださったこの新しいドレスは、少し露出が激しい気がします。夜会でも殿下に見つめられてしまいました。はしたない女だと思われていないと良いのですが……いいえ、今夜でお別れなのですからどう思われても関係ないですね。


 扉を叩く音がして、わたしは座っていたベッドから立ち上がりました。


「……コリンナ、来たよ」


 クラウス殿下は夜会のときの正装から、寝巻に着替えていらっしゃいました。

 お酒も飲んでいらっしゃいましたし、きっともう眠いのですね。

 殿下の安眠のためにも、さっさと悪霊を倒さなくては!


「ご足労ありがとうございました」

「ふふっ。随分堅苦しい言葉を使うんだな。……君はまだ寝巻に着替えていないのか?」


 わたしは頷きました。

 この後竜を召喚して旅立つので、寝巻ではいられません。

 クラウス殿下が微笑みます。


「大丈夫。私はドレスを脱がせるのには慣れて……いや、なんでもない」

「クラウス殿下、実は……」

「ベッドに座って話そうか」

「そうですね」


 わたしの緊張を見抜いたのか、殿下は優しくおっしゃいました。


「夜会のときも言ったが、そのドレスよく似合っているよ」

「ありがとうございます。それでですね、殿下」

「なんだい? わたしの可愛いコリンナ」


 クラウス殿下は真っ白な肌をほのかに赤く染めておっしゃいます。

 ああ、ダメです。

 かなり悪霊に浸食されています。


「落ち着いてください、殿下」

「そうだね。経験豊富な私のほうが落ち着かないと……あ、いや」

「クラウス殿下」


 わたしは彼を見つめました。

 澄んだ青い瞳に吸い込まれそうです。

 小さく深呼吸して、わたしはクラウス殿下に告げました。


「実は、殿下は悪霊に憑りつかれていらっしゃいます」

「……え?」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔、というのを生まれて初めて見ました。

 それはそうですよね。クラウス殿下がわたしの部屋に入った後、廊下で待機を始めてくださった神獣ガルム様だって最近まで気づいていらっしゃらなかったのです。

 ご当人が気づいてなくても不思議はありません。


 ──わたしは、殿下に事情を説明いたしました。


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