転職師『魔王を転職させたら世界平和になるんじゃね?』
俺は転職師。
転職師とは他の者を転職の神の加護によって転職させることができる職業だ。
「はい、次の者、貴方は魔術師ですね。はい、目を閉じて……」
こうして毎日神殿に来る者を転職させている。
しかしある日、思い付いた。
いや、思い付いてしまったのだ。
『他人を転職させられる俺なら、もしかして、魔王を村人あたりに転職させたら、世界、平和になるんじゃね?』と。
考えるより行動の俺は、すぐさま町の外に出て、小手調べにモンスターに転職を試してみた。
「……できた。」
そう、結論から言うとできてしまったのだ。
魔物から村人に。
「ふむ……」
さすがに種族は変わっていないが、職業は魔物から村人にかわっている。
しかも、村人になったせいで、話しかけると
「ここは、町の外の草原。スライムが多く生息しているよ」
と、説明してくるようになってしまった。
「まぁ、できてしまったものはしょうがないな……」
こうして、勇者でも何でもない転職師の俺が、魔物を倒さず、魔王を倒さず!世界を平和にする旅が始まったのであった。
~数年後~
「はぁー!!これで最後だ!!」
「なにを!!??うわぁぁぁぁぁ!!!?」
そう、ついに俺は全次元、全世界の魔王を『学生』に転職させることに成功した。
国王から多額の褒賞金と、あらゆる勇者や冒険者から非難の眼差しをもらったが、そんなこと気にしていられない。
世界が平和になったのだ!
しかし世界が平和になったことで、
二つ……いや、ある意味同じことなので一つ大きな変化があった。
まず、長い間神殿を開けたせいで、俺はクビになった。
まぁこれは些細なことだ。
褒賞金もあるしな。
ただもう一つの事が重要だった。
世界が平和になったことで、
転職の意味がなくなったのだ。
私が行っていた転職とは、
神様の力を借りて、別の適正を持った職業に転職させる事。
ある意味に生まれ変わったも同然なのだ。
そもそも転職師は生まれもっての才能と適正、
信仰がなければ、なることはできない存在だった。
しかし平和になった今、農夫や商人、傭兵はなどは、
国が管理する役所で自由になることができ、
転職師自体が完全に不要になってしまっていた。
「再就職……も難しいか……。」
まぁいいさ。
私には新たな使命がある。
もらった褒賞金もたんまりある。
「何をしている転職師!封印されし我が右腕の餌食となりたいか!?」
「くくく、そうだ、貴様が我を我でなくしたのだからな、責任はとってもらうぞ……」
「ハハッ、我が血をわけし同胞たちは血の気が強くて困るね、さぁ、我と闇よりも昏き世界にゆこう」
「フフフッ、皆様、彼は前世より私と堅き誓いを酌み交わした。ダークネスドラゴンの転生者、下がってください。」
私にできることは、たった一つ。
ここに大きな学校を建て、
この中二な魔王たちを導く教師になることだ。
完