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天狗様といっしょ  作者: kano
第二章
95/210

天狗様、潜伏す(11)

「なになに!? んな大声で怒んなくたって聞こえるって!」

 セイさんはともかく、耳を押さえてフラフラしてる瑠璃さんと狐ちゃんたちには申し訳ないことした……。

 だが、これは……必要なことなのだ……!

 セイさんは無視して、私は目を閉じ、神経を研ぎ澄ませた。音だけじゃない。さっき前鬼さんたちを感じ取った時の感覚を思い出して、周り中の気配を感じ取ろうとした……。

 と、その時――

「いた! 瑠璃さん、入り口! あ、二人もいる!」

「はい!」

 私の声に反応して、瑠璃さんはすぐさま指差した方向へ九字を切った。素人目に見ても安定感が増していた。

 さすがだなと感心していたら、その九字によって、人の輪郭が露になった。

「ああ驚いた。いきなり撃たれるとは思いませんでしたよ」

 驚きつつもどこか優しく微笑んでくれる、優し~いお方……相模さんだ。

「良かった……! 相模さんが来てくださって……!」

 私が感激のあまり涙ぐむと、相模さんが一気に青ざめた。何か起こったと察したらしい。

「いったいどうしました!? またセイが何か?」

 さすが察しのいい……

 私は駆け寄ってくれた相模さんの腕をがっしり掴み……

「お手伝いしてくれますよね?」

「………………はい?」

 私は、この理科室での仔細を事細かに説明した。最初は同情と罪悪感に溢れていた相模さんだったけれど……だんだん納得いかないお顔になっていった。

「あの、藍さん……私はセイの保護者ではないのですが……」

「だっていつも一緒にいるじゃないですか」

「ですから、あれはセイに無理矢理……」

「相模手伝ってくれんの? ラッキー♪」

「……」

 完全に一人ではやらないつもりのセイさんの声に、相模さんは一瞬、眉を吊り上げたが……なんとか耐えていた。そして、おもむろに立ち上がった。

「わかりました。このひどい悪臭については私にお任せを」

 そう言うと、相模さんは一人で、準備室近くの薬品棚に歩いて行き、鍵が開いたままの棚を開けた。

「藍さん、アンモニア水は何性かわかりますか?」

「え? テスト勉強!? 今ですか?」

「ついでです。覚えていて損はありませんから」

「え、え~と…………アルカリ性……?」

「正解です」

 相模さんは満足そうに笑った。アルカリ性、中性、酸性の3択なのはわかったから当てずっぽうで言った答えがたまたま当たっただけなんだけど……良かった。

「では、そちらの……瑠璃さんでしたか? このアルカリ性のアンモニア水を無臭にするにはどうすればいいですか?」

「え?」

 瑠璃さんは、急にキョロキョロしだした。自分に言われていると思えなかったのだろう。こういう平等性は相模さんの良い所だけど、公平すぎてびっくりするときもあるのだ。

「えっと……えっと……わかり、ません……」

「中性にすればいいんですよ」

 瑠璃さんに気にするなと言うように、相模さんはニッコリ笑った。それを見て、瑠璃さんは少しホッとした顔をしていた。

「さてお二人に問題です。アルカリ性を中性にするには、何性と混ぜるでしょうか?」

 あ、これはこの前の試験勉強の時に教わった気がする……!

「酸性!」

「正解です」

 相模さんが嬉しそうに微笑んだ。手には、何かしらのボトルが握られている。

「そう、つまりこの床のアンモニア水も、酸性の液をかけたら中和されるのです……!」

 そう言い、相模さんは手にしたボトル――クエン酸の液を床一面にぶちまけた……!

「あああああぁっ!」

 私と瑠璃さんの叫び声が重なった。

 やった本人は、ものすごいやり切った笑顔でこっちを見つめる。

「ね? これで、匂いも気にならないでしょう?」

 確かに、あのひどい匂いは消えた。だけど後には、ボトル2本分のぶちまけられた液体が残された。あと倒れた人体模型と。

「相模さんの……バカ~~~~っ!!!」

「えええぇっ!?」



 経過報告

 セイさん、相模さんを発見

 だが、理科室のお片付けのために、約40分タイムロス……。

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