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天狗様といっしょ  作者: kano
第二章
86/210

天狗様、潜伏す(2)

一夜開けた日曜日。


まだ部活も始まらない早い時間帯だと言うのに、空は先日の体育祭の日に負けず劣らずの快晴。日差しが私たちの肌を焼こうと躍起になっているかのような猛烈な天気の下、知る人ぞ知る錚々たる面子が肩を並べていた。

しんと静まり返る校舎を前に、日本を代表する八天狗様たちが、何とも重~い、呪いにかかってしまったような面持ちで、立っていた。

その横で、大天狗様総ぶれを初めて見る瑠璃さん。軽く震えている……。

いきなり朝方に呼び出されたと思ったらこんな面々が待ち構えていたんだから、仕方ない。というかかわいそう……。

それで、こんな凄い方々が集まって何をするのかと言えば……「校内かくれんぼ」なのです……。

気乗りしないどころか、ここに来たことを心底後悔している顔を見せる皆さんに向けて、場違いな声と言葉がかけられた。

「みんな暗いなぁ。楽しんでやろうよ。童心にかえったつもりで」

太郎さんが暢気な声でそう言うものだから、居並んだ天狗様たちは皆さん、ぴくんと眉が跳ね上がった。

「童心に、ねぇ」

明らかに苛立ちを隠せていない三郎さんの声が、ため息とともに響いた。

「童心にかえる……ああ、帰るさ。今すぐにだって帰ってやるよ。お前が手元でヒラヒラさせてる請求書さえなかったらな!!」

「なんかもう……すみません……」

私のためにこんな目に……。さすがに申し訳ない……。

「いや、いい。お嬢は気にするな」

「そうそう。藍ちゃんは悪くねーって。悪いのは全部あいつ」

皆さんは一斉に太郎さんを睨みつけた。が、そんなの気にする太郎さんではなかった。

「じゃあルール説明ね」

昨日、いそいそと書いていたらしい大きな紙をポケットから取り出してみんなに向けて開いて見せた。


ルール1

制限時間は日没まで


「長い!!」

「腹減るだろ!」

「君たち……修行の日々を忘れたの?数日飢えと乾きに耐えたことを思えば数時間くらい何でもないでしょ」

「修行すんのは俺たちじゃねえだろ!」

「……仕方ないなぁ。じゃあ12時から一時間休憩ね。お弁当タイムにしよう」

「なんだ、あるんじゃん!藍ちゃん特製?」

「は?僕が作ったに決まってるでしょ」

「……なんか、腹立つな……」


ルール2

結界を破られた時点で負け


「つまり、"なんかこのへんにいそう"って感じの直感はダメってことか?」

「そういうこと。はっきり見つけるまでが勝負」

「なるほど。確かに暴力娘一人では手に余るかもしれないな」

「……なんか、僧正坊さん、最近瑠璃さんの評価高いですね」

「そうかい?」

「ど、どうも……」

「何かあったの、僧正坊?」

「別に」

「ふ~ん、じゃあ……」


ルール3

お手伝い禁止


「見ての通り、見つかってやることないからって、手を貸すのは禁止。修行にならない」

「やれやれ、変なところはスパルタだな……」


「とまぁ、大まかなルールは以上なんだけど……」

「大まか過ぎます……隠れる範囲は? 我々は連絡を取り合っていいのですか?あとゲーム中移動していいのですか?」

「あ~校舎内だけ。連絡は非常時のみで、隠れるための連絡はダメ。移動は……足での移動ならいいかな」

「神足通はなしね。まぁ当然か」

「じゃ、とりあえずやってみようか。藍、バカ娘、しっかりね」

「え、あの……私たちの質問は?受け付けないの?」

…………と、尋ねる私の声が終わらないうちに、太郎さんたち10人は、一瞬にして姿を消した。

「…………え?」

文字通り、消えた。ふわっと、消えてしまった。

「そういうものでしょう、結界って」

「そ、そうなの?」

「……他者を拒んで境界をひく。その向こう側には触れられない。つまり、認識もできなくなる」

「そ、そうなんだ……」

そういえば昔、治朗くんの講釈を聞いた気もするけど……忘れてる……。

頭を抱える私の脇を、瑠璃さんは颯爽とすり抜けていった。

「行きましょう。みんなどんどんわかりにくい所に行っちゃいますよ」

「そ、そうだね」

私と瑠璃さんは、恐る恐る、校舎に足を踏み入れた。

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