天狗様、天敵(?)と相対す(6)
教室には変わらず太郎と、少女。ただ先ほどまでと違うのは――少女が目を回して気絶していること。それと、もう一人の人間がそこに存在するということだった。
「ん? あれ? 愛宕くん、どうした?」
教卓で座って本を読んでいた教師が驚いた声を出した。
結界の中では時間の流れが違う。切り取られた空間で行われていた上に、それほどの時間も経過していなかったので、結界の外=現実ではほぼ一瞬の出来事だっただろう。
今の今まで大人しく席に座って問題用紙に臨んでいたはずの太郎が後ろの席の傍に立っており、女子生徒は倒れている。
教師にしたら驚くよりほかにすることがない。
「何も問題ありません。テスト続けますね」
「あ、いや、愛宕くん……それはちょっと……」
席に戻ろうとした太郎を、教師が止めた。
今度は太郎が驚く番だった。太郎がテストを解くことは、教師に最も求められていたことだからだ。
「テスト、続けちゃダメなんですか?」
「そう、なるねぇ」
「……え?」
教師は、後ろの少女と太郎とを交互に見ながら、とても……とてもとても言いにくそうに、話した。
「その、君……テスト中に別の生徒の答案を見てはダメだよ……」
「へ……?」
そう言われ、少女の方に目をやってみると、そこには1~2問、申し訳程度に解かれた回答が書かれていた。
そう、”彼女の回答”が、書かれていた。つまり、太郎はそれを見てしまったことになる。
「え………………うそでしょ……」
「私も、そうしたいんだけどねぇ」
「いやいやいや、先生見てください。僕ほとんど全部解き終わってたんですよ、ほら! ついでに言うとあっちの回答デタラメだし! 僕があの答案をカンニングする意味なんてないです! 皆無です!」
太郎は、自分の答案を押し付けるように見せて言い募った。だが教師は、ひときわ真面目な正確で有名な人で……ついでに言うと融通も聞かないと時々不評の人だった。
「愛宕くん……決まりは、決まりです」
「そ、そんな……てことは……僕は……?」
教師は、太郎が最も受け入れがたい言葉を宣告した。
太郎はよろめき、ぼんやりする頭でその言葉を呑み込もうとした。だが、無理だった。
太郎は、何とか気力を振り絞って問題をすべて解き終え、見せつけるかのように教師に提出し、教室を出た。
回答に要した時間――およそ15分。
その内10分で、太郎はこの世で最も受け入れがたい屈辱を受けた。
『再々試験』と――




