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天狗様といっしょ  作者: kano
第二章
105/210

天狗様、協力を要請す(1)

 セミの声が、あちらこちらで響き渡る季節。中天の太陽が道行く人を、家々を、焼き尽くさんばかりにじりじりと照らす中、彼らは六畳一間に密集していた。

 山南家の離れだ。キッチンと風呂はなく、トイレと居間、六畳の個室が4部屋ある。現在は太郎、治朗、僧正坊の三人が居室として使っている。ちなみに、エアコンはない。治朗がいらないと言ったせいだ。

 その中の一部屋……太郎の部屋に、大天狗たち9人が勢揃いしていた。

外気温と湿気で室内は蒸し風呂の様相を呈していた。

 全員が、ダラダラダラダラ汗だくになって顔を突き合わせている。

「……と、いうわけなんだ」

 太郎は先日の約束通り、他の大天狗たちにすべての秘密を打ち明けた。

あれから全員が一同に会する機会ができず、こうして話すことができるまで数週間が経ってしまった。

 明日からはもう、夏休みが始まる。

 それとともに、藍の誕生日も近づいていた。

 太郎の告白を聞き届けた一同は、苦い表情を堪えきれなかった。

 互いにしばし視線を交わし合い、代表するかのように、三郎が口火を切った。

「とりあえず、エアコンついてる居間でもう一度話さないか?」



「ふぅぅ……」

 汗だくだった全身にクーラーの風を浴び、全員が歓喜の息を吐き出した。息も詰まる暑さに、彼らは話どころではなくなっていたのだ。

「暑い……最近おかしくね?」

 居間で大の字になり、できる限り風を受ける面積を広くとろうとする清光坊。周り中のひんしゅくを買っていることも構わずにそう言った。

「まぁ、確かにな。温暖化とかそういう問題じゃない気がするな」

「お山にもエアコンの導入を考えた方が良さそうですね」

「業者が見つかるだろうか?」

「設置の段階で死人がでたら、シャレにならないな」

 口々にエアコン導入案が飛び出す。

 そんな中、風を浴びてボーッとしていた太郎が、はたと正気に戻った。

「違う違う。エアコン導入案は各自お山で話し合ってよ。今日は違う話でしょ」

「何だっけ? そういや藍ちゃんは?」

 暑さで状況把握もできていなかったらしい。エアコン付きの居間がある母屋には、今現在、天狗たちしかいない。

「母御前は調理学校に出張講師、藍は狐娘と出掛けているぞ。後鬼どのが護衛についてくれてな」

「……そう! 許せない、あのバカ娘!」

 先日のかくれんぼの際に藍と瑠璃は友人関係を結び、以降、順調にその友情を育んでいる。休みの日も二人で出掛けることが増え、太郎は置いてけぼりを食らうことが増えているのだ……。

「マジで?ふたり早速デートかぁ~太郎、完全に出し抜かれてんじゃん」

「で、デートとか! 女同士じゃないか!」

「でも太郎は行ったことないだろう? お嬢とお出かけとか」

「あ、あるよ! スーパーとか商店街に行って、献立のことでいつも盛り上がるし……!」

「……"おつかい"じゃないか、それ?」

「業務連絡に近いな」

「っ!!」

 畳み掛けられる言葉に、ついに太郎は膝を折った。俯いて、なにやらグズグズと何かをすする音が聞こえだす。

「ああ、もうやめい! 太郎が泣き出したろうが。面倒くさい。いい加減に話を進めんか」

「親父さん、面倒くさいって……」

 すがろうとする太郎を振り払って、法起坊は三郎に話を進めるよう促した。こういう時の仕切り役と決め込んでいるのだ。

「……え~何だったっけ? 太郎から聞かなきゃいけない話だったな」

 その言葉に、湯だったタコのようにぐったりしていた面々は、各々居住まいを正し始めた。

「まず、藍に憑いている者の正体。そして藍の今後について、お前の見解を聞かせろ。あとは……」

「暴力娘と狐娘の修行について、だな……」

 その言葉を僧正坊が口にしたことに、一同はほんの少し驚くが、皆一様に、頷いた。一致したらしい。

 一同の頷きを受けて、太郎もまた、了承の

 頷きを返した。そして、静かに語りだした。

「聞いてほしい。そして、彼女を、守ってほしい」

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