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天狗様といっしょ  作者: kano
第二章
104/210

天狗様、潜伏す(19)

「なんで教えたらダメなの? いいじゃない!」

「ダメだダメだ。頭領のみ知る秘事だと何度も言ったろう!」

「治朗くん頭領じゃないでしょ!」

「もうすぐなる予定なんだ! 現頭領から聞かされたのだから俺は問題ないだろうが!」

 藍は、外堀から埋めるべく、早速治朗に例の秘密とやらを問いただしていた……。当然、治朗が話すわけもなく、こうして見慣れたケンカの風景になってしまった。

「やれやれ、僧正坊にも困ったものですね」

「まぁ肝心なとこはわかってないみたいだし、いいんじゃね?」

「しかしなぁ、ここにいる全員が知ってるってこともお嬢は知ってるんだぞ。しばらくは、いつ自分にあの尋問・・の矛先が向くか、わからんぜ?」

 三郎たちは、怒鳴り続けながら辟易して、いつしか息切れし始めているにも関わらずまだ食い下がられている治朗を見て、戦慄を覚えた。

 ちなみに藍を焚き付けた僧正坊は……キッツいゲンコツを喰らい、隅で一人でむくれていた。頭部の痛みを顔に出すまいと堪えているのだ。

 かくれんぼも治朗までが見つかったことで佳境となり、法起坊の呼び掛けによってほぼ全員がスタート地点に集合していた。

 あとは瑠璃と太郎を待つだけだった。

「しかし、見事に二人とも成長したな」

 感慨深げに豊前坊がつぶやくと、隣にいた法起坊も頷いた。

「本当にな。あの天狐の娘さんの成長速度は目覚ましいものがあるな。それに……」

 法起坊は横目で、まだ怒鳴り合っている藍をちらりと見た。豊前坊にも、その意図は伝わったようだ。

「あれほどとは、思っておりませんでした」

「ああ。色々なことが、思わぬ形で露になったな」

「藍は、あのままでは危険です。いずれ自らの意思に関わりなく、周囲を傷つけてしまいかねない」

「ああ。守り刀は治朗だけでは心もとなくなってきたな。僧正坊もいるとはいえ、やはり太郎の力が必要かのぅ」

「太郎は、あの天狐の娘を守り刀に、と考えているのではないですか?」

「……素質としては十分だろうな。いずれは治朗たちに並ぶ力を身につけよう。だが、本人の意思が問題だな」

「あの娘は……藍に何とも複雑な思いを抱いているようですな」

 法起坊と豊前坊は、先のことを思い、どちらともなくため息をついた。側には前鬼と後鬼も控えていたが、二人も似たような面持ちだった。

 と、そこへ新たな人影が加わった。

「おや、みんな揃ってるね」

 太郎と、側には何やら晴れやかな顔をした瑠璃が立っている。

 彼女の俯いた顔しか知らない面々は、何が起こったのか、しばし戸惑った。

「なんだ、太郎も結局見つかったのか」

「まあね」

「へぇ~やるじゃん。瑠璃ちゃんだっけ?」

「え……はい」

 いきなり「ちゃん」付けで呼ぶ清光坊に、瑠璃は眉をひそめた。が、そんな反応には慣れている清光坊は思い切り瑠璃の背中をバシバシ叩いた。

「すげーじゃん! こりゃ油断してたら俺らも越されちゃうんじゃね?」

 その言葉で、瑠璃の目にきらりと光が宿った。そして、まっすぐ藍を見据えて、ずんずん歩み寄ってきて……

「あ、あのる……水咲さん、太郎さん見付けられたんだね。おめで……」

 最後まで言わせず、瑠璃は藍の手をぎゅっと掴んだ。

「『瑠璃』でいいよ……藍……ちゃん」

「え?」

 向こうの方で何か叫ぼうとしている太郎など気にかけず、瑠璃は藍の目をじっと見つめて言った。

「私……あなたと友だちになりたい!」

「!! も、もちろんだよ!」

 藍は目をウルウルさせて瑠璃の手を握り返した。

「嬉しい嬉しい! やっと友だちになれた! なれたよぉ!!」

「ありがとう!」

 満面の笑みを向けあう藍と瑠璃。そして瑠は、ちらりと視線をずらし、視界の端に映る太郎に向けて、にやりと笑って見せた。太郎の中で何かが爆発したのは言うまでもない。

「へぇ~良かったな、二人とも」

「いいコンビになれそうですね」

 三郎や相模坊をはじめ、周囲の面々はほほえましくその光景を見ていた。一人を除いて。

 太郎は三郎たちも描き分けて二人ににじり寄った。藍は思わず身をよじらせていた。

「あ、藍! なんで!? なんで? 僕と手をつなぐときは仕方なさそうなのになんでバカ娘とはそんな嬉しそうに……ねぇなんで!?」

 藍につかみかかる勢いで問いただす太郎だったが、藍は言葉に詰まっていた。

「なんでと言われても……だって今、友だちになれたところだし……」

「と、友だちって……じ、じゃあ君は、僕とバカ娘、どっちがいいの!?」

 出た、と周囲の面々は全員が思った。太郎がパニックを起こすと大抵言い出す言葉だ。そしてだいたいが頓珍漢な言葉が並ぶ。

 藍は驚くでもなく呆れるでもなく、きょとんとした風にその言葉を聞いて、何気なく答えた。

「え、それは……比べ物にならないっていうか……」

「っ!!!」

「ぷ……ぶはははははは!!」

 藍と太郎以外の、全員がはじかれたように笑い出した。止まらなかった。

「み、みんな笑うなんてひどいよ!!」

「わ、悪い悪い。でも……あっははははは!」

「藍! そ、そんな風に思ってたの!? 僕って……僕って……!!」

「諦めろって、”比べ物にならない”んだからさ~」

「そうだぞ、お前じゃ”比べ物にならん”らしいからな」

「う……うるさ~い!!」

 藍は太郎(男)と瑠璃(女で友だち)は比較対象じゃないだろうという意味で言ったのだが……太郎にだけ通じていなかった。そして最悪の意味として捉えられた。

 そのことを、今日振り回された大天狗の面々は知っていたが……太郎には教えないでやろうと、全員一致で心に決めたそうな……

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