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天狗様といっしょ  作者: kano
第二章
102/210

天狗様、潜伏す(18)

「それは……嫌だね。藍が手の届かない遠くへ行ってしまうのは……」

「だったら、お話しくださいますね」

「うん。確かに、よく説明もせずに協力してくれって、虫のいい話だよね。僕なら絶対引き受けない。みんな、人がいいな」

「……本当に」

「この勝負が終わったら、必ず話す。約束しよう」

「はい!」

 太郎と治朗は、互いに強く頷き合った。

 ごまかすような曖昧な笑みでも距離をとろうとするけん制の笑みも含まれない、信頼の込められた太郎の笑みがそこにあった。

 治朗は太郎のそんな笑みを、久々に見た気がしていた。

「しかし、治朗もまた、随分入れ込んだものだね。人間とは関わるまいって断言していた堅物が……変われば変わるもんだ」

「一人の人間が生まれてから、這って、歩いて、あれだけ速く走って、生意気な口を利くようになるまで寄り添ったのです。肩入れしない方が、無理な話でしょう」

「ふぅん……じゃあさ、勝負しようよ」

「は?」

「藍が、治朗と僕、どっちを選ぶのか勝負しよう」

「……は?」

「いいじゃない、それだけ人間くさくなったんだし。たまには俗っぽい賭けをしてみても」

「兄者、ですから……そういった遊びに巻き込むのは……」

 太郎は答えず受け流さず、じっと治朗を見つめた。不敵な笑みではある、が……はぐらかしているのでは、ない。

 治朗は、短くため息をつくと、同じく不敵な笑みを返した。

「……俺が、敗けると思いますか?」

「敗けるつもりは、ないからね」

 交わした笑みが、ゴングとして密かに鳴り響いた。

 と、その時、パタパタと軽い足音が近づいてきた。

「あ、バカ娘が来た」

 太郎はそう苦々し気に呟くと、颯爽と走り去った。

 苦笑する治朗の横を、そうと気付かず水咲瑠璃が走り去っていく。

「俺は俺で、あいつを守ればそれでいい」

 16年――天狗として生きてきた時間からすればほんのわずかな時間だが、思い返せばそれまで感じたことのなかった、経験したことのなかった事ばかりだった。

 治朗は、ようやく気付いた。自分は、”楽しかった”のだと――

「いた! 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」

「え……ぅわっ!!」

 振り向く間もなく、洪水のような衝撃に吹き飛ばされた。治朗ともあろう者が、防御もできずに床に転がり落ちてしまった。

「――っくぅ……」

 九字による光の刃で自身を覆っていた結界は崩れ去り……というか吹き飛ばされ、その姿を術者――藍の前に晒すことになった。

「治朗くん、見つけた!」

 その叫ぶさまは、昔遊んでやった時となんら変わらない。興奮して紅潮した頬。大きく見開いた澄んだ瞳。夢中になって走り回って乱れた髪。何かを成し遂げた時に見せる満面の笑み。すべて変わらないまま、大きく、美しくなった――

 そんな姿を前に、治朗は言わずにはおれなかった。

「藍――」

「治朗くん、あのね聞きたいことが――」

 藍が何か言っているが、遮ってでも、治朗はその言葉を口にした。

「藍、お前というやつは、この――イノシシめ!!!」

「えええぇっ!?」

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