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■「刃中の羽虫」改稿部

※お願い


少しでも上達したいので、なにか思うところがありましたらコメントをお願いします。

批評といった大層なものでなくとも構いません。

「ここのシーンが面白かった」や「ここがつまらなかった」など言ってもらえればありがたいです。

1つでも多くのヒントが欲しい状況なので、

素直で率直なコメントをお待ちしています。よろしくお願いします。

●コメント送信手段

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尚、返事が必要な場合は1の手段か、3の手段でメールアドレスを記入してください。

 腹が減っていた。照り焼きの甘くて美味そうな匂いで目が覚めると手足の自由が利かなくなっていた。背骨を通る神経が切断されたのだと医者の説明があった。剣に貫かれて命が助かっただけでも運がいいと言われた。首から下が自分の物ではなくなっているのに、運がいいものか。

 途絶えたのだ、俺の求めていた人生は。

 朝ご飯を若い看護師が運んできた。無言でテーブルに料理を移してベッドをリクライニングさせる。この女は世話係だ。粗雑な仕事をしない真面目な性格だったが、温度を一切感じなかった。仕事と割り切っている態度だ。

 目を覚ました日から二、三週間が経っただろうか。食事を済ませたあと、されるがままに横たわるこちらを冷たい視線で見下ろしてきた。

「あの銀行強盗の首謀者なんですよね」

 そうだ、と返す。

「銀行を出るとき、猫背のお年寄りを転ばせましたよね」

「ああ、あの邪魔なババアか。結局あいつの証言から計画が崩れたんだよな」

「それ、私のおばあちゃんなんです」

 女が伏し目がちになった。

 ああ、だからか。犯罪者を相手にしているという距離ある態度以外にも彼女にはなにか一つ他の感情が載っているみたいだったのだ。

「一ヶ月に一回楽しみにしてる生け花教室へ行く途中だったんです。あなたに蹴られた拍子に腰の骨を折って、いまも寝たきりです。もう歳だから治りにくくて、生涯歩けないかもしれないって先生が言ってました」

「そりゃ悪かったな」

「悪かった、ですって?」

 彼女の瞳が開かれる。隣のベッド脇に置かれた果物ナイフを手にした。真新しくてよく切れそうな刃がぎらついている。

「一生よ、一生歩けないのよ。おばあちゃんがどれだけ生け花教室を楽しみにしてたと思うの」

「知るわけがないだろ。それに生け花なら家でもできるんじゃないのか」

 切っ先が近づいてくる。俺を殺せる間合いにあった。

 声を荒げる女。

「教室に集まった友達と一緒の方が楽しいに決まってるでしょ! 余生の楽しみを奪う権利が、あなたにあるの!?」

「あー、つまりなんだ。殺すのか? 刺したければ刺せばいい、気の済むまで。見ての通り俺は全身不随だ」

「できないと思ってるんでしょう」

「いいや」

「刺せば私もあなたと同じ犯罪者。目撃者の多いここじゃ、すぐに誰がやったかなんて分かる。だからあなたはできないと思ってるんだわ」

「頬を掻きたい気分だ。俺にどうしろってんだ。構わないからやれって言ってんだ」

「読めたわ。あなた、そうやって自己犠牲になることで罪が償えると思ってるんでしょ。法律が許しても、私はそう簡単には許してやらないんだから」

「今度は頭を掻きたい気分だ」

「馬鹿にしないでよ。私、本気よ」

 俺は溜め息する。

 普通はこうなのだ。一線を越えるか越えないかは隣接していて容易いようで普通は踏みこめない領域。直前でブレーキがかかる。この女が犯罪者になるのは、よっぽどの事態が発生したときだろう。

「お前は一つ勘違いをしてる」

「なによ」

「関係ないんだ、法律もお前も。誰に罪を償おうと過去にしてしまった事実は拭えない」

 彼女は戸惑ったようだった。

「じゃあ犯罪者は一生犯罪者のままだって言うの」

「それは俺を殺してからゆっくり考えろ」

「もったいぶらなくたっていいじゃない」

「脳みそあるのか、お前」

 女がむっとする。

 他にもぎゃーぎゃー喚いていたが聞こえない。そのうちどこかへ行ってしまった。目を閉じて外から届くツクツクボウシに耳を澄ます。

 俺も考えているのだ、おそらくこれからもずっと。少なくとも分かっているのは、償うとか償わないとかそういう問題ではないということ。

 こうやって悩み考え続けるのが正解に最も近い気がした。



<了>


先週に引き続き、今回も2話同時更新でした。

まずは、ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

こんなに長いものを最初から最後まで読んでくれた方がいるかどうか分かりませんが。

なにはともあれ、これにて最終話となりました。

少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。

ジャンルが「推理」となっているので、もしかしたら期待外れに感じた方も多いかと思われます。

この作品で目指したのは「サスペンス」であり、正確に言えば推理物ではありません。

しかし「サスペンス」というジャンルはないようなので、一番近い「推理」への投稿としました。

純粋な推理を期待した方には申し訳ないです。

ただし、広い範囲の方々へ楽しんでもらえるように意識して書きました。

作中で読者の方がハラハラドキドキの不安に駆られたなら、作品として大成功と言えます。

そして読後に心の奥へなにかが残ったなら、それもまた成功だと言えます。

いい意味でも悪い意味でも、もしなにか僕へ訴えたいことがあれば、ぜひぜひ感想・意見・評価などコメントをお寄せください。

一言でも大歓迎です。

当ページの前書き部分にもある通り、コメントする手段は問いません。

矢文とかでなければ……。

返事が必要な場合は、こちらからコンタクトをとれる方法でお願いします。


次作をこちらへ投稿するかどうかは、いまのところ予定はありません。

しかし、機会があれば掲載させてもらおうかと思います。

そのときは、よろしくお願いします。

それでは、また。


<とびる>

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