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■比佐香葉子の日記

※お願い


少しでも上達したいので、なにか思うところがありましたらコメントをお願いします。

批評といった大層なものでなくとも構いません。

「ここのシーンが面白かった」や「ここがつまらなかった」など言ってもらえればありがたいです。

1つでも多くのヒントが欲しい状況なので、

素直で率直なコメントをお待ちしています。よろしくお願いします。

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3:メールフォーム

  http://www.formzu.net/fgen.ex?ID=P47878715

●初めての模試で麗葉がトップの成績だった。私の教育方法が正しかったと証明された。まだ気は緩められない。あいつの子供には負けたくない。

●毎度、我が子ながら驚かせられる。教えたことは忘れない。理解力も早い。明日は平方根と二次関数を教えよう。……麗葉が羨ましい。

●小学校に入学した。名門中の名門だ。校内にはライバルになりそうな子供がいなかった。あいつの子供もいない。私の麗葉には誰も敵わない。

●小学校中学年にもなったのに麗葉の噛み癖が治らない。枕や布団の端を囓りながら寝ている。勉強の最中、消しゴムや鉛筆も噛んでしまう。些細なこと。期待以上に結果を出してくれる彼女を私は愛している。

●至って順調。

●十歳の天才少女としてテレビ番組に出演する。プロデューサーに年に一回はメインでやりたいと持ちかけられた。近所で有名になった。凡人が口を利けるのはいまのうちだ。あいつの子供も凡人、誰も名前を知らない。勝ちを確信する。

●麗葉はもっとできる子だ。勉強量を多くしよう。誰もが足元にも及ばない人間に育ててあげよう。

●物理を教えているとき、唐突に噛みついてきた。歯形がくっきり残って血が滲んだ。叩くとおとなしく勉強を再開した。彼女がなにを考えているのか理解に苦しむ。

●私のケアレスミスを麗葉に指摘された。ときたま見せる彼女の笑顔が恐い。

●あいつから電話があった。近くに引っ越してきたらしい。会社経営者である夫の自慢話を嫌味なほど聞かされた。私は子供について遠回しにけなしてあげた。表面上は気にしていないようで、言葉の端々に悔しさがみなぎっていた。凡人。確かいまは上戸という姓だっけ。上戸? どこのどなたですか? 笑ってしまう。

●有名私立大学の入試問題をすらすら解く麗葉を見ると嬉しさと恐怖が相まった気分になる。私が教えられることがなくなってきた。明日はなにを教えよう。

●麗葉が寝る時間以降、私も久しぶりに参考書を開いた。結構忘れていた。

●麗葉に間違いを指摘される。私のミスは、きっと寝不足のせいだ。

●昨夜、私が解けなかった問題を目を離した隙に麗葉がやっていた。全問正解だった。

●最近、見下されている気がする。目が恐い。

●貪欲に学習を求めてくる。私にはなにを教えていいのか分からない。適当な理由をつけて休日にした。

●あの子の顔を見たくない。忙しさを装って部屋にこもる。

●今日もこもる。

●しつこいので、あとは自分で学ぶように言った。

●入院させられた。

●久しぶりの日記。あの日、食事の準備をする私を見て麗葉がこんなことを言った。

「ママは落ちこぼれなの? 知らないおばさんが言ってたよ。あなたのママは私に負けた落ちこぼれなのよ、て。ねぇ、本当? ママって負け犬なんだ」

 蔑みの目だった。溜まってた物が爆発した。彼女を何度も叩いてしまった。気がつくと病院だった。手のひらが耳に当たって麗葉の鼓膜は破けてしまったらしい。医師に再生すると聞いて安心した。

●麗葉がお見舞いに来てくれた。意外だった。あんなに見下しているように見えた瞳が恐くなくなっていた。

●私の髪を櫛でといてくれた。くすぐったくて気持ち良かった。麗葉は私のように綺麗な髪にしたいと言った。ちょっと難しいかもしれない。あの子は癖っ毛だ。私も彼女に櫛をかけてあげた。

●私はなにをしていたのだろう、とふと思った。成長した麗葉は誰かを無能と罵って生きていく人生をするに決まっている。私がそういうふうに育てたのだ。一番嫌いだったあの女と同じに育ってしまう。そんなのは一度も望んでいない。私はなにをしていたのだろう。

●ずっと考えていた結論が出た。私は殺されるべきだと思う。死であの子に償いたい。麗葉に殺されたい。しかし素直に殺してくれるだろうか。なにか方法を探そう。

●病院を抜け出してヤクザの親分さんに会いにいった。財産の半分を寄付して何度もお願いした。事情を聞いてくれた。隠し持つのにいい小さな銃を頂いた。オモチャとしてプレゼントするには最適だった。明日、麗葉に殺されようと思う。

●失敗した。トリガーが彼女の手には重すぎた。親分さんに訊くとそういう銃だという。他の銃を入手するにはしばらくかかるらしい。そんなには待てない。このままだと私は罪の意識で狂ってしまう。握力を鍛えさせよう。

●お見舞いに来ると彼女はずっと銃を離さなかった。ずっと遊んでいる。考えてみるとオモチャらしいオモチャを与えたのは初めてだった。早く引き金を引けるといい。

●引き金が動きそうだった。そろそろかもしれない。

●今日はもう少しで撃てそうだった。待ち遠しい。

●明日には殺されそうだ。彼女はなにも知らずに握力アップを喜んでいた。私も嬉しい。

●失敗。あと一歩が足らない。もう我慢できない。明日も駄目なら手を貸そう。ちょうど小学校を卒業する明日に殺されよう。最後まで勝手なママでごめんなさい。私とは別の、いい人生を送ってくれることを願う。さようなら、私の麗葉。警察にだけは捕まらないでほしい。



次週の更新分で最終話となります。

お楽しみに(?)



次話更新予定は来週頃です。


Next:「■犯罪者は世に戻る」&「■「刃中の羽虫」改稿部」

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