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俺がここで  作者: ゆな
1/2

その1


「それじゃ、るるるーつ!始めまーす。5秒前、5、4、」

残りの3、2、1は指のみでのカウントだ。


「リスナーの皆さん、こんばんはー!LOTUSでーす!るるるーつ!はじまるよー!」

5人で息を合わせて、番組名を言う。この瞬間、少し前の息を一緒に吸う音が重なる。

LOTUSは、五人の男性で構成されるアイドルユニットである。

テレビではバラエティからドラマ、朝の帯番組のレギュラーまで幅広く活躍し、映画館では現在メンバーの木場旭が出演する恋愛映画が公開されている。加えてこれまで発売されたCDシングルアルバムは、全てオリコンチャート初登場一位をずっと記録し続けている。

「瀬川雪です。」

「木場旭でーす!」

「片倉翔太です。」

「大宮優雅です。」

「林咲人だよー。」

るるるーつ!はデビュー当時から五人全員が揃って出るラジオ番組で、リスナーからメールや葉書をもらい、それについて話す一般的な番組形式を取っている。

「いやいや、雪!何してんねん!チョコ食うなよ!」

「相変わらずマイペースすぎるよねー、うちのエース。」

「あ、今、牛乳飲みたい。」

「は!?知らんし。」

翔太が関西弁でツッコミをして、のんびりした口調で咲人がそれに続く。

「仕事だから!ちゃんとせえよ!」

「はい、ではさっそくお便りが届いてまーす!」

「旭、流れガン無視かよ…。自由人ばっかりこのグループ、ほんまに嫌。」

「あははは」

「優雅、番組始まってから一言も話してないからねー。笑ってるだけじゃん。」

「ほんまに、テレビと違うからな!喋らんと、おるって分からんからな!」

「大阪府、ぽむりんさんからいただきましたー!」

「いや、だから、旭。あー、もう、はい!じゃ、旭よろしく!」

「LOTUSの皆さん、こんばんは!」

お便りからのこんばんは!にメンバーそれぞれの声が重なる。

「皆さんは今年でデビュー5周年を迎えますね。5周年という記念の年に三大ドームツアー決定おめでとうございます!」

「ありがとうございます!」

「そして木場くん、「春晴れ日和」の公開、おめでとうございます。」

「ありがとー!」

「5周年を迎える皆さんに質問があります。デビュー当時と変わったなと思うことはありますか?反対に変わらないなーと思うことはありますか?自分のことでも、メンバーのことでもいいです。最後に、雪くんが大好きです♡」

「ぽむりんさん、ありがとうね。」

「番組開始5秒で、チョコ食っとったやつのどこがええんや、ぽむりんさん。」

「んー、何かある?」

咲人のその問いかけの後にメンバーそれぞれが考え込む。

「俺はね変わらずしてることあるよ、エゴサーチ。」

「あははは」

「雪、毎回ぶっ込みすぎやって!あほか!」

「Dioでフルネームで検索してるよね、ゆっくん。」

Dioは、広く一般に広がるSNSアプリのことである。

「まずグループ名かな、あとは自分の名前。あとはゆっくん、でも検索してる。あとは出てるドラマの名称とか。」

「あれさ、批判とか見ると落ち込むやん…。俺は見ないようにしてる!」

「まあ、新曲出した時とか、雑誌の発売日は見るかも。あ、マネージャーさん怒ってるよー。」

「ファンレターはさ、ファンの方が俺らのこと嬉しくさせるようなことばっかり書いてくれるでしょ。だけど逆にDioはさ、一般の人が俺らについてどう思うか知れるしさ。」

「いや、浜ちゃん(マネージャー)怒ってるって言ってるやん。なんで続けるん。」

「あははは」

「優雅、何回も言わせるなよ!笑うだけで済ますな!喋らんかい!」

「ゆっくんは一般の人に何言われてもへっちゃらな鋼メンタルだからね。」

「俺はデビュー当時から、毎週歯のホワイトニング行ってる。」

咲人は穏やかな語り口調でそう続けた。それをきっかけに各々が自分のことを話し出す。

「俺は先輩とかの舞台の見学よく行ってるねん。」

「翔太っち、Dioで前のクールのドラマ、棒演技って言われたよね。」

「うっさいわ!凹むからやめぇ!旭、可愛い顔して毒吐くなって…。」

「微妙に標準語のイントネーションじゃなかったからな。」

「優雅、今日のラジオの一言目が、俺へのダメ出しってひどくない?…標準語難しいねん。」

いったんCM入ります、とスタッフから出され、それに気づいたメンバーが頷く。

「それではここでCMです。」

雪が言って、切り替わるのを待って、メンバー全員が息を吐く。

「デビュー当時のこと聞かれるとさ、やっぱり思い出すのはデビュー会見だけどさ。全ての日々がデビューに繋がってたんだと今思うと先輩の後ろで踊ってた日々が糧になってるって思うよね。」

毎日それぞれが必死だった、先輩の後ろで自分をどう売り込むのか。200人を越す研修生の中で、自分というキャラをどう確立するのか。

マイクを持って歌いたい。ソロのパートをもらいたい。もっと前で踊りたい。上手く喋れるようになりたい。舞台で役を勝ち取りたい。

それぞれがアイドルを目指すきっかけは多様であるし、最初は軽い気持ちだったかもしれない。


CMあけます!とスタッフから指示が出る。

「あいよー。」

雪が返事をする。あと番組終了までは8分あるな、短いなと頭をよぎった。


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