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出席番号九番 梶山蓮

 昨日、なんらかの誤作動で、小説が更新できなくなっていました(割とマジで)。

 なので、一日遅れて投稿です。ごめんなさい。

 朝方三時。

 学校内に人気はないも等しかった。もう何人も人が死んでしまった。そばには、康広の死体。

 たった一人、親友と呼べる親友が死んでしまったのには、訳がある。


 

 俺が大田に神楽の死を告げた数時間後。

 俺が隠れていた体育館の倉庫に、急に康広が飛び込んできたのだ。

 腹を押さえて。


「はぁ!? お前、康広、一体どうした? その傷は?」

 俺は、隠れていることも忘れて叫んだ。親友が傷を抱えて飛び込んできたのだ、誰だって驚くに決まってる。


「……すぐそこで、先生に撃たれて……松原は……死んだよ……」

「っは?」

 

 素っ頓狂な声を上げる。

 松原って、六年三組にはただ一人しかいない。

 松原七恵……?

「嘘だろ、何で七恵がっ!」

「悔んだってしょうがないよ。……松原は、僕を庇って死んだ。僕を庇って」

 俺は、歯ぎしりをした。

 そういえば、そうだ。松原は、そういう奴だった。

 俺が恋した、大人しい少女は、そういう奴だった。


 ◆◇


「いいか、お前は、絶対に人をいじめるなんてことをしてはいけない。いじめたら、それ相応の返しが、自分に返ってくると思え」

「ふいふい」


 去年の十二月。

 こたつに入ってゲームをしている俺に向かって、親父はそんな言葉を言い放った。大事な戦闘中に話しかけてきた親父は、最早(もはや)邪魔者以外の何物でもなかった。早く終わらせてくれ。そんな思いも空しく、親父はまた「いじめをするな」と何度も同じことを繰り返した。

 親父は、真面目で正義感の強い人だ。会社内のトラブルは何事も首を突っ込み、悪い方を見極め、謝罪させる。その精神が、会社内で評判が良いのだけれど、俺の評判は最悪だ。ホームドラマとかでよく、正義感の強い親父と息子が遊ぶ、なんてシーンがあるけど、あれは絶対梶山家で起こりそうな予感がしない。全くもって。


「何だその生返事は。ゲームを一旦閉じろ。俺は今、真面目な話をしているんだぞ」


 そして、自分の信念を、人に押しつけようとしている。ウザい以外の何物でもないのに、親父は気にも留めず、言いまくっている。

 一応、親父の言っていることは正論なのだ。正論だから、余計に悔しい。反論の余地がないのだ。

「……ちっ」

「舌打ちをするな。皆から怖がられるぞ」

 怖がられて、何が悪い。元々、目が細いから睨まれてるって思われてるんだぞ。


「……はぁ、お前って、そんなことばっかりしてると、馬鹿になるぞ? そんなにゲームを優先させたいなら、簡潔に済ませるとな、いじめは絶対するんじゃないぞ、父さんもな、いじめられるのが怖くって、いじめをしていた。そして、いじめていた子は、不登校になったこともあったんだ。申しわけないと言ったらなかった」

 また始まった。

 馬鹿みたいだ。何で親父の昔話を何回も聞かなければならないんだ。

「本当に情けないと思ったよ。いじめられていた子は、不登校になったんだ。父さんはな、その子の親に何度も土下座を要求された。そうでもしないと、その子の恨みは晴れなかったから。藤木……いや、その子は、それから社会復帰することが困難になった。人間不信に陥っていたんだ。だから、その子のことを、父さん達は一生罪を背負っていかなければならなかった。

 蓮には、そんな風になってほしくないんだ。情けない罪を、背負ってほしくない。蓮に、正義を守ってほしい。それだけなんだ」


 始まったよ。本当に、馬鹿みたいで。

 子供には罪を着せたくないって? そんなの知ってる。馬鹿らしい。それをいちいち掘り返す親父が、馬鹿らしい。

 早くゲームを済ませなければ。あぁ、ミスった。畜生、ふざけんな親父。俺が一生懸命頑張ってるのに。

 あぁ今のでどんどんミスが連発した。ふざけんなよ。マジ。


 俺は、このときまで、悪態をついていた。

 そう、このときまでは。


 ◆◇


「全く、親父、パシリにさせることはないだろ」

 五年の冬休み。

 年が明けて、初詣に行った。おみくじの結果が「大凶」だったのも、更にその後親父にパシリにされたことが気に食わない。

「ふざけんなよ、ネギ買ってこいとか、てめぇが買ってこいってぇの」

 悪態をついて、スーパーを出る。「エコが重要だからな」と言って手渡されたバッグには、ネギが一本。

「マジ意味わかんねぇ」

 俺はこっそり買ってきた菓子パンをむさぼる。おつりは自分で自由に使って良いというから、菓子パンを買っておいた。


「あ、あいつ……」

 スーパーを出てすぐの交差点で、見知った顔を見付けた。

 松原七恵。

 天海実月、佐藤香奈枝と共に「ふわふわ三人組」というアホみたいなグループを作っている。その中でも松原は比較的大人しめで、大人っぽい雰囲気がある。

 今日も髪をアメピンで留めていて、白いコートの下には黒いタイツが覗いている。

 赤信号になる。

 車が飛び交うように移動している。ぶぉぉぉ、と音がして、風が自分の前になびいてくる。

「うっぜ」

 俺は寒々しい風にため息をつきながら、赤信号が変わるのを待った。

「……あ、梶山さん」

「おぅ」

 一応同じクラスだから、挨拶はしておく。

 俺はすれ違い、そして歩き出した。


「おい、お前、どこ見てやがんだよ!」


 どすの利いた低い声が、後ろから響いた。

「ひぃっ、ご、ごめんなさい! あ、ごめんなさい!」

「……うるせぇな、謝るのは一回だろうが」

 舌打ちをされる、松原。

「気をつけろ」

 今度は、がっ、と音がする。

 振り向くと、松原が前のめりになって倒れる音だった。

 下を見ると、低い声の持ち主、耳にピアスの穴を大量に付けた男性が松原の足に自分の足を引っ掛けていた。

「ひっ」



 ごんっ、と鈍い音がする。

 俺は思わず、「松原!?」としゃがみ込む。

 松原は数秒地面に突っ伏していたが、やがてすぐ立ち上がり、鼻を押さえて立ち上がった。


「大丈夫だよ。ごめんね、ありがとう梶山さん」

 

 鼻を両手で押さえている。涙が、どくどくとあふれ出ている松原を見て、俺も泣きそうになった。

 

 何が大丈夫だ。ありがとうでもないだろう。今は、ピアスの男性に謝れと謝罪を要求するべきだろう。

「……何言ってんだ。あいつが悪いんだろ? ちょっと、注意してくるわ」

 俺は松原の腕を引き、ずかずかと歩く無礼なピアス男の肩を叩く。

 全く、松原は人をもう少し困らせても良いのに。

 いつもそうだ、と俺は気付いた。

 給食の列も、いっつも譲っていて、結局松原はいつも最後で。

 ドッジボールのボールが顔面にぶち当たっても、「大丈夫大丈夫」と押さえながら言っていたのに。あの時は、結構な重症だったくせに。

「ほ、本当に良いってば」

 松原の戸惑っている声が後ろから聞こえる。人を困らせたくない、そんな人なのだ。松原は。だけど、こんなに痛々しい様子をまざまざと見せつけられたら、誰だって助けたいと思うのに。


「おいちょっと、あんた、今、松原七恵さんにぶつかって、転ばせて、何も謝りませんでしたよね? おかしいですよね?」

「は? 何おめぇ。いい度胸してるな」



 その一言が、正義への目覚めだった。

「おかしいですよねって聞いてるんです。人を転ばしておいて、謝らないだなんて、人としてどうかと思うんですけど」

 尚も俺は言い続ける。

 だって、おかしいじゃないか。

 ただぶつかっただけなのに、涙が出るほど痛い思いをさせるだなんて、人間としてどうだ。

「黙れよ、マジてめぇ」

 ピアスの男性の目がつり上がっている。怒っているのだろう。

「……黙って僕の話を聞いてくれませんか?」

 何とかふりしぼった声。その言葉に、ピアスの男は「あぁん!?」とキレ始めた。周りが振り返る。「お気の毒に」という顔をしている人だっている。気の毒がなんぼだ。あっちが悪いと言うのに、その顔は腹立つ。

「おめぇ、こいつと全然関係ないだろうが」

「関係ありますよ。クラスメートです。クラスメートが貴方のせいで転んだから、助けようと思ったんです」

 俺は、必死にピアスの男に抵抗する。何だか分からないが、無性に寒気がする。冬の寒さのせいなのか、それとも、これほど怖い事態に怯えているだけなのか。


「へんっ、いいや、まぁ」

 ピアスの男は、俺を散々睨みつけた挙句、何でもないというように去っていった。

 俺はしばらくきょとんとしていたが、ピアスの男が去っていった事実を認識すると、しゅるしゅると勢いが抜けていった。


「は、はぁ~」

 歩道だったからよかった。へなへなと座り込んでしまったら、松原が途端に噴き出す。

「ごめんね、ありがとう梶山さん」

 胸に手を当てて頭を下げる松原。「えっ、いいって」と俺は両手を振る。

「だって、本当に、私なんかの為に……」

「その、私なんかっていうの、やめろよ。助けたことが無意味に思えてくるから」

 俺が言うと、松原は「え、あ、ごめん」としゅるしゅる縮んでいった。


「でも、本当にありがとう。そういうところ、憧れるな」


 きゅんっ。


 胸が締め付けられるような、雑巾で絞られるような、そんな感覚。

 そんな感覚が、俺の心に生まれる。

 あぁ、これはきっと。


 恋、というのだ。


 

 元々、俺は佐藤香奈枝が好きだった。

 だが、佐藤に告白は出来ぬまま終わってしまった。佐藤の好きな人の話題が、どこかで上ってきたからだ。俺は、その恋を諦めた。

 佐藤の友達、松原は、身長が低い割に、大人っぽくて、清潔感のある少女だった。そして、人を優先させる、他者中心が松原のイメージにぴったりだったのだ。

 だから……、というのもあるかもしれない。


 ◆◇


「松原は、僕をかばった。……最後まで、本当に優しかった」

「……そんな」

 俺は、何も言いだせず、ただ康広の腹を見つめていた。

 康広の白く細い手には、血がつたっている。赤色と言うよりかは、朱色と言った方が正解だろう。体育館倉庫の薄暗い照明でも、康広の血の色が分かる。それが、少しだけ怖かった。


「僕が、隠れていた所に、先生がひょっこり顔を出した。……息が止まりそうになるほど、怖かった。死んじゃうんだよね、死んじゃうんだよね……って、僕、すっげぇ怖かった」

 先生は、口角を吊り上げて、引き金を引こうとしていたのだという。悪魔のような笑みを浮かべて。

「そのとき、どっから現れたのか分かんなかったけど、松原が僕の目の前に走ってきたんだ。……先生は……松原を見たとき……拳銃を突きつけた。そして、…………撃った。……松原を……う、撃ったんだ」


 涙が、一斉にあふれ出た。

 思い出すのも辛いだろう。人が死んだのを見たことは、俺の想像以上に辛かったことだろう。だけど、康広は説明してくれた。状況を事細かに、説明しなくてもよかったのに、説明した。

 あぁ、ごめんな。本当にごめんな。自分は悪くはないのに、謝りたかった。

 康広は、泣きだしていた。腹を押さえていない方の手で、顔を覆って、声を上げて泣いた。

「痛いよ……でも、それよりも、松原はもっと辛かった……。僕なんかが、先生の目の前に現れたから、松原は、死んだんだよ……」

 康広は、止めどなく溢れる涙を拭うことなく、合間合間に呟いた。

 俺も、涙を拭うことは出来なかった。頬につたう涙が、やがては口の中に入る。しょっぱい。そんな感情が、下らない。松原はもっと辛い目に遭ったというのに、そんなことを思ってしまう資格なんてない。

 好きな人が死んだというのに、全然実感がわかなかった。もっと何か、言いたい感情があったはずなのに、それが言葉に出来ない。


「麗羅さんも死んだし、松原も死んじゃった……。もう、もう、大切な人が死んだり、目の前で人が死ぬ姿を見たくないんだよ……。もう、何もかも嫌だよ……」


 しゃがみ込んで、震える康広。俺は、何も言えず、しゃがみ込んだ。

「……僕さ、いじめられてただろ? 転校したての頃」

「あ、あぁ……」

 いきなりどうしたと言うのだ。そんなことを昔のことを話したって、意味がないと言うのに。今は、クラスメートの死を哀しみ、生き延びなければならないというのに。


「あの時、大丈夫って、手を差し伸べてくれたのが、麗羅さんだったんだ。上級生にいじめられていて、とっても悔しかったんだ。殴られて蹴られて。物のように扱われるのが、当たり前って感じになってたけど、本当は辛かった。死にたいと思ってた。

 ……けれども、「大丈夫?」って、尋ねてくれた存在がいたんだ。それが、栗沢麗羅さんだった……」


 なるほど。

 事あるごとに、栗沢を気にかけていたのは、栗沢の存在が気になっていたからか。


 それよりも、そんな事実があったなんて、思いもしなかったな。

 康広が五年の終わりまでいじめられていたのは、知っていた。それを止めたのも俺だ。

 いじめが行われていたのも知っていたから。俺が正義感に目覚めたときに、康広を殴っていた連中に「やめろよ!」と馬鹿デカイ声で注意して、逆に康広をいじめようとした連中に殴りかかったのも、俺だ。



「麗羅さんが死んだのも悲しかったし、……何より、蓮だって、松原が死んだのは、悲しいだろ?」

「…………」


 何だろう。今、康広が、康広じゃなかったように映ったんだけど。

 康広は、いつも人目を気にしている臆病な男子だった。そこが俺は好きなんだけど。良く言えば空気が読める、悪く言えば臆病だ。

 それなのに、今は、臆病ではない。何かを睨みつけるような表情をしている。神楽みたいな……いや、春日と言った方が良いかもしれない。それほど、違って見えた。何故だか、鳥肌が立つ。

「……あぁ、俺、悲しかったよ。……それよりかは、今生きるしかないだろ?」

「へぇ。意外だな、蓮。正義感の強い蓮なら、きっと「天国で精いっぱい生きてくれることを祈る」とか良いそうだけどな」

 ふぅん。

 俺は、頷きそうになるのを必死で止める。じゃなくて、そうじゃないだろ。お前、おかしいよ。そんなことを聞くような奴じゃなかっただろ。


「じゃなくて、お前、そんなこと聞かないだろ? どうしたんだよ」

「は? どうしたんだよって、馬鹿なの? 蓮」


 俺が心底おかしいと言うように聞くと、逆に康広からも「心底おかしい」と言うような返事が返ってきた。

「こんな状況下でどうしたんだよ、と? そりゃどうかするだろ。好きな人が死んで、目の前で松原が死んで。そんな状況で正常に判断できる人間がおかしいって。つまり先生はおかしいの。そういうことなの。

 なのに、何でそんな状況で「どうしたんだよ? いつもと違うぞ」だなんて。しょうがないでしょうが。人殺しに追われて、どれだけ周りに配慮しても、銃で殺されてしまう。そんな状況下でいつもと同じでいろだなんて、そっちが無理ですって話でしょ?」

「それは、お前が弱いだけじゃないのか?」

「はぁ!? 何言ってんだよ、蓮! お前、そんなこと言うような奴だったのか?」

 俺の反論に、康広は食いついてきた。

「僕が弱い? 何言ってるんだよ。違うよ、蓮が強すぎるだけなんだ。だって、そうだろう? 好きな人が死んで、自分の目の前で親友の好きな人が死んだ……。そんなの、我慢できるわけがないだろう? 何で蓮は平気なんだよ。逆にそっちがおかしいよ。何で、好きな人が死んだって連絡を受けても……、しばらく放心状態だっただけで、それでさっぱり、もういいかなんて顔しちゃってるの? おかしいのは、蓮、君の方だよ。……さては、蓮、先生とグルなのか?」

「お前こそ何言ってるんだよ、康広。俺があんなクレイジーな先生に付き合うとでも? 俺が親友の目の前で人を殺すことを承知するはずがないだろ!? おまけに、親友の腹を撃つだなんて頷くことも出来ない。見ろ、矛盾だらけだ」

 何がグルだ。こんな狂ったゲーム、提案すら出来ないよ。人を殺すことを、正義のヒーローを目指す俺が、するわけがないだろう。馬鹿だろうか。


「……そうだよな、お前はそう言う奴だ」


 微かにこぼれた、と言うような、康広の声。

「康広……」

 やっと分かってくれたか。俺がグルじゃないってこと。俺をあんなクレイジー野郎と一緒にしないでくれ。



「もう、お前とは絶交だ」



「はっ?」

 何でだよ。唐突すぎるだろうがよ。ふざけんな。

「僕と蓮が生き残っても、もう僕らは友達じゃない。良いね?」

「何がだよ! 良いわけねぇだろ? 何考えてんだよ?」

 俺は目を剥いて反論する。せっかく出来た親友が、勝手にグルだと決めつけて、勝手に絶交宣言をした。


 ふざけんな、マジで。



「……いいわ、もう、じゃあな、蓮」



 そう言って、康広は体育館倉庫から、体育館へ足を踏み出した、


 瞬間。


 康広が倒れた。


「はっ?」


 今、今さっきまで、あんなに泣き叫んでいた康弘は、どこへ行った。

 うつろな目をしていた康弘は……。一体、どこへ行った?



 康広が倒れた先には、銃を持った先生がいた。


 そして、俺を見付けると、ニヤリと笑う。



「次は、梶山蓮、貴方の番ですね」



 瞬間、俺の体に、激痛が走った。

「いっ!?」

 足を撃たれた。赤黒い血が滴り落ちている。これじゃ、逃げようにも逃げられない。

「ちくしょう!」


 俺が叫ぶと、先生はツカツカと歩み寄ってきた。


「おやおや、何でそんな苦しみに満たされた表情をしているのですか。もっと、こう、親友を失った悲しみと言うのが、君にはないのですか?」


「それ、お前なんかには一度だって言われたくない一言だ。人殺しに道徳的なことを語ってもらう筋合いなんてない」

 俺は、精いっぱい先生を睨みつける。狂ってしまった、もう最早手遅れだ。

「人殺しが、と、貴方はそう仰る。では、その人殺しのもとで、貴方は授業を行っていたのですね。まさか、これ以外に僕が人を殺したことがあるとも知らずに」


「は?」


 そんな。先生は、人を殺したことがまだあるというのか。もうこれだけにしてくれよ。不謹慎だが、そんなことを考えてしまった。

「だから、と言ってはなんですが、少々人殺しに慣れてしまってましてね。別に、言うつもりはないですよ。もし捕まった時に、罪が重たくなることは避けたいですからね。まぁ、でも死刑でしょうか? たとえもし、捕まったら、の話ですがね」

 俺は、口を真一文字に結ぶ。

 この話が終わったら、俺は恐らく、人殺しの先生に殺される。

 その覚悟だ。



「では、死んでもらいましょうかね? 梶山蓮さん……?」



 俺はその言葉で、上を向き、目を見開いた。


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