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第7話「早速、行動開始!」

オベール様ご夫妻が従士長のカルメン・コンタドールとやりとりをしているのを見て……

俺は思いついた。


「オベール様、イザベル様。俺からひとつ提案があるのですが」


「おお、ケン、何だ? 言ってみてくれ」


「本工事前に小規模な岩壁を造る小テストですが……」


「おお、それをどうするのだ、ケン」

「教えてケン」


「このオベール男爵家本拠城館の、城壁の新築工事を兼ねる……というのはいかがですか?」


「おお、それはナイスアイディアだ! 街壁建設の事前テストを兼ねた我が城の城壁新築工事か!」

「ええ! 本当に良い考えだわ。でも私達は嬉しいけれど、そこまでやって貰って良いのかしら?」


「ええ、構いません。それくらいサービスしますよ。但し、宰相の俺が大っぴらに魔法を使うと、またややこしくなるのでそちらもカルメンの協力が必要です」


対して、オベール様ご夫妻は、


「分かった。カルメンと相談して万事上手くやってくれ」

「お願いね♡」


ふたりの愛息で、俺の義弟フィリップも、


「兄上、宜しくお願い致します」


という事で、オベール男爵家一家3人は大広間を退室。

俺達ユウキ家も、カルメンを連れて宿泊している城館客室の応接室へ移動。


早速カルメンと打合せ。

全体の話が見えていないカルメンからは、質問が来る。


「閣下と奥様はいろいろと含みのある言い方をされていたが……宰相には、改めてご説明をお願いしたい」


「了解。カルメンの言う事は尤もだ。先ほどの話と重複するが、説明しよう」


俺は、真剣な表情のカルメンへ話し始める。


そもそもは、ボヌール村の防護壁の新築工事に端を発している事。

俺の魔法を使うと費用と時間が大幅に節約出来る事。

ついでにエモシオンの街壁もという話から俺がテストも兼ねて小工事を提案し、城館の壁の工事をする事になった事。

レイモン様には俺の夢魔法で会い、了解を得ている事。


「という事で、今回俺が地の魔法を使うのだが、後々の事がある。なので魔法を行使するのはカルメン、お前が連れて来た別人、架空の存在の『とある冒険者の魔法使い』という事にする」


「成る程、宰相がおおっぴらに『地の上位魔法』を使えば、我もウチにもと、建設のオーダーが殺到するという事ですか?」


「そういう事。王族や上級貴族の要請なら、断ると(かど)が立つ状況になる。レイモン様、オベール様にも波及するし、避けたい。工事終了後、『とある冒険者の魔法使い』は行先が不明となれば、彼らも諦めるだろうから」


「まあ、そうでしょうね。だが……ご夫妻のおふたりがおっしゃっていた『他の案件』とは、一体何なのですか?」


「ああ、実は……」


俺は公衆浴場――銭湯建設の件をひと通り説明した。


「おお! 公衆浴場……宰相の元居た世界では『銭湯』というのですか! それも閣下と奥様だけでなく、王国宰相のレイモン様までがとても『お気に入り』になったと!」


「うん、レイモン様は王都のキングスレー商会まで巻き込んで事業化すると、はっきりおっしゃっていたよ」


「おお! 王都の大手商会を? 話が相当大きくなりそうですね。それでそちらも私へ協力をというのは?」


「ああ、カルメンは知っていると思うが……王都の公衆浴場は賭博、売春等が横行する犯罪の温床になっていると、レイモン様はおっしゃっていた」


「確かに! 私も入浴は大好きですが、悪評高い王都の公衆浴場へは一度も行きませんでした。それに引き換え、宰相が知るという『銭湯』はよほど素晴らしいのですね」


「ああ! これから造る銭湯は、皆が『心身の憩いの場』にすると思うよ」


「おお!『心身の憩いの場』ですか! す、素晴らしい!」


「うん、そうする為に、安全安心、そして清潔を徹底する。店員を兼ねた真面目で屈強な警備員を雇おうと思うんだ。男女ともにね」


「納得です! そうしないと無秩序な王都の公衆浴場のようになってしまいますね」


「ああ、その店員募集にカルメンの力を借りたい。お前の知り合いの冒険者仲間を中心に当たりたい。特に適任と思える女子の冒険者を」


「おお! 成る程!」


現在カルメンの『紹介』で、エモシオンの従士には元冒険者が多い。

彼ら彼女達は真面目で真摯だ。

当然、全員が手練れであるから、銭湯の店員兼警備員には適任だと考えている。

それに以前、カルメンは女子だけのクランを率いていた事もある。

女子風呂の警備員は特に真面目で仕事熱心な人物を選びたいから。


「分かりました。心当たりはあります」


「心当たり?」


「はい! 実はエモシオンへ従士として転職した冒険者達を羨ましがっている者が、王都には大勢居ます。改めて宰相とご相談致しましょう!」


「ありがとう! 助かるよ、まあ、論より証拠だから、実際に銭湯自体を見せよう。今夜、カルメンを俺の夢へ呼ぶから」


「え? 宰相の夢へ?」


と、ここでカルメンと仲良しのサキが。


「うん! カルメンさん! 私達、昨夜は旦那様の夢に意識をつないで全員で情報を共有したの。その方が話が早いから!」


「な、成る程です。『銭湯』を実際に見せて頂いた方が、確かに話は早い」


「ああ、論より証拠。今夜、夢の中で逢おう」


「おお、今夜、夢の中で逢おうなんて……何か少女のように胸がときめきます」


「はは、そうか」


「はい! 宰相が夢を使い、各首脳と会談を持っていたとは聞いていましたが、そのような使い方も出来るのですね」


そしてジョアンナも追随。


「カルメンさん、すっごいですよ、銭湯! 女子や子供も安心して行けるみたいだから、ジョアンナも楽しみで~す!」


という元気印のふたりから熱い発言も出て、カルメンも顔を輝かせる。


「そうですか! 宰相! 私、頑張ります! 何でも言いつけてください!」


「じゃあ、今夜は旦那様の夢に全員集合だねっ!」


と、笑顔でミシェルが言えば、リゼットもにっこり。


「では、現実のリアルな話に戻します。旦那様の意向を踏まえ、カルメンさんを交えて、城壁の新築工事の段取りをサクサクと進めましょう!」


「賛成!」


リゼットの言葉を受け、ソフィも拳を突き上げる。

城壁、街壁が一新され、両親と弟が大いに喜び……

銭湯が出来て、故郷エモシオンが発展するという思いで晴れ晴れとした笑顔だ。


「「「「「賛成!」」」」」


最後には全員がソフィに合わせて「賛成」を唱和。


早速、行動開始!

となったのである。

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