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第45話「ひと目見せたかった!」

 朝食が終わった。

 大人たちは仕事へ、子供達は学校へとなる。


 ボヌール村の子供達は皆、肩から斜めがけにする布製のこじゃれた中型カバンを持つ。

 学校に通う為の、筆記用具、教科書を入れる通学カバンだ。

 この可愛いカバンは当然市販品ではない。

 

 デザイン、バイ、クラリス。

 但し、クラリスが作ったのは試作品のみ。

 縫製、製作仕上げと量産は、エモシオンの仕立て屋へ発注した。

 クラリスの負担軽減と、エモシオンとの持ちつ持たれつの経済援助の為だ。

 逆に村の農産品、俺とレベッカのナイフも、エモシオンで買い上げて貰っているから。


 さてさて!

 話を戻せば、ウチのお子様軍団がカバンを持つのをジョアンナは、寂しそうに眺めていた。

 だがすぐに笑顔と変わる。

 クラリスが、予備のカバンに筆記用具と教科書を詰め、持って来てくれたからだ。


「ジョアンナ、これ貴女のカバンよ」


「え? わ、私の? カバン?」


「ええ、そうよ。皆と一緒のカバン。私がデザインしたの。ほら、肩からかけるのよ。貴女に似合うと思うわ。少し重いけど、教科書とか入っているから」


 クラリスの丁寧な指示で、ジョアンナは恐る恐るカバンを肩から提げる。

 少しポーズを取ってみる。


「わお! 素敵です! クラリス様、ありがとうございます!」


「うふふ、ジョアンナ。クラリス……(ねえ)と、呼んで構わないわ」


「わ、分かりました! ありがとうございます、クラリス姉!」


 と、そこへ。


「ジョアンナ、学校行こ!」


 タバサ以下、女子軍団4名が声をかける。

 皆、タバサと同じバッグを提げていた。


 俺はふと前世日本の通学風景を思い出した。

 可愛い小学生達が、ランドセルを背負って楽しそうに通学するシーンだ。


 話を戻せば、同じカバンで通学すれば、同じ学校の生徒という仲間意識が芽生えるはず……

 ボヌール村へ来たばかりのジョアンナにとって、プラスとなるに違いない。


 と、そこへ、


「お~い。俺達も一緒に行くよ」


 やはり同じバッグを提げたレオ以下男子軍団3名も加わった。

 これで総勢8名の大部隊?となる。


「よし、じゃあ、ソフィ。俺達も行こう」


「ええ、行きましょう、旦那様」


 先述したが、本日の第1時限目は国語でララの母ソフィが担当教師。

 第2時限目は俺が担当教師で、村の子供達へ社会科を教えるのだ。


 ソフィが笑顔で言う。


「じゃあ、ジョアンナの転入紹介は、私が行えば良いのね」


「ああ、頼むよ」


「任せて!」


 と、ここで背後から声がかかる。


「行ってらっしゃいませ」


 マチルドさんが玄関で見送っているが……


「何しているんですか、マチルドさんも一緒に学校へ行くんですよ」


 俺が言えば、


「は?」


 マチルドさんはポカンとした。

 ここは、補足説明が必要だろう。


「マチルドさんにも、ジョアンナが授業を受ける様子を教室で見守り、給食……お昼を一緒に食べて貰いますから」


「え? 私が学校へ? 教室でお嬢様が授業を受けるのを見て、お昼を? そういうのって、出来るんですか?」


「ええ、ウチの学校では希望する父兄の方に授業参観して貰い、生徒達と給食を食べて貰うんです」


「そうなんですか!」


「……という事で、一緒に学校へ行きましょう。ジョアンナ達は、もう行ってしまいましたよ」

「ええ、旦那様の言う通り、だいぶ先に居ますわ」


 見やれば……

 ジョアンナは、タバサ達に囲まれながら歩き、ちらちらとこちらを見ていた。


「さあ!」

「行きましょ!」


 俺とソフィが再び促すと、マチルドさんは頷き、学校に行く事を了承したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 午前8時30分。

 学校、第一時限目国語、授業前。

 生徒は全員登校し、教室に集まっていた。


 教室前方には、ソフィとジョアンナが立っている。

 ジョアンナはさすがに緊張しているようだ。


 俺とマチルドさんは後方にて、他の父兄達と一緒に椅子に座っていた。


 頃合いと見たのか、ソフィが声を張り上げる。


「皆さん、おはようございます!」


「「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」」


「今日は、新しい仲間を紹介します。王都から来た、ジョアンナ・ボレルちゃんです! 仲良くしてあげてください! ではジョアンナちゃん、自己紹介をお願いします」


「は、はい! ソフィ先生!」


 ジョアンナは返事をソフィへ戻し、大きく息を吸い込み吐いた。


「ジョ、ジョアンナ・ボレルです! 昨日ボヌール村へ来たばかりです! ユウキ家で暮らす事となりました! 皆さん、宜しくお願い致します!」


 ジョアンナは少し噛んだが、胸を張り、背筋をピンと伸ばし、大きな声ではきはきと、立派に挨拶した。


 同時に、ウチのお子様軍団全員が大きな拍手。

 釣られて、村の子供達も大きく拍手。


 俺とマチルドさんも強く強く拍手をした。

 参観の父兄達も、愛らしいジョアンナを見て、笑顔で拍手をしてくれた。

 ジョアンナは、村の一員として、仲間として受け入れて貰ったのだ。


 マチルドさんは……

 嬉しくて、感極まっているようである。


「あ、ああ! ジョアンナお嬢様! 本当にご立派です! お母上に! ミ、ミリアン様にひと目お見せしたかった!」


 マチルドさんは声を震わせそう言うと、俺へ向き直った。


「ケン様! 本当に本当に、ありがとうございます! お嬢様と私をボヌール村に連れて来て頂き、深く深く感謝致しますっ!」


 深々と頭を下げるマチルドさんの目は、涙でいっぱいだったのである。

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